差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2013年2月2日土曜日 0:23
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 栄湯(豊島区池袋)

ナカムラです。

今日(12/14)は、「栄湯(豊島区池袋)」に行ってきました。 池袋駅(山手線等)から、1.0キロ、10分くらいです。

年末も近くなって、ボスをはじめ来週からクリスマス休暇に入る同僚も多く、職場は少しの慌ただ しさ。小生もその1人なので、諸事遺漏ないか気を遣う。

もっと仕事を進めておきたい気持ちもあるけど、金曜日なので、取りあえず銭湯。丸の内線で池袋 に向かう。

池袋の街は完全にクリスマスモード。忘年会で旧交を温めているのか、揺れながら歩く爺の小集団 も多い。

さて、栄湯。池袋から、趣ある十三通り商店街、仲通り商店街を下り、よりディープな坂下通り商 店街の一角にある。坂を下り切った所は、金泉湯(大塚)、三立湯(西池袋/廃業)、東湯(西池袋) を擁する谷端川(小石川)の暗渠。同湯もそんな谷端川に近いロケーションに建つ古いビル銭湯だ。

創業年不詳。しかし、昭和5年に経営を引き継いだというからかなりの老舗だ。池袋切っての有名 レトロ銭湯、新栄湯とは同根らしい。あの新栄湯は、”新”栄湯なのかと得心する。

敷地の一角に、鳥居と社がある、鉄筋コンクリート3階建ての建物。電気が点っていない部屋が多 く不気味だ。築50年近く経っているだろうか。住宅密集地。すぐ隣は拡幅のための道路用地になっ ているので、建物の全容を見渡すことができる。

節電で灯りが少ないエントランスに暖簾はない。シャッターも完全には上がっていない。傍らのコ インランドリーでは、汚らしいトレーナーを着た中年オヤジが、洗濯しているのか酒をくらってい るのか分からない状態で、ともかく酒を片手に太った体躯を揺らしている。同湯を出入りするのも、 心なしかシャビーな雰囲気の客が多い。

入るといきなり”下足箱を使わないと靴を持って行かれる”旨の張り紙がある。。。旧型さくらの下 足錠に短靴を放り込む。

自動ドアを通れば、前面を面取りした木目プリント新建材の高い番台。ダウンジャケットを着た大 将は、顔を60度も上に向けて、番台専用としては少々大きい旧型のブラウン管テレビを見上げてい る。

脱衣所の広さは、幅3間半、奥行4間ほど。古いビル銭湯なので天井は高い。壁と天井に張られた ひび割れたクロスには、見るからに埃が積もっている。

ロッカーは、島ロッカーが1つと外壁側にアルミ板鍵のSakura-2錠のもの。その他、使われていな い卓上ゲーム機が2台、Hokutowのアナログ体重計、2枚扉の古い冷蔵庫などがある。

男女境の上には、ビル銭湯なのに敬心社の広告看板。セキネ、大黒屋、丸惣などスペースの半分以 上が、昔の合法的な高利貸し、質屋の広告で占められている。今はサラ金に代わったけど、昔も今 もそういった店が流行るという土地柄は変わっていないようだ。

浴室は、幅3間半、奥行4間半、天井高2間弱とかなりの大型。…と、何だこれは! まず、奥壁 の真っ黒な黴で覆われた大きなモザイクタイル絵に驚かされる。。。

島カランは2列で、カラン数はセンターから8・7・7・7・7・7。床のタイルはふっくらとしたオフ ホワイトの3センチ角のもの。島カランも、台はモスグリーンの斑模様の長方形のタイル、側面は 中判の白と深緑の大理石模様のタイルというように、タイル遣いは昭和中期が全開だ。

カラン数43機の大型銭湯だけど、現在の”定員は5名”ほどのようだ。清掃の手間を考えて、ピー ク時の必要数だけ出しているのだろう。門型の緑椅子は5つ。湯桶も7つしかない。

そっちこっち、井戸水の析出物あるいは湯垢から分からない白い付着が多い。ここに、直に座るの はためらわれる。やはり定員5名の銭湯だ。。。

浴槽は、奥壁に接した深浅2槽。深槽は何らの設備がない素の浴槽。浅槽は1穴ジェット×2とい うシンプルさ。お湯は、井戸水を薪で沸かした42度くらいの円やかなもの。同湯の往時の姿を想像 しながら、ゆっくり、じっくりと身体を温める。いいお湯の力は偉大。こんな刺激的な空間だけど、 休息を取り、英気を養うことができる。

ビジュアルは、これほど黴たモザイクタイル絵は見たことがないというほどのド真っ黒なもの。濃 い色使いで風車小屋、小川、それに架かる石橋という長閑な風景が描かれている。試しに、薄紫色 のタイル1枚を指で擦ってみる。目地はともかく、タイルの黴は容易に取ることができる。要は、 清掃する気が無いということのようだ。

上がりは、1本だけ残っていた明治の瓶牛乳120円。購入のお礼を言う大将の満面の笑顔と、風呂 場の状況との落差に少し複雑な心持ちになった。

金曜日の19:30から20:20に滞在。相客は4人で、小生と合わせて、ちょうど定員の5人だった。 ビル銭ながら、旧型さくらの下足錠、敬心社の広告看板、タイル遣いも昭和。。。しかし、全てがメ ンテナンス不良。歴史ある銭湯だけど、風前の灯火感が強く漂っていた。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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