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差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年8月21日木曜日 22:19
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 松の湯(新宿区上落合)

ナカムラです。

今日(8/1)は、「松の湯(新宿区上落合)」に行ってきました。落合駅(東京メトロ東西線)から、0.1キロ、1分くらいです。

山手通り(環状6号線)と早稲田通りが交差する所にある落合駅。駅の周りには「タカヤマ」を冠したビルが多い。

駅の裏手の神田川に向かって緩やかに下る坂の途中にある。駅が開業する遙か昔。地下鉄東西線の計画すら無かっただろう大正12年に、同湯も地主高山氏によって開かれた銭湯だ。

そして、昭和49年、「1010」に連載されていた「東京銭湯三国志」の著者でもある笠原五夫氏に経営が引き継がれた。建物は平成元年に、伝統的木造銭湯の建物から3階建の「三笠ビル」に建替えられている。ビルは未だに地主の所有らしく、地域交流館や中華料理店などが入っている。

坂の上の方の半地下のような1階にはコインランドリーとコインシャワー。銭湯は数段階段を昇った2階にある。階段の壁には、板金職人が腕を振るった「松」「の」「湯」という見事な銅看板が先代建物から引き継がれている。相撲の行司関係者か、式守某氏の揮毫らしい。

暖簾は無い。自動ドアを入ればフロントの脇に「家紋/銭湯/松の湯/創業大正十二年」という木製木彫りの大きな看板と、珍しい銅製の懸魚や鬼瓦が飾られている。木製の看板は野方の「昭和湯」にあったものと同様のバージョンに見えた。昭和湯の大将は、いつぞやの中野区長の字だと言っていたが。。。

脱衣所は、幅2間半、奥行3間ほど。天井扇が回る天井は低い。ロッカーは外壁に木目塗装の縦長2段のものと、半身の島ロッカーが横置きに1つ。艶のある籐編みの丸籠が今も現役で使われているようだ。アナログ体重計はHOKUTOW。身長計測器も置かれている。

棚の上には先代建物の簡素な鬼瓦が飾られている。その横には、絵心のある大将によるイニシエの松の湯の絵が飾られている。なかなかいい「展示」だ。”伝統は引き継がないとね”とは大将の弁。

浴室の広さは、幅2間半、奥行5間ほど。天井は3階があるので少し低め。島カランは1列で、カラン数は5・5・5・3。丸みがある旧型のカランが並んでいる。床のタイルは星型模様のオフホワイトのもの。オリンピックの表彰台を真似た、那智黒を仕込んだ「健康お立ち台」などがある。

浴槽は、中央の段々になっている花道の左右に並ぶ。男女境に接し、奥から打たせ湯がある深槽、3点ジェットがある浅浴槽、濃厚な実母散湯「久根湯」の3浴槽が並ぶ。地下120メートルから汲み上げた井戸水をトルマリン石で精水したという温めのお湯は柔らかい。

花道の反対側には、ちょっと洞窟テイストな水風呂。その手前にだいぶ以前に営業を止めたサウナ室がある。赤字でサウナを動かしていないというのはよく聞く話だけど、同湯の場合は女湯のサウナ客と一般客のいざこざが原因らしい。

一部の客なんだろうけど、女湯のサウナ客は別料金を払っていると、水風呂に入っている一般客に優越的な態度を取って、それに気分を害された客が来なくなってしまうという。それが直接の廃止理由。男湯には気性の荒い客も来るけど、そういったトラブルは一度も無かったという。女湯の客の方が特別料金を払ったという階級意識や縄張意識が強いようだ。何となく納得してしまうけど、実際はどうなんだろうか。

ちなみに、女湯の旧サウナ室は江戸時代の湯屋構造の石榴口のデザインで極めて個性的なもの。今も寛ぎスペースとして残っている。

ビジュアルは特にないものの、大将はいろんな物を自作するのが好きなようで、洞窟風の水風呂には彩色されたホタテ貝が貼られていたり、奥壁の向こうが簡素な坪庭風に、塩ビ管丸出しだけど滝が造られている。

金曜日の20:15から21:05に滞在。相客は3人くらい。普通に古くなったビル銭湯に過ぎないけど、大将は銭湯の歴史を愛し銭湯検定の問題を作成したりする方。話しかければ、止めどなく貴重なお話を伺うことが出来る。松の湯の長い歴史を含め見所が多い銭湯だった。そう、フロントの横に大将のサインがある小さなペンキ絵のようなものがあったけど、由来を聞き忘れてしまった。

上がりの一杯は駅方向にちょっと戻った「養老乃瀧」。十条時代は、近所の小さな養老乃瀧が案外に良くて時折使っていたけど、かなり久し振り。普通に広い店舗で上十条の小さい店とは雰囲気が違ったけど、ここのチープな梅ハイ、結構好みのタイプなんだよなぁ。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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                          神田川に向かう緩やかな坂の途中にある




関東大震災後直後に開業したようだ。当時郊外だったであろう落合いに
人が移って来たのだろうか。



   懸魚。銅製というのが珍しい。かつては塀に貼られていたという入口「松」「の」「湯」という看板とともに銅製だ。