差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2005年3月5日土曜日 12:53
宛先: 銭湯ML
件名: 森の湯(大田区矢口)

ナカムラです。

今日(3/4)は、「森の湯(大田区矢口)」に行ってきました。
武蔵新田駅(東急多摩川線)から、50メートル、15秒くらいです。

武蔵新田は、売春防止法施行前の、城南唯一のカフェー街。
駅から近い食品スーパーマルエツ裏の路地に、今もその建物が2軒残っている。

かつてのカフェーは、第一クラブ、第二クラブ、第三クラブ称したアパート3棟の約100室。
そこに、州崎遊郭の流れをくむ、30数件の業者が入るという、壮絶な構図だった。
働き手は、主に21、2歳の若い娘・・・。

現在は、タイルや鉄平石を張った意匠にカフェ−調の特徴はあるものの、それと言われなければ、恐らく普通のアパートにしか見えないようなモルタルの建物。
3軒のうち1軒は、近年建て替えられ消滅した。

さて、森の湯。
主人に、「駅から近いですね、こんなに駅から近い銭湯は他に無い。」と言うと、
「駅から1〜2分ですからね」と。
1〜2分なんてかからない。
数えたら、改札を出て6軒目が同湯になっている。

昭和29年築の伝統銭湯。
4年前に中普請をして、今風の装いになっている。

脱衣場棟は破風を付けた黒瓦。
その前のタイル張りの入口棟にも破風様式の屋根の名残がある。
午前中の雪が黒瓦の上に白く残っている。

同湯は、表の通りから少し引っ込んだ所に建つ。
その導入路スペースを使って、エントランス部とフロント部を増築しているので、余裕のある間取りになっている。
下足箱の錠は松竹。
傘を立てるロッカー式の傘立てと、普通の傘の柄をロックする傘立ての双方がある。錠はともに松竹錠。

自動ドアを通ると完全フロント式。
左右に庭があって、石灯籠や小さいながらも水を湛えた池がある。

脱衣所は3間四方。
天井は、材はチープなものながら折り上げ格天井、さらに古い天井扇が下がっているというレトロなもの。
材料が簡素なのは、建てられた時代からすると、それでも頑張っている方かも知れない。

全体的な雰囲気としては、照明がオレンジの水銀灯だし、壁と格天井の天板までもが今様のクロス張りだったりするのでレトロな趣には乏しい。

ロッカーは外壁側にあり、錠はノーブランドのブロック状のごついロータリー錠のもの。
その他、旧型マッサージ機、稼動中のコインランドリー式の洗濯機が2台、TANAKAのアナログ体重計がある。

水銀灯が銭湯では例を見ない赤みのあるもの、洗濯機の騒音、オリジナルはレトロな造り。
少し、不思議な感覚を感じる空間ではある。

浴室は、幅3間、奥行3間半くらい。
天井は、2段型ながらプラ板が張られ趣きはない。
タイル類も床、壁ともに最新式のもの。
特に、パステル調の壁のタイルのデザインが好ましい。

同湯は照明にも凝っていて、カランの上には、洗面所のように、電球色の照明器が個々に付いている。
そのため、全体的に電球色の赤みのある灯りが空間を支配している。

さらに、男女境の上には、何と二基のガス灯のレプリカが立っている。
これは、異色だ・・・。ただし、中は白い水銀灯。
外壁側にも、照明部だけだけど、ガス灯のレプリカが3つ付いている。

カラン数は、男女境に8。
外壁側から櫛型に伸びる半島カランに、手前から0・4・4・0。
カランは日の丸扇の刻印のある角型で、取っ手が銀の八角形のもの。
全てに銀色のシャワーが付いている。

浴槽は、奥壁幅一杯に、白湯槽。
でんき風呂、バイブラバス、横向きの大型1穴ジェット。広さ十分。温度は思いのほか低く41度くらい。
浴槽の幅広の縁の上面に檜が張ってある。簡単な(?)オプションだけど、なななか心地がいい。

もう1槽が温泉槽。42度くらい。
黒湯としては,濃さは薄く、麦茶よりさらに色が薄い感じ。

両手に掬って匂いをかぐと、微かだけど、ゆ〜シティ蒲田の黒湯と同じオイリーな匂いを感じた。
小生この匂いは好ましいものと感じる。でも、温泉としての浴感には乏しいかな。
分析表などを掲げていないので、泉質などは分からなかった。

さらに、無料の乾式サウナ。何と、テレビまで設置している。
無料のサウナでテレビまであるのは、初めての遭遇。
大田区の銭湯は凄い。

水風呂はなく、ノズルがたくさん付いた豪華シャワーがあったけど、後ろのカランにその時点での唯一の相客がいて試せなかった。

ビジュアルは奥壁に洋風の湖のある風景のタイル絵。
湖を中心に、街、桟橋と船、幅の広い滝がある。
新しいタイプのタイル絵ながら、タッチは細かく、桟橋の船の細かな筆使いには目を見張るものがある。
新しいタイル絵にあまり感動はしないが、新しいタイル絵としての水準は高いと思う。

金曜日の21:45から22:30の滞在。
相客は5、6人と少なかった。
コインランドリーを使う生活銭湯人種は、サウナは使わないようだ。
こんな立派なサウナがあるのに、小生だけが、ゴロンとしていた。






















旧カフエーのアパート。右奥の建物とともに灯りが点っていない。

近年まで、写真の左にも旧カフェーの建物が残っていたけど、建て替えられている。残りの正面とその右奥の建物にも電気が点っていない。

建築物としての価値はないかもしれない。
しかし、いわく絶ち難い、女の歴史を感じる。