差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2011年4月3日日曜日 0:52
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: みたけ湯(さいたま市南区文蔵町)

ナカムラです。

今日(3/27)は、「みたけ湯(さいたま市南区文蔵町)」に行ってきました。 南浦和駅(京浜東北線)から、0.6キロ、6分くらいです。

メイン機として使ってきたリコーGX200と、テキスト専用の入力機pomeraが故障したので、新 宿のヨドバシカメラに修理に出す。使い込むことを確信していたこのカメラには5年の延長保 証をつけていた。初期の故障を乗り切れば、故障するまでに使い込むことは希なので、保証を 請求するのは初めてかも知れない。

メイン機は、既にリコーGXRに移っているけど、サブ機としてもうひと働きしてもらおうと修 理することに。5年間の延長保証だけど、1度保証請求を行うと、そこで保証期間が打ち切られ るということを初めて知った。。。

バーガーキングでハンバーガーをかじり、紀伊国屋で「京都極楽銭湯読本」を買って、混雑し た新宿を離れる。そして、南浦和に向かって北上。日曜日、昼とも夕方ともつかない時間帯の 京浜東北線は長閑に空いていて好きだ。

武蔵野線の乗換駅の南浦和駅。乗り換えたことは何度かあるものの、降りるのは初めて。駅前 に丸広百貨店。立ち行かなくなったのか、中身は寂れたテナントビルになっている。周りの商 店の広がりも狭く限定的だ。そんな、駅前をしばらく歩いて「文蔵」という記憶に残る地名に たどり着く。読みは「ぶぞう」と言うらしい。

ある一時期に一気に開発された住宅地のようだ。同湯一角にも潰れたマーケットや飲食店の残 骸と言っていい建物がいくつか並んでいる。コンクリ煙突を有する同湯は、昭和39年の築創業。 この一帯が開発された時期に開業したのだろう。構造は伝統的木造銭湯ながら、モルタルの簡 素なファッサードにやはりモルタルの直方体で簡素なエントランスが付属している。

高窓と入口にある庇は半ば崩落が進む。入口には昔乾物屋にあったような巻き取り式の緑色の テントが伸びている。そして、ベンチではなく、使い古しの食卓の椅子が6脚ほど入口の両側 に置かれている。

かなりシャビーな外観の銭湯。しかし15:30の開店時刻を15分ほど過ぎたあたり、一番風呂勢 が滞在している時間だからか、軒先には10台近くもの自転車が並ぶ。ややボロだけど、魅力あ る銭湯だということがわかる。

暖簾は下がっていない。開いている窓の向こうには番台に座る女将の背中。かなり傷んだ天井 のエントランス。左右には松竹錠の下足箱。衝立があって外からは窺うことが出来なかったが、 番台の背の部分に精巧は筆捌きが見事な、鈴栄堂・章仙画の宝船のタイル絵がある。帆に「み たけ湯」とあるお馴染みの絵柄ではある。

正面から眺めることが出来ないのと埃を被っているけど、細かな描き込みからすると、章仙の かなりの力作と見える。内部への期待が高まっていく。。。

扉を開ければ、木組みの立派な番台。客と小銭をやり取りしてきた部分がスプーンの大匙大の 大きさで窪んでいる。半世紀近くの間、風呂銭とその釣銭が往来した歴史が形になっている。

三間四方の脱衣所は、L字型にガラス戸の開口部があり明るい。都心の銭湯では失われてしま った風呂屋の原風景が残る。

天井は、天板が新建材で更新されてはいるけど、平格天井。大きな鏡がはまるっている男女境 の作り込みが古風だ。工務店の名前の後に、「大工」「煙突」から始まって「小舞」までの13の 業種とその職人頭の名前が刻み込まれている。

外壁側にも幅半間、高さ1間の鏡がある。身長計としての目盛りが刻まれている鏡に初めて遭 遇した。

ロッカーは島ロッカーが斜め置きに2つと、外壁側にある。その他、TANAKAのアナログ体重計、 瓶牛乳の販売はないけど「保証牛乳」の冷蔵庫。昭和45年から使っているという電気代が嵩む 古いものだ。

庭からは心地いい風が流れ込む。庭には滝を設えた池があるけど、雨水が少し底に溜まってい るくらいでちょっと 残念な状態。しかし、塀以外の目隠しがない開放的な庭で、濡れ縁に立ってゆったりと涼むこ とができる。

浴室は、幅3間、奥行4間ほど。板張りの2段型の天井。日曜日の夕方近くの陽光が斜めに差 し込み、塗り重ねられたペンキの襞だけでなく、木板の歪みまでを浮き立たせている。銭湯が 建ってからの46年という歳月をそっと知らされる。

島カランは1つで、カラン数はセンターから4・3・3・4。中普請の時にカラン数を減らしたの だろう、浴室の広さにしては少ない。タイル類は昭和が終わる頃に張り替えられたようだ。ベ ージュ色の5センチ角で内側の滑り止めの突起があるよく見るタイプのものが使われている。

浴槽は、奥壁に接しての深浅2槽。カランのお湯が熱かったので、熱いのかの思ったけど、バ イブラの浅槽は41度強。1穴ジェット×2ながら、稼働していない赤外線ランプだけの深槽は 42度くらい。調子抜けする温度だった。

ビジュアルは、奥壁に中島さんのペンキ絵。絵柄は川の図で後方に高嶺が見える。富士山は女 湯の方に見える。20.7.28.に描かれたペンキ絵にしては剥離が進んでいる。そして男女境には 洋館、湖、ヨット、高嶺、洋館というモザイクタイル絵が広がっている。

ペンキ絵のある銭湯では、絵の全景が見渡せる島カランの中程に座ることが多い。同湯ではカ ランからいくらお湯を出しても、細かな固まりになった赤錆が途切れなかった。女湯ではいつ もよりも多い錆が話題になっていたようだ。配管の老朽度としてはかなりのステージにある。 長くは持たないと感じた。

上がりは、「保証牛乳」の冷蔵庫に牛乳はなかったので、縁側でのんびりと休憩していた。

ひがな日曜日の午後、15:45から16:30に滞在。相客は10数人くらいとそこそこの客の入りだ った。

帰りは、近くの青柳という和菓子屋で「文蔵芋」なる地元の銘菓を購入。地元の人の話では、 以前はデパートなどでも売られていたというもの。人形町の「黄金芋」に似た、栗饅頭のよう な餡が入ったさつま芋の形をしたもので、肉桂をまぶした美味しいものだった。

帰りは、丸広百貨店のテナントビルを見て、地元十条に戻って久しぶりに「田や」で一杯。。。

*************************************************
ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ (風呂屋の煙突)
*************************************************