差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2010年3月17日水曜日 23:32
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 宗湯(北区田端)

ナカムラです。

今日(3/12)は、「宗湯(北区田端)」に行ってきました。 田端駅(山手線)から、0.3キロ、4分くらいです。

田端駅は山手線の駅の中で鶯谷駅とともに特に地味な駅だと思う。ピンコロ石を敷いた石畳と 石段が続く裏口の風情は山手線随一。駅前としては駒込寄りの表口もかなり地味だったけど、 こっちは切り通しを拡幅するかたちで、その両側に高いビルが建てられ、駅舎自体もアトレが 入った新しい駅ビルに建て替えられた。

切り通しに架けられたアーチ橋の下を通りながら、切り通しを道坂下に向かって歩き、少し入 った所に同湯はある。

白いタイル張りのアーチ窓があるファッサード。やはりアーチ型の入口に紺地に「宗湯」とい う力強い筆致の印象的なオリジナル暖簾が下がる。白いタイルや、この紺地の暖簾との配色を 考えているのか、松竹錠の下足箱の扉は珍しく紺色に塗られている。小技が効いたシックなエ ントランスと言っていい。

自動ドアを入れば、小ぢんまりしたアットホームな感じがするフロントスペース。何故か冷蔵 庫の奥に隠すようにビールが置かれている。連れが風呂銭を払い、スタンプ帳を差し出す。連 れも同じスタンプ帳を持っているけど、気に入った銭湯のみ、湯上がりにスタンプを貰ってい るようだ。見ていると、そのハードルはなかなか高い。

脱衣所を入れば、3間四方の空間。構造材が剥き出しで直天の天井の高さは伝統的木造銭湯と 同じく3間程。コンクリ造の銭湯としては高い。かなり古い時期に木造からこの建物に建て変 わったようだ。これからすると、表のタイル張りのフロント部分は純粋な増築か、旧エントラ ンス部分を壊しての改築なのだろう

脱衣所には、壁2面のロッカーと旧型マッサージ機とKAWAKAMI SCALEという見慣れないアナロ グ体重計があるだけ。コンクリに塗られた白ペンキも剥がれかけていて、やや殺伐感がある。

浴室は、幅3間、奥行4間ほど。外壁側がほぼ全面にガラスブロックが積まれている。天井は 男女境部分が2間半ほどで、外側が3間ほどと高くなっていくV字型のプラ板張り。島カラン は1列で、カラン数はセンターから、7・7・7・7。男女境に小タイル巻きの太い丸柱。壁も同 じく小タイル張りとイニシエ風情の浴室空間が縦に広がっている。

浴槽は、奥壁に接して深浅2槽のシンプルなもの。ここに、井戸水をガスで沸かしたじっこう の薬湯が注がれている。井戸とガスの組み合わせは悪くない。重油の煤煙問題と清掃の手間を 考え2年ほど前にガスに切り替えたという。敷地奥に聳えるコンクリの煙突は役目を終えてい るようだ。身体を冷ましては入ってと、何回も柔らかな湯を楽しむ。

ビジュアルは、奥壁のペンキ絵と、男女境の2幅のモザイクタイル絵。今日のミッションは、 早川さん、中島さん、丸山さんでもない絵師のペンキ絵をめでること。

男湯は「アルプスの湖畔」、女湯は「戸田の富士」。8年ほど前のものらしい。絵師の名前は分 からないとのことだった。製作方法が変わっていて、現場で描かれたものではなく、作業場で 描かれた部分部分を運び込み、組み立てたものという。元のタイルの上にパネルを張ったもの。 継ぎ目が目立たないように若干筆が入れられている。

男女境には2幅のモザイクタイル絵。絵柄は洋館や石橋が描かれた洋風のものと、松・入江・ 帆かけ舟、カモメという和風のもの。女湯にはやや不細工な鉄腕アトムの絵があるらしい。

金曜日の20:45から21:30くらいに滞在。相客は5、6人程度。ぱらぱらと途切れなく客が入れ 替わっていく。

上がりは、旧型マッサージ機20円で身体を揉みほぐす。買い手が決まっているのか、冷蔵庫の 奥に隠すように置かれたビールは遠慮し、牛乳130円を頂いた後、飲み屋を探す。連れはスタ ンプを貰った。そんないい銭湯だった。

同湯の並びに良さ気な赤提灯があったものの、人の出入りがない店に踏み込む気分的な勢いが 無く、久し振りに十条の「田や」へ。秋田の濁り酒「ぬぐだ丸」で、〆鯖、鶏唐揚げなどを頂 く。芝居がはねた篠原演芸場の客が少し流れてきただけで金曜日の夜ながら静かな時間が流れ ている。

テレビは金沢駅からの中継。今日がラストランになる夜行寝台特急「北陸」と、古いボンネッ ト型の電車が使われた急行「能登」が発車する模様を時間を割いて流している。

中年世代にとっての「北陸」は、身近ではない優等列車だった。「能登」は信越線回りの旧型客 車での運行が懐かしい。現在のボンネット型の元特急車両は、新幹線開業前、東北本線を走っ ていた「ひばり」や「やまばと」「あいづ」。これにもいくつかの思い出がある。

上野駅には3000人もの鉄道ファンが集まったという。最近の情勢としてはカメラ位置撮りを巡 って怒号が飛び交う。テレビでもそれらしい音声は聞こえた。「鉄」の中には、そんな現場が嫌 になって離れてしまった人も多いと聞く。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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