差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2009年10月20日火曜日 22:27
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 松の湯(埼玉県吉川市平沼)

ナカムラです。

今日(10/18)は、「松の湯(埼玉県吉川市平沼)」に行ってきました。 吉川駅(武蔵野線)から、0.8キロ、10分くらいです。

小規模な市町村が多い埼玉県。吉川市もあまり知られていない自治体だろう。訪れてみて、な まずの里であることと、かつて舟運で栄えた町らしいことを知った。

現在は駅近くに建物が集積している。中川の水運で栄えた頃は、船着き場が町の中心で、同湯 辺りが町の中心だった。

鷲神社から「あいさつ通り」を入って暫く進むと、丁寧に整備され銀色の油井型の煙突が目に 入ってくる。地方銭湯を知らない人だと、小さすぎて、銭湯の煙突だと分からないようなささ やかなものだ。

街道から少し入った辺り。普通の住宅が立ち並ぶ中で、同湯だけが古い佇まいを残している。 周囲には、景観的に調和を乱していると見る向きもあるようだ。

大正末期の建物だという。建物のかたちは、妻面に入口を置いた普通に古風なものだけど、首 都圏でファッサードが下見板張りという銭湯は、はかなり珍しいのではないか。最近まで荒川 区に富士見湯というボロ銭があったが、同湯なき後、東京近辺で板張りの銭湯というのは直ぐ に思いつかない。

暖簾をくぐれば、正面の番台裏には小石タイルを緑のタイルで囲った装飾があって、そこは半 間幅のエントランススペースになっている。左右それぞれに多少の下足入れが並ぶのは、横須 賀の小銭湯に似ている。

番台への戸をくぐれば、低い木組の番台。現在は使われていないのか女将はその前に立ってい る。埼玉の風呂銭は410円。改めて脱衣所を見渡せば、幅2間、奥行2間半ほど、押し縁天井 の古風極まりない造り。幅を半間ほど増築してはいるもののかなりオリジナル度が高い。

小さい銭湯なので、浴室奥壁の小さなペンキ絵が直ぐに目に入る。古風な脱衣所。モスグリー ンの浴室空間。そんな脱衣所から見渡す早川師のレアな絵柄の松島・五大堂の絵。これらが織 りなす光景は、とても現代のものとは思えない。イニシエがイニシエのままに、時空が停止し、 化石のように残っている。

浴室の広さは、幅2間、奥行3間ほど。天井は2段型。幅1間半のウィングが凸型で水平に設 置されている。高天井の両サイドには古風なアールがある。男女境は額縁を3つ連ねた様な木 造のもので、渡された梁との接合にも意匠的な拘りがある。

島カランは、まさにカラン数2のものが1つで、カラン数はセンターから、6・1・1・5。 浴槽は深浅2層で、43度くらいの深槽は何の仕掛けもない素の浴槽で底が見渡せる。浅浴槽 はバイブラで湯温は42度くらい。

ビジュアルが白眉で、奥壁は早川師のレアな絵柄、松島・五大堂。モスグリーンのペンキ絵周 囲の木組もレトロな臨場感を高めている。そして、額縁3つが並んだような木造の古い男女境 には、やはり早川師のペンキ絵。絵柄は峠から見渡した山の風景と富士山をアップで描いたも の。

さらに、外壁の浴槽上の板壁には、丁寧に維持された小さな水槽が仕組まれ、金魚が泳いでい る。さらに、外壁手前の細長いスペースは竹板で囲われた上に観葉植物を中心にいくつもの鉢 が並ぶ。設備は古いけど、同湯にはそれ以上のホスピタリティがある。

日曜日の15:40から15:20に滞在。小さい銭湯にピークで10人くらいの客が入っていた。相 客は延べ20人弱くらいか。

吉川市最後の1軒。営業時間は15:10から20:50と短くなっている。庭がないことが惜しまれ るものの、名銭湯だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ (風呂屋の煙突)
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