差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年3月7日日曜日 0:38
宛先: 銭湯ML
件名: [sento-freak:04839] 三越湯(港区白金)

ナカムラです。

今日(3/6)は、「三越湯(港区白金)」に行ってきました。

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで「モネ・ルノワールと印象派展」、目黒区美術館で「村野藤吾のディテール旧千代田生命本社ビル展」と美術館をハシゴをして、目黒駅から白金の街を経由して20分くらいです。
一般的なアプローチは、渋谷〜田町の都バスで、「北里研究所前」で降りてすぐです。

印象派の絵は日本人に人気があるので、会場はとても混んでいた。
旧千代田生命本社ビル展では、巨匠村野藤吾の細部のこだわりが丁寧に紹介されていて、建築家志望と思しき若い学生が熱心に見入っていた。
同ビルの竣工時(昭和41年)の航空写真があったけど、中目黒界隈の銭湯の煙突が何本も写っていた。今は、ほぼ全滅状態・・・。

さて、三越湯。
恵比寿から高輪へ抜ける、看板建築が立ち並ぶ古い商店街の中にあります。
向かいが、豆腐屋と庶民的な和菓子屋という、らしい場所に立地しています。
そして、同湯の脇のには何やら古いコンクリの塊が・・・。
プレートをみると「国威宣揚 昭和十二年 白金三光協商会」と書かれていた。どうやら、昔のの国旗掲揚台らしい。

この銭湯はこの3月末で一旦閉店し、ビルに改築される予定。
入口脇には建築標識が掲げられています。

入口は唐破風の瓦屋根。懸魚も立派なものがついています。
そして、何といっても銭湯浪漫の暖簾の上のアーチ型のステンドグラス。
デザイン的には、どうってことはないものだけど、銭湯にこんなものがあるのは珍しい。
(横須賀汐入の亀の湯にも、もっと簡単なデザインのものがあった。)

下足箱は松竹錠のもの。数は男湯側58個と少々少なめ。
番台への入口も変わっている。

ニスを塗った板で組まれた木戸(摺りガラスが嵌められている)。
それが引き戸ではなく、蝶番が付いていて手前に引くタイプの戸。
(東京一のボロ銭、船橋湯もこの形式だった・・・。)

番台の女将に400円を渡す。その場所、半間四方が少し低くなっている。
番台は両サイドの衝立を含め、厚い材で組まれ、焦げ茶色にくすんでいる。

脱衣所の天井は、折上格天井(5×11)だけど、色は白いペンキで塗られている。
使われている材料はさほどの材ではなく、風格はない。
それは、梁なども同じで、資材の乏しい時代なのか品質はいまいちと見受けられる。

脱衣所の広さは幅3間、奥行3間といったところ。
外壁側、男女境の鏡の下、そして縦置きの島ロッカー。
それらの上には「東京錠前製作所(東京墨田区亀沢)」のプレート。
「TOKYO」の錠を作っている会社だなぁ・・・。
でも、所々が松竹錠で補修されていることからすると、もうこの会社は存在していないのかも知れない。

大黒柱には黒時計。いつからか、3時40分で止まっている。
いわゆる普通の黒い柱時計より、文字盤部が円形に張り出していて、風格のある柱時計だった。

この銭湯、置物や絵の額とポスターが多い。
置物は結構ホコリを被っている。その部分に限って言えば、清掃に難がある。
ポスターは女優物とジャイアンツのポスターの割合が高い。

浴室の広さは幅3間、奥行4間。
天井は2段型。幅があるので最高部が正方形で広くなっている。
ペンキは結構くたびれている。

島カランは墓石型のものが1列。カランは6・5・5・5。Waguriの角型で平たい取っ手が付いている。
全てシャワーが付いている。
しかし、湯はカラン、シャワーとも温く、最後まで熱くならなかった。
タイルは改修されてグリーンを基調としたもお。古いタイルは残っていない。

浴槽は広い方が、四角い石が入れてある格子から湯が出てくるもの。2穴ジェットが1機ついている。温度は43度くらい。
もう一方が、円形の風呂で2穴ジェットが3機でバイブラバスになっている。温度は44度強とやや熱めになっている。

浴槽の上の壁は、昔、洋館の外壁や、塀に用いられた鉄平石が張られている。
その上には、縦17枚×横27枚のタイル絵。
デザインは山と飛ぶキジが描かれているけど、かなりデフォルメされ洋画風に描かれている。

上がりはサッポロの黒生250円也。
ややホコリっぽいソファーに座って天井を眺めながら一服。
脱衣所に他の客は居ない。静寂が支配していて、ボロいけど、とても落ち着く空間ではある。

帰りに脱衣所の端にあるトイレを借りたけど、昔ながらの小さなトイレ。
そこに、住友生命の松島菜々子のポスターがドーンと張ってある。
なんだか、チャックを開けて、もそっと引き出すのが恥ずかしい気がした。

土曜日の17:45から1時間ほど居たけど、帰り際にスキンヘッドのアメリカ人と日本人の2人連れが入ってきただけ。
カランの湯温も最後まで使用に耐えないものだったし、やはり限界なのかな。
新しい建物は17年2月に完工予定。繁盛すればいいな。

帰りはすぐ近くの中華屋(野沢軒)でチェーハンとトマト。
安くて、美味しく、居心地もよかった。








村野藤吾設計、旧千代田生命本社。
1960年台のオフィスビルの傑作とされる。


千代田生命至近の空き地。恐らく、古く廃業した銭湯の名残。