差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年11月30日日曜日 7:40
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: みどり湯(静岡県湖西市新居町新居)

ナカムラです。

今日(9/28)は、「みどり湯(静岡県湖西市新居町新居)」に行ってきました。新居町駅(東海道本線)から、0.9キロ、10分くらいです。

豊橋駅裏には、JRの敷地と道路の間の1間に満たない敷地に、貨物列車の貨車が連なるように「西駅の飲食店街」が東西に薄っぺらく広がっている。現在は新宿のゴールデン街を気取ったような飲食店になっている。しかし、ここも青線だったゴールデン街のように曖昧な飲み屋だった歴史があるらしい。今でもいわくあり気な雰囲気が濃厚だった。

その後は「競輪場前」まで市電に乗って、9年振りにロの字型の街路を持つ旧東田遊廓を散策。いくつかの建物が消失していたものの、明らかに周囲と異なる一角に「東田遊廓」そして「桜ヶ丘旅館街」を経た旧遊廓建築がいくつも残っている。そのうちの新宝光旅館(旧新光楼)は、営業日が限られるものの今も宿泊が出来るようだ。

豊橋駅前の商店街に戻り、「玉川」で豊橋名物のカレーうどんを食べ、「甘党トキワ」でストロベリーミックスのソフトクリームを舐め、創業50年にならんとする喫茶「フォルム」で喫茶部の活動を進める。さらに、竹輪が名産ということで、土産というか夕餉のおかず用にと、江戸時代の1827年(文政10年)創業のヤマサで竹輪を買い込んだ。

パチンコ屋だけでなく「スマートボール」も残っている、広小路や松葉通りなどの昔からの繁華街に懐かしい風景を見ることが出来る。その中で間口が小さい立食いの寿司屋が何軒も目に入った。豊橋地方ではそういった寿司の文化があるのだろうか。今度はそういったものも経験してみたい。

さて、16:30に開店する浜名湖畔のみどり湯に向かうべく豊橋駅から浜松行の電車に乗って新居町駅へ。種田山頭火の「海の真ん中道まっすぐ」という句碑が駅の駐輪場の傍らに建っている。浜名湖と海が繋がる狭い場所に東海道新幹線と国道1号線が海上を駆け抜けるように通っている。

旧道を進むと、浜名湖と海を繋ぐ浜名川に舟溜まりがあり、そこが漁港になっている。そんな郷愁のロケーション。気分が段々と高揚していくのが分かる。途中、旧小松楼という街道の旧遊廓に登楼してから至近の同湯に向かった。

昭和5年築。平屋のイニシエ感たっぷりの漁港の銭湯。漁港の銭湯の煙突に相応しい煤で汚れた、管を積み上げた煙突が立っている。

まだ暖簾が下がっていないうちから常連がそぞろ集まってくる。じきに女将さんが暖簾を掛け、一堂、店内に流れ込む。

勢い余って流れ込んだため後先になった。相方が2人分の風呂銭600円を女将さんに渡す間に、ご常連に”これも珍しいぞ”と声を掛けられながら写真を撮らせて頂いた。

番台と畳半畳ほどの狭いたたきがあって、下足箱の代わりに木製の靴棚が置かれている。狭いからだろうか、脱ぎ捨てられているのは小生のパトリックの運動靴だけ。多少恥ずかしさを感じながら靴棚に入れた。

脱衣所の広さは、幅3間、奥行3間半ほど。今は使われていない3畳ほどのサウナ室がスペースを喰っている。天井は木板にペンキ塗り。男女境も木板ペンキ塗りで額縁タイプの古い鏡が掛かっている。漁港の古銭湯にふさわしい雰囲気がある。

番台を拡張したためだろうか、女湯との間に幅が30センチほどと狭小の木戸がある。スリムな大将と女将さんは難なく行き来できるそうだけど、小生は臍の辺りが引っ掛かるかも知れない。今まで見た扉の中で最も幅が狭いマイベストワン。

ロッカーは、外壁側に算用数字を大書きされたもの。ご常連たちは籐を敷いた板の間に丸籠を置いて着替えている。

床に三河伝統の荒縄を巻いた火筒花火が立てられているのに驚く。どうやら灰皿のようだ。その他、「サンキョー」と記された飲料が入った古い冷蔵庫、Yamatoのアナログ体重計、天井扇、ご主人の趣味らしい魚拓や魚の”剥製”が入った額がいくつか掛かっている。

浴室は、幅3間、奥行4間と意外に広い。男女境は低くレトロな模様ガラスが使われているなど、明るくて清潔感が高い。天井は高さ2間弱ほどの淡い黄緑色のペンキで塗られたフラットな木板張り。畳1畳大の湯気抜きがある。奥壁も木板張り。爽やかななかにも無骨さがある。

島カランは無く、カラン数はセンターに5、外壁側に7。床のタイルは白とベージュの長方形の小タイルを風車模様に張っている。

浴槽は長方形のセンター浴槽。仕切で深浅に分けられている。底に黄緑色のタイルが張られ、井戸水を廃油で沸かした湯は木板ペンキ塗りの壁と呼応し、明るい光の中で溢れている。湯温は42度くらい。意外にもマイルドな温度だった。さらに奥壁にやっと2人が入れるほどのぬる湯の薬湯槽がある。

相客が交わす話からして、何人かは漁師のようだ。浴室に10分も居ないで上がって行く。漁港銭湯ならではの光景がある。しかし、漁師はどうしてこんなにもせっかちに風呂を使う人が多いんだろう。

日曜日の16:30から17:05に滞在。共に一番風呂に浸かった相客は8人くらい。女湯にもそこそこ客が入っている様子。前の道は狭いものの同湯の斜め向かいや横に駐車場があって、同湯の客も駐車することが出来るようだ。

女将さんは湊さんの浜松銭湯展に訪れた時に写した明治時代の入浴券を見せてくれた。そして、相方との珍道中にお手製の夏野菜を摘んで持たせてくれた。何よりも心がこもっていると感じて嬉しかった。明るさが印象に残る、優れた郷愁銭湯だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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            明るさと、清潔さと、お湯の豊富さに感動をおぼえた。



















                               まごうかたなき銭湯遺産。




                           市街は旧街道の面影を残している。




                           船溜まりを眺めていたら、魚が跳ねた。




             山頭火の句碑「海の真ん中道まっすぐ」




新居町駅。傍らを東海道新幹線がもの凄い速度で通り過ぎて行く。
高架でも築堤でもない場所で新幹線を見ることが出来る、数少ない場所かも知れない。
付近は、春の鮨種小肌のの良い漁場で、舞阪、弁天島産が走りとして築地に運ばれて来るらしい。

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