差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2009年1月4日日曜日 10:09
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 都湯(相生市相生)

ナカムラです。

今日(12/16)は、「都湯(相生市相生)」に行ってきました。 相生駅(山陽本線)から、2.0キロ、20分くらいです。

先ずは通称で「川尻」と呼ばれた赤線地帯の跡へ。

運良く古老に話をうかがうことができた。太平洋戦争の時、相生に女郎屋ができたとの噂を戦 地で耳にしていたが、帰還したら自分の家の隣がそうだったという。

赤線は小規模な店が5軒だった。現在もそのうちの3軒が残っている。構造上の特徴を有する 建物もあるけど、教えられなければ分からない、そんな普通の建物だった。ある方は、隣家の 家の由来をご存じない。相生の町の既に朧げな記憶になっている。

さて都湯。相生市最後の一軒だ。

相生は、大正時代に鈴木商店系の播磨造船所が置かれ、単一の造船所では世界一の建造量を誇 った時代もある造船の町だ。今はその会社を引き継いでいるIHIも相生事業所での新造船建造 事業から撤退。さらに造船事業そのものもJFEに売却すべく調整している。

造船で栄え、それが衰退した相生。同湯は相生の産業が漁業だけだった時代からの銭湯だ。数 年前に埋め立てられてしまったけど相生漁港の船溜まりにある漁協の裏にある。

86歳の女将が24歳で嫁いできたときに、「おかあさん」から既に50年以上経っている建物 を教えられた。単純に考えても112年以上を経た明治時代の銭湯だ。

住所は「相生市相生」。相生で最も古くから栄えた地域のあかし。黒瓦が載った塀があり、門柱 の中心には黒瓦入母屋のエントランス部分がある。意外にも独立のコンクリ煙突だ。後方には 山襞が迫っている。

入口いっぱいに大阪型3房の大きな暖簾が掛る。エントランスの床は石が敷きつめられている。 左右におしどり錠の下足箱。その下には古い臙脂色のタイルが敷き詰められている。石敷きも 珍しいけどこれも珍しいと思う。さすが明治の建物だ。

扉を開けると2間四方くらいの小さな脱衣所。石油ストーブの灯油の匂いがなんとも郷愁を誘 う。とても86歳には見えない女将が、前面がカーブする古風な番台に身をうずめている。相 生の銭湯料金360円を渡す。

ロッカーは外壁側に旧型おしどり錠のオール木製ロッカー。その他、籐編みの四角い脱衣籠が 男女境側の専用棚に並んでいる。

天井は古い天井扇があるくらいで普通の天板で更新されている。小さな脱衣所で存在感を発揮 しているのは寺岡式の大柄なアナログ体重計。「寺岡式」と並んで「朝日衡機製作所」銘が入っ ている。

トイレをお借りして分かったことだけど、浴室の壁面は煉瓦積みになっている。幅1間半、奥 行3間ほどの浴室は、内部からは分からないものの煉瓦積みの躯体にタイルを張ったものだ。

内部の構成はシンプルだ。5つのカランが外壁側に並び、男女境の中央に浴槽があって深浅に 区切られている。さらに男女境脱衣所方に水だけのカランが2つある。そして牛乳石鹸のみど り桶というのが珍しい。

火曜日の17:30から18:15くらいに滞在。相客は数人といったところ。学齢前の女の子がお 父さんとやってきたりと、昔ながらの微笑ましい光景があった。

総てが心温まる銭湯だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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