西の湯（呉市倉橋町室尾）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2006年9月18日月曜日 14:06
宛先: 銭湯ＭＬ
件名: 西の湯（呉市倉橋町室尾）

ナカムラです。

今日（9/12）は、「西の湯（呉市倉橋町室尾）」に行ってきました。
呉駅（JR呉線）から、市営バスで４５キロ、１時間くらいです。

約６０キロ先、大崎下島･豊浜の一本釣りの漁師は、漁船に乗って４０分くらいで室尾にやってくる。同湯に浸かり、同湯の隣家で洗濯して、船に泊まるという。小生が、大崎下島･大長を出たのが８：２５。室尾に着いたのが１１：００過ぎ。あたり前だけど、何倍もの時間がかかっている･･･。

室尾は、鰯漁で栄えた土地らしい。しかし、それも今は昔、かつて栄えていただろう表通りも、廃業して相当年数が経つ、干乾びた廃屋も目立つ。

東の「さくら湯」の一番風呂に浸かり、表通りに降りて来て、｢珈琲ふるかわ｣で水分補給。島といえ、音戸大橋で４０年以上も昔から本土と陸続き。食堂もあれば居酒屋も喫茶店もある。

大崎上島･木江で、｢この島には橋は架からないのか。架かる島とそうでない島はどう違のか。｣と問うた。すると、その島に使い道があるかどうかだねと。そういう意味では、倉橋島は、寂れているとはいえ、４０数年の昔から、利用度の高い島だったということなのだろう。

狭い集落なので、表通りから３分もかからず、西の湯の前に着く。昭和15年に建てられた町屋造りの銭湯。後方には、スマートな煉瓦煙突が立っている。因島もそうだったけど、古い銭湯の煙突は、煉瓦造が多いようだ。

同湯では、脱衣所と外部を隔てているのは、目隠しを兼ねている暖簾と窓に架けられた女湯の簾のみ。男湯には簾すらない。男湯は、開け放たれた窓から、脱衣所だけでなく、浴室までも見渡すことができてしまう。また、簾では、夜は女湯の脱衣所も中が透けてしまうのではないか･･･。

同湯は８２歳になる少し腰の曲がった婆ぁさまが一人で切り盛りしている。この前の断水の際の、銭湯無料開放の時には、かつて通った懐かしい面々がやって来たという。そんなことを嬉しそうに話してくれた。

脱衣所は、幅２間強、奥行２間半程度。天井は平格子天井になっている。番台はコンクリのタタキに脚で立つ式のもの。もっとも、高齢の婆ぁさまは昇ることはないようだ。

同湯の値段は、東の湯(さくら湯)と同様に１５０円。破格の安さ。しかし、それとて、遠来の珍客からは受け取れないと、最後まで収めてもらえなかった･･･。

番台、ロッカー、床等々すべてが古色蒼然としている。うまく言えないけど、やはり質実剛健、漁師町の銭湯という感じがする。女湯には、マッサージ機や、恐らくベビーベッドの機能をもつ台がある。

浴室は、幅２間強、奥行２間半。青いペンキでややボロボロの四角錘型の天井には湯気抜きがある。３方はプレーンな白タイルで開業当時からのオリジナル。最上部にマジョリカタイルのアクセントが走る。陸続きではなかった頃、広島からタイル職人がやって来て、施工したという。さすがに、やや緑色の黴が目立つ箇所もある。

以前は、浴室も浴槽もコンクリだったけど、昭和３０年代に改装した時に石造りにした。敷石は駅などの敷石に使うもので、高価なものだったけど、はじめはザラザラし過ぎていたという。今はいい風合いに落ち着いている。湯桶に｢フロヤ｣とあるのは、初めての遭遇。斬新だ。思わず笑ってしまう。

浴槽は、改装する前までは直火焚きで、湯がなくなると補給が難しかった。改装後は、沸かした湯をタンクに溜める方法に変更した。薪焚きの湯は４３度くらいか。同湯では、水は井戸と山からの水の混合らしい。海岸道りの開発で、寸断された取水経路を変えたりと、それなりの労苦があるようだ。

相客はひとり、やはり１０分も居ない。同湯の営業は１６：００から２０：００くらい。一日の客は３０人程度。婆ぁさまは、｢みんなの憩いの場じゃから。｣と力強く話していた。

同湯を上がって、海岸通りの｢北吉鮮魚店｣へ向かう。今日の重要なミッションだ。紺地に白抜きで｢さしみや｣という粋な暖簾が架かる。刺身の鮮度、価格の安さではつとに名高い。

刺身の盛り合わせを１．５人前とカサゴの煮付け、生ビール、直ぐ先にある1806年創業の林酒造｢三谷春｣を燗と常温で１合ずつもらう。カサゴは調理まで生きていたし、刺身も鮮度という点ではこれ以上のものはないだろう。

２５００円だった。大船･観音食堂で食べれば、恐らく、４５００円くらいだろう。再訪は難しいけど、とてもいい店だ。

１７：１５分のバスで呉に戻る。大国湯か寿湯でも入るかと、土砂振りの中、呉の街に出たけど、両銭湯とも２１：００に閉店した後だった。組合のＨＰでは、大国湯の閉店時刻は２３：００。よくあるパターンだけど、閉店時刻が繰り上がっていた。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp　　
URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ （風呂屋の煙突）
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男湯	男湯
女湯	男湯
女湯。｢フロヤ｣と書かれた湯桶。	男湯
山崎商店。表通りで存在感を発揮する大店だ。以前は、酒、味噌、醤油の計り売りなどもあったという。衣料品の大きなショーウィンドウまである。しかし、近々閉店する予定という。	サクラビールのホーロー看板。サクラビールは、大正元年設立の旧鈴木商店系の櫻麦酒が製造販売を行っていたブランド(発売は大正２年)。昭和１８年に大日本麦酒(現アサヒビール、サッポロビール)に吸収合併され消滅した。これからすれば、大正２年から昭和１８年の間のホーロー看板ということになる。