差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年7月6日日曜日 9:18
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 宮の湯(京都市左京区一乗寺大新開町)

ナカムラです。

今日(5/31)は、「宮の湯(京都市左京区一乗寺大新開町)」に行ってきました。 一乗寺駅(叡山電鉄)から、0.6キロ、7分くらいです。

昨冬、2DKのマンションに住み換えてから、小さな部屋に合う小さな椅子を探している。京阪電車 終点の出町柳まで、われわれが店の名前にちなんで親しみを込めて「やっほ姉さん」と呼んでいる アンティーク家具屋に駆け付ける。さすがに気になる家具が揃っていた。しかし、気に入った椅子 は無情にも売約済だった。

やっほ姉さんによれば、小生が探している椅子は、どうやら昭和30年代の食卓椅子らしい。日本人 の体型が今よりも小さかったため、食卓椅子も今よりもかなり小さかったのだという。

さて、出町柳駅が起点の叡山電車に乗り、一乗寺駅に向かって北上する。そして、本などのセレク トショップの恵文社を経由し、白川疎水の傍らにある小銭湯、宮の湯を目指した。

向かいの児童公園の外構のコンクリは戦前のものだろう。一乗寺には、修学旅行で行った詩仙堂な どもある。以前は京都郊外では珍しい映画館などもあったという。現在は京都におけるラーメン屋 の激戦地。一乗寺は、京都の人にとってのどんな町なんだろうか。

同湯のモルタルの建物の脇には廃材が積んである。隣に大きな焼肉屋があって、人の出入りが多い。 しかし、郊外ゆえ、京都中心部とは違うゆったりとした印象を感じる。夕方、油井型の煙突からの んびりと煙が立ち昇っていた。

女将さんが表で疎水の脇に並べられた植木に水をやっていた。言うに事欠いて、営業中ですかと聞 けば「遊んでるようなもんだわ」という言葉が返って来た。確かに、言われたようにひっそりと営 業している感じがする。

建物の両端に男女別々の入口があり、それぞれ2房の暖簾が下がる。建物の奥行きが取れないのだ ろう、建物の中央の外壁がそのまま番台の背にあたる。そういった点では地方の典型的な小銭湯と 同様の構造だ。

暖簾を潜れば小さな靴脱ぎ場。正面の靴棚と番台の間に、古色蒼然とした木製蓋に鶴亀錠が付いた 下足箱が少数並んでいる。

女将さんが白い化粧板張りの大き目の番台に乗り込む。小生が500円玉を差し出すと100円返って 来た。表示されている料金よりも10円安いようだ。

脱衣所は、幅2間、奥行きは緩衝地帯を入れて3間ほど。茶色の桟の間に薄茶色のクロスが張られ た天井。2階があるので天井高さは1間半程度。床は籐敷き。ロッカーは外壁側に亀甲と折鶴の錠 が付いたもののほか、四角い脱衣籠も現役で使われている。

それなりに雑然としているものの、主立ったものは、Ishidaのゴツいアナログ体重計、旧型マッサ ージ機、宝飲料の冷蔵庫、ぶら下がり健康器くらい。緩衝地帯を抜けて浴室に向かうと女将から湯 桶を持って行くように声がかかる。湯桶は緩衝地帯の流しに積んである。

浴室の広さは、幅2間、奥行3間ほど。天井は最高部が2間ほどの高さの木板によるカマボコ型で 中央に大きな四角い湯気抜きがある。壁のタイルは中判の白。床のは、足触りのいいシックな濃淡 グレーの胃袋模様のタイルが使われている。一見して磨き込まれた清潔極まりない浴室ということ が理解できる。

島カランは、片側だけのものが外壁と奥壁に沿ってL字型に置かれている。カラン数はそれぞれ3 機。さらに、外壁に7機、奥壁に3機据えられている。

浴槽は、男女境に接して、奥からジェット3機の浅槽、焚出し口のみという深槽の2つ。薪焚きの 42度くらいの清澄極まりない極上のお湯が溢れている。さらに緩衝地帯に張り出すように2人は入 れる水風呂がある。

相客は終始1人だけ。時折、唸り声を上げながらこのお湯で寛いでいる。分かる分かる。

水風呂は掛け流しなのだろう、それに頼りすぎて多少メンテナンスがおざなりになっているのか、 タイルに微かにヌメりが感じられた。

快適な水風呂と柔らかな清澄な浴槽とを何度となく往復。言葉にし辛いし、何故かよく分からない。 しかし、東京銭湯で水風呂と浴槽を往復するのとは明らかに違う爽快さと解放感がある。旅先だか らではない。水の違いか、よく分からない。

上がりはビックル120円を頂く。

土曜日の19:00から19:40に滞在。相客は入れ替わりの客を含め2人だけ。番台は、さっきとは違 う年輩女性に替わっていた。

疎水の傍らのカマボコ型の天井の清潔な浴室に清澄な薪焚きのお湯。柔らかなお湯と水風呂を往復 し、京都の銭湯を実感する。

上がりの一杯は、数年前に休みで入れなかった鞍馬口通りの「さらさ西陣(旧藤ノ森温泉)」に向か う。明かりは点って楽し気なアコーディオンの音が漏れて来る。しかし、さるアコーディオンの団 体への貸し切り営業だった。楽しそうだったので混ぜてもらいたかったけど、そうも行くまい。

しかし、隣湯の船岡温泉よりも数段格が上の感じがする。また、出直さなければ。

三条に戻って、結局はいつもの旧毎日新聞社京都支局の地下に入る「アンデパンダン」へ。京都で の夕食はここが、朝食は「チロル」か「スマート珈琲」に行くことが多くなっている。ビールは控 えているけど、久し振りに緑色の瓶が美しいハートランドビールを頂いた。

宿に戻る途中に「柊屋」の前を通った。もう、22:30をも回っていたと思う。何とも印半纏が似合 う番頭さんが門前に控え、客の到着を待っていた。玄関先までのアプローチを見渡すと打ち水が施 され、灯籠に照らされた美しいアプローチが広がっていた。劇的空間への導入ということなんだろ うけど、流石老舗のなかの老舗。ビルの谷間なんだけど、素晴らしい”京都”だと思った。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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                                       出町柳




                   叡山電鉄・出町柳駅。駅舎が千鳥破風の建物だということが分る。






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