差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2006年1月2日月曜日 10:47
宛先: 銭湯ML
件名: 港湯(倉敷市玉島中央町)

ナカムラです。

今日(12/24)は、「港湯(倉敷市玉島中央町)」に行ってきました。
新倉敷駅(JR山陽本線)から、2.5キロ、30分くらいです。

駅前から、1時間に2本程度「玉島中央」へのバスがある。
あいにく、発車した直後だったので歩いたけど、寒く知らない街は、かなり遠く感じる。

映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のいくつかのシーンは、岡山県の倉敷、玉島、西大寺で撮影されている。銭湯巡りで、偶然だけど、それぞれの街に接する。古い銭湯がある街は、あたり前だけど、古い街並みが残っているということなんだろう。

玉島は、備中松山藩の港と備中綿で繁栄し、その名残として都市銀行の遺構なども残っている。しかし、街の状況は無残なくらい寂れている。そんな中、同湯は、神社の隣、港の水門の近くというなかなかな雰囲気のロケーションにある。

昭和2年築の建物。独特の洋風のファッサードを持つ看板建築。側面の窓の意匠も5角形の独特のもの。銭湯界の至宝といっていいだろう。

煙突は、金属のパイプ型のものが後方に見える。入口には牛乳石鹸の暖簾。
ドアを開けると、幅1間半、奥行3間の空間がある。番台は、コンクリのタタキから直接立ちあがっていて、下部は傘いれになっている。お手製(プロ仕様)の洒落た上着と帽子をかぶっている、71歳になる女将に350円を払う。

下足棚はあるけど、錠のついたロッカーはない。天井板は、ブリキをプレスして洋館風の模様を付けたものが使われている。真中の天井扇も、天板の模様からして、創業当時からのものか、古いものが残っている。

脱衣ロッカーは、オール木製の古色蒼然としたもので、古い錠の残骸と思しきものが付いている。男女境には、木枠に嵌められた3枚の鏡。その下には、レトロな脱衣籠が3つほど並んでいる。今年の12月は全国的に寒いけど、同湯も暖房は置いていない。寒い・・・・。

同湯のご主人はこの1月に亡くなられている。甲子園にも出た弟も10月に。女将は、洋裁家で、風呂屋の経験は無かったが、ご自身の体調が万全でないなか、遺志を継ぎ一人で湯を沸かしている。

番台上に小型のテレビが載せられているが、付いていない。
静寂な空間が流れている。そのせいもあって、女将の奮闘が、少し痛々しく感じられる。

浴室は、幅1間半、奥行3間弱。天井は四角錘型で、中央に正方形の湯気抜きがある。
浴槽は、男女境に接するように半円形のものがある。縁は御影石が張られていて、温かい。湯は井戸水を沸かしているようだ。清澄ないいお湯だ。

カランは、男女境側に「宝」のレバー式の赤・青が、浴槽の手前に4個、向こうに1個。外壁側に4個ある。シャワーはない。

ビジュアルは、奥壁と脱衣所壁の上に小さなペンキ絵。外壁側にはタイル絵がある。さらに、白タイルの絵にはラーメン丼紋様の緑のマジョリカタイルが張られている。地元商店の広告看板も多数あり、レトロな浴室の雰囲気を盛り上げている。

小生が風呂から上がったら、少し先にある家から夕食を持ってきたといって、男湯・女湯とも誰もいない静かな脱衣所の番台で、ひとり夕ご飯を食べている。
清掃はやや行き届いていない面がある。女将の本意ではないだろう。
いつまでも湯を沸かしてほしいという気持ちと、そんなに無理をしないでほしいという思いが交錯する銭湯だった。