差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2009年9月4日金曜日 23:32
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 緑湯(足立区千住緑町)

ナカムラです。

今日(8/27)は、「緑湯(足立区千住緑町)」に行ってきました。 千住大橋駅(京成本線)から、0.7キロ、8分くらいです。

新橋でのミーティングを追えて、隣のビルの汐留パナソニック電工のミュージアムで、コルビ ジェの弟子だった、建築家・坂倉準三の企画展に滑り込む。展示された設計建物の写真には、 既に「現存せず」の表示が多かった。

ランドマークとしての建築物は、大きく目立つものの、案外に経済的寿命が短かく、巨匠たち の設計建物も経済合理性の観点から解体され、建て直されていく。大きいが故に、不経済を引 きずったままでの保存もままならない。

もっとも、日本の経済成長の速度が落ちれば、経済的陳腐化の速度も低下する。皮肉ではある けど、今後、経済的寿命は延び、解体されるリスクは減るかも知れない。

価値ある不動産、例えば、現役の巨匠の設計建物はそうではないか。。。

さて、緑湯。今日のファースト目的地は、まだ経験したことがない舎人ライナー・高野駅近く の豊明湯だった。レトロでもなく、何気ない銭湯らしいけど、複数の銭湯通人によって強く推 されている。感性のチューニングにはいいかなと思っていた。しかし、銭湯マップには金曜日 定休とあるものの、事前に電話をしたら、現在は木・金の週休2日になっているようだ。

セカンド目的地は、千住大橋・緑湯。千住には銭湯が多いので事前の確認はせずに千住大橋駅 に降り立つ。ホームには、「肛門科」という大看板があったりと、あまりに直接的なのに驚く。

また、REGALの大きな看板が架かっていた。ここは旧日本製靴時代から、ニッピの工場がある 皮革製造が盛んだった地域だ。 

改札を出ると、赤提灯が連なる下町ワールドが広がっている。緑町商店街の入りアーチを通り 過ぎ、さらに墨堤通りを進む。向かいは大成倉庫という巨大な倉庫建物。隣は正和自動車教習 所の教習コース。どこか銭湯的なる立地とは異なっている。

同湯は千住を代表するレトロな銭湯の1つだと思う。千鳥破風を有する妻入の脱衣所棟に、豪 壮といっていいだろう黒瓦を載せた大きな唐破風のエントランス部がある。

3日後は4年ぶりの総選挙。暖簾は足立区選管の選挙前仕様の暖簾になっている。選管と銭湯 業界の歴史的なつながりがあるんだろうけど、今の時代に果たして効果があるのかと思ってし まう。

中に入れば、正面に傘を付差す式の傘入れ。左右には松竹錠の下足入れ。天井は雨漏りだろう か波打っている。

開けっ放しの扉を通れば、昭和中期典型のグレー木目プリントの新建材を張った番台。前面が カーブしている。

脱衣所の広さは、幅3間半、奥行3間。天井は深い茶色の折上げ格天井。この恐ろしくレトロ な空間のポイントは塗り壁だろう。昭和40年代に流行ったラメ入りの壁材を使ったもの。オ リジナルの色は、やはり茶系統だったのだろうか。それが年月とともに灰汁や渋みを吸い込ん で激しくシブい空間となっている。古いお堂に足を踏み入れた感じだ。

夏の暑い日。窓という窓は開け放たれている。テレビなど鳴り物はない。天井扇がゆっくりと 回っている以外は静寂な空間がある。

島ロッカーが2つとアナログ体重計。業務用扇風機と上面扉の古い冷蔵庫など最小限の設備だ けがある。

浴室もレトロだ。幅3間半、奥行は4間ほど。天井高さは4間もあろうかという2段型。天井 のペンキはくすんでいる。それにしても大きな銭湯だ。ここが満員だった時代を思うと、どう しても浮き沈みというものを感じてしまう。

島カランは1列。センターからカラン数は8・5・5・8。床が実に泣けるイニシエ仕様。基 調はモスグリーンの小石型タイルで、そここに二枚貝、巻き貝、蟹が散りばめてある。生活の 場であるとともに、子供も訪れるためレジャー的な要素を盛り込んでいたのかも知れない。

浴槽は、男女境に接して幅半間の薬湯槽。「道後の旅」というブルーのお湯が入っている。そし て、釜場への通路を隔てて深浅2槽。いずれも浴槽の底は白と黄緑のタイルでの市松模様とい うレトロな風合いになっている。深槽は一切の仕掛けがない素の浴槽で、澄んだ湯面から古風 な設備が見渡せる。浅槽は1穴ジェット×3というこれも古い設備だ。

ビジュアルは、男女境と浴槽の立ち上がりにモザイクタイル絵。絵柄は湖・高峰・舟・洋館、 海中の熱帯魚というもの。

広い奥壁は故早川氏の西伊豆のペンキ絵。同湯の中で最も新しいものだ。日付の書き込みはな いけど、昨年の11月に既に痛くなった腰をかばいながら描いたものという。雄大さと波飛沫 を上げる豪壮さはいつもながら。しかし、男女境上の富士山の描き込みが足りない感じがする。 既に病魔が師の身体を支配していたのだと思う。

後方の都営住宅が風呂なしだった時代はそこそこ客があったというけど、木曜日の19:00 から20:00の滞在で相客は5人ほどだった。女性はマメなので、設備のいい銭湯に流れる ので、そこらへんに頓着しない、近さを優先する男性客が主体のようだ。

上がりはスパードライ230円をいただいてから、0.9キロほどの北千住駅前の飲み屋横町に 繰り出し、入口付近の「永見」「天七」とハシゴ。北千住は庶民的な町だけど、久しぶりに飲み 横に来てみると、案外とコストパフォーマンスという点で安くない感じがした。大きめの竹輪 の1/6の串カツが160円。それも2本セットでしか受注してもらえない。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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