差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2010年1月10日日曜日 12:17
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 松の湯(岡山県玉野市玉)

ナカムラです。

今日(12/25)は、「松の湯(岡山県玉野市玉)」に行ってきました。 宇野駅(宇野線)から、2.3キロ、バスで10分くらいです。

丸亀で「うちわミュージアム」を冷やかした後、西平山町と福島町にあった遊廓跡を散策。そ の後、瀬戸大橋で本州に渡り下津井町遊廓、八千代湯(廃業?)、大黒湯を眺めて宇野へ向かっ た。

昭和63年に瀬戸大橋が架かるまで、列車で宇野駅に来て、連絡船に乗り継いで、四国・高松に 渡るというのが一般的だった。宇野は、本州側の四国への玄関口。その時代は知らないけど、 宇野駅は移設され簡素なものに変わり、旅客相手の施設は撤退。かつての栄華を感じるのは難 しかった。

松の湯がある玉野市の市街地は、駅から2キロほど離れている。三井造船の企業城下町。日本 の造船業の衰退を象徴する町でもある。しかし、修繕だろうけどドックには意外にも大型タン カーの姿があった。

玉野市の松の湯は、掲示板に写真を提供してくれた方があって、そのシャビーな佇まいに強く 惹かれていた。今回の遠征で訪問すべく調べていると、何と地元山陽新聞のHPに、80年の歴史をこの大晦日に閉じるという記事があった。

最後のチャンス。疲労した連れを先の倉敷にやらして、単独で向かう。

三井造船の病院や生協には現役感があるものの、目抜き通りのアーケード街を見て驚いた。少 し誇張していえば、そのシャッター通りに爆弾が落ちて、爆風でアーケードが吹き飛んだ趣き だった。各地で耐用年数が過ぎた古いアーケードを撤去する流れがあるものの、玉野のアーケ ードは屋根だけ外し骨格だけはそのまま。大型のアーケードがそんな状態なので、シャッター 通りと相俟って壮絶な光景になっている。

さて、松の湯。アーケード街から海と反対の方向に少し入った辺り。一帯は、かつての造船所 の社宅群で、それぞれが払い下げられた経緯を持つ、そんな一角にある。

電話が繋がらず、定休日や営業時間が確認できないままにやってきた。着いた16:00は、門扉 の傾いた木戸は紐で結われたまま。しかし暖簾は下がっている。中に入って行くと17:00の開 店だという。

女将にお願いして開店前に内部を撮影させてもらう。番台にも上がれという。いくつもの銭湯 に入ってきたけど、現役銭湯の番台に上がるのは初めての経験だと思う。

門を構えた敷地の奥にある同湯の建物は和風の2階家。2階の窓には、はばかることなく樹脂 製の波板が打ち付けられている。その下に庇だけのエントランス部があって、京都式に、男女 それぞれの入口に縦長の暖簾が下がる。

入れば、番台とコンクリのタタキと丈の低い木製錠の下足箱が縦置き。岡山の銭湯料金は410 円。開店前にいろんなことに夢中になったので、女将に催促されるまで払い忘れている。

脱衣所の広さは、幅2間半、奥行3間半くらい。番台や壁は昭和中期的は木目プリントの新建 材。高くはない天井も古ぼけた天板。知らない演歌人のポスターが多く張られている。

ロッカーは、外壁側にはオール木製ロッカー。おしどり錠は全てが壊れている。そして、板の 間の中央に脱衣棚を横にして足を付けたようなものがある。底部には金網が張られている。初 めて遭遇する「集合脱衣かご」だ。昔は、平台の上に四角の籠を並べた使い方があったけど、 それを模した感じのものだ。

その他、木製のベンチ、神棚、大入額。古くはない牛乳の自販機があるのが意外だった。

そして、浴室へのガラス扉に廃業の告知。昭和15年頃とした開業から、自らを含め4人の経営 者の名前が認められている。著しい経営の厳しさ、設備の限界。釜が壊れれば大晦日を待たず に廃業とある。なかなかお目にかかれない連綿さがある。

浴室は、幅2間半、奥行3間。天井は四角錘型で、真ん中に四角の湯気抜きがある。床はブル ーと白の市松模様で多くの補修跡。さらに、奥壁には、釜場への戸にしては大きなスペースに ベニヤが打ち付けられている。

浴槽は真ん中に円形のもの。焚出し口は陶製の鯉。ポール式のジェットはいつからか壊れてい る。湯温は41.5度。寒い街を歩いてきた者には少しぬるい感じがする。一方、奥壁男女境に接 する副浴槽は、熱湯に近いものになっている。小生の応対をしていた女将が、調節を誤ってし まった。

ビジュアルは、入口脇左右に溶岩を配したスペースがある。砂が詰められていたものの、かつ ては小さな池のようなものだった感じがした。壁は白の大判のタイル。そこに、奥壁に2枚、 男女境に3枚の小さなタイル絵がある。奥壁から、松島、宮島、渡月橋、大正池、富士山とい う絵柄のもの。

同湯の営業時間は2時間半と短い。開店と同時にいつもの面子が集まるという感じで、開店時 の相客は4、5人ほど。帰りの電車を気にする小生への配慮もあって、「今日は特別」と言って、 15分前の開店だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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