差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年11月30日日曜日 7:43
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 美保湯(立川市羽衣町)

ナカムラです。

今日(10/10)は、「美保湯(立川市羽衣町)」に行ってきました。立川駅(中央本線等)から、1.2キロ、15分くらいです。

今日10月10日は「銭湯の日」。重要な記念日である。

ビル内で仕事をしていたので気が付かなかったけど、異常とも感じられる赤い夕陽だったようで地震などの天変地異との関連を気にするツイート多くされていた。

東京駅から中央線の特別快速で50分弱。1つ手前の国立駅で多くの人が降りるまで、中央線はそれなりの混雑が続くことを知る。立川駅で降りるのは20年以上振りだと思う。駅ナカに新しい店が多いのと、駅周辺も百貨店を含め沢山の店が多く、夜も明るい街に変わっていることに驚かされる。

10月18日、正月の「箱根駅伝」の出場権を賭けた予選会が立川昭和記念公園で行われるようだ。駅のコンコースに各大学の幟が立てられている他、商店街の街灯にもペナントが下げられている。本戦への出場は夢だろう母校の幟もあった。

さて、美保湯。同湯は駅から1キロ余り。中央線と南武線が行き交うほか、立川立体なるアンダーパスもあって、結構、ジグザグとした進行を余儀なくされる。

着いた所は、中央線の高架線の傍らで向かいに羽衣アパートがある場所だった。

築50年ほどというコンクリ煙突の木造銭湯。脱衣棟と浴室棟はそれぞれ独立した切妻の小屋で、それを山形の小屋根で連結するという稀有な構造を持っている。一般の大工さんが手掛けた建物らしい。

向かいの歩道を含め周りには整然と鉢植えが並べられ、いくつかの鉢には花が咲いている。そうこうしていると、薪を燃しているようで、木の燃える匂いとともに煙突から煙が立ち昇るのが見える。

蹴上げの少ない3段ほどの階段を昇ればL字型に下足箱が並ぶエントランス。自動ドアを入ればクッションフロアの簡素なロビーがある。

相方が2人分の風呂銭を払い、小生は何冊目かのスタンプ帳を所望する。一方、和手拭い派ゆえ、銭湯記念日のラベンダータオルを辞退すると不思議そうな顔をされてしまった。辺りは静か。大きなテレビが壁に掛かってニュースを映しているだけで、客はいない。

脱衣所は、幅3間、奥行3間。天井も壁も白いクロス張り。ロッカーは外壁の半分と島ロッカーが1つ。特にどうということのない脱衣所風景だけど古いHokutowのアナログ体重計が目を引いた。

葡萄色のHokutowにしてはかなりゴツいもので、筆文字の「お靜かにお乗りください 美保湯」とい注意書きが旧字体で書かれている。表示器にはトレードマークの左右に「東京」「福島」とある。最期は倒産だったと聞いたことがあるけど、北東という社名通り福島の会社だったようだ。

表で写真を撮っていたら、10月も中旬だというのに蚊に刺された。蚊が多いのだろう。ロビーにも脱衣所にも未だに蚊遣りを焚いている。この時期に蚊が多いというのも、余り住みやすい土地ではないのかもしれない。去年までそんな土地に住んでいたのでそう思う。

浴室は、幅3間、奥行4間半。昔は脱衣所と繋がる緩衝地帯だった、山形屋根の掛かる1間ほどの部分も今は浴室の一部に取り込まれている。天井は高さ2間強。湯気抜きがない木板張りのフラットな構造。かつてはこの空間に裸電球が1つだけ下がっていたのだろうか、そんな照明器の跡が天井の中央に残っている。

島カランは1列で、カラン数はセンターから5・5・5・5。床のタイルはユリ模様の微かにパール色の光沢が残る白色のもの。

浴槽は、奥壁に沿って深浅2槽。深槽が「銭湯の日」のイベントとして天然物のラベンダー湯になっている。天然のハーブ湯は、温泉とも異なる代え難い価値がある。多少仕事で興奮状態にあった頭と身体が、静かにクールダウンされて行く。手前に拡張された浅槽には、寝湯×2、バイブラバス、金属格子の焚出し口がある。井戸水を廃材で沸かしたお湯の温度は何れも42度強。熱くはなく、入りやすい温度。

ビジュアルは、奥壁に丸山さんの「沼津」のペンキ絵。木板ではなくベニヤ板に描かれている。それなりに剥離が見られる。ペンキ絵は環境によって驚くほど状態が違うけど、いつ頃のものなのだろうか。

電車からの灯りと通過音を感じながら「銭湯の日」のラベンダー湯に浸かるという郷愁体験をイメージしていた。しかし、高架線の線路は、繋ぎ目が無いロングレールで、カタンカタンという通過音がするでもなく、少々風情に欠けている。また、線路側が女湯で、男湯の窓に車窓の灯りが流れて行くという光景も無かった。

上がりは瓶牛乳110円を頂いて、久し振りに旧型のマッサージ機に座ってみる。3分くらいだろうか20円だった。

金曜日の20:00から20:50に滞在。今はそう呼ばれることも少なくなった”三多摩地方”の微かに地方銭湯の風情を残す団地の中の銭湯。女湯では、旅情を掻き立てる中央線列車の通過音と流れる車窓の灯りを感じることができる。なかなか美しい屋号の銭湯。店のまわりは手塩に掛けた鉢植えが整然と並べられている。

上がりの一杯は客引きが多くたむろする一角にあった「玉河」という割烹居酒屋。数件しかないというサントリーの武蔵野ブリュルワリーの珍しいビールを出す店でなかなか良かった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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      美保湯には端正込めた鉢植えが並んでいる。




             箱根駅伝の予選会の案内。




           上がりの一杯は線路際の「玉河」。

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