差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2015年3月6日金曜日 22:26
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 栄湯(新宿区西落合)

ナカムラです。

今日(12/30)は、「栄湯(新宿区西落合)」に行ってきました。落合南長崎(都営大江戸線)から、0.7キロ、7分くらいです。

今日は仕事納め。10数人で恒例の日本酒付きの蕎麦ランチを頂き、定時に退社する。

駅から同湯への道すがら、今年竣工した鉄道模型関水金属(ブランド名KATO)の瀟洒な本社ビルがあった。新しく大きな模型会社の本社ビルというのにも驚いたけど、戦前製の模型ではない本物の京浜急行「デハ268」がオープンなかたちで”停車”しているのに更に驚かされる。

小さな説明板によると昭和11年製高性能車(汽車製造〔現川崎重工業〕社製)で、後の新幹線に、開発された技術の一部が採り入れられているという名車らしい。

さて、同湯向かいの地場スーパーで見慣れない日本酒のワンカップを仕入れた後、月・金週休2日の栄湯へ。

週休2日なので、後継者難の古いビル銭湯なのかと勝手に想像していたけど、バブル真っ盛りの28年前に建てられた高規格なマンションの1階に入るビル銭湯だった。昭和22年の航空写真で、伝統的木造銭湯の大きな姿を確認できるので戦前からの銭湯のようだ。

相方がマンションの銘板を見ては手招きしている。「西落合ニューヨークマンション」とあった。”入浴”と”ニューヨーク”を掛けた駄洒落的なネーミング。臆面もなく一大資産で駄洒落を演じることが出来るのもひとつの見識かも知れない。大阪・生野区の源ヶ橋温泉のファッサードに”自由の女神象”があるけど、源ヶ橋温泉もここまで直接的ではない。

入口には正月飾りと、簡素ながら門松が置かれ、出入りの客はみな、変則的な正月の営業案内を確認している。

暖簾を潜れば使い込まれた木札の松竹錠の下足箱がある靴脱ぎのスペース。自動ドアを入れば、絨毯敷きの広いロビースペース。天井の高さ十分な贅沢な空間。しかし、2機の凝った天井の照明器具には1/3しか電球が付けられていない。震災から3年半が経つけど、ずっとこのままなんだろうな。”衰退”という第一印象が寂しい。

フロントの大将は想像していたよりも若い方だった。サウナはプラス400円ということなので長風呂になるので今日はパス。東中野の「健康浴泉」でひとりだけサウナに入ろうとしたら、ちょっとお茶目な感じの大将に「(ひとりだけ入るのは)止めなよ」と言われたのを思い出す。

アイスクリームケースの上に印象的なこけしが3つ有ったので由来を聞くと、元は御徒町にあった大黒湯の鳴子のこけしで、廃業とともに同湯にお嫁に来たもの。台東区と鳴子は提携する姉妹都市らしい。

脱衣所は、幅3間半、奥行3間ほど。天井は、白を基調としながらも経年変化と過ぎたる節電で少々暗い印象が残る。ロッカーは、島ロッカーが2つと外壁側に並んでいる。体重計はHOKUTOWのアナログ体重計。

浴室は、幅3間半、奥行4間ほど。外壁側には明るく綺麗な感じのサウナが喰い込んでいる。島カランは2列で、カラン数はセンターから7・6・6・0・6・0。天井高は低く、中央部が窪むようにプラ板が張られている。床のタイルは白い星形模様のもの。

浴室に足を踏み入れた際、微かに石油系の匂いを感じた。カランからの湯水を鼻にかざすとごくわずかに石油の匂いがした。同湯では井戸水をガスで沸かしている。温泉では北海道の豊富温泉。銭湯では油ガス田地域が近い新潟で石油の匂いがする銭湯があるらしい。

同油の場合は天然物とは思えないけど、地下の水脈に微量の廃油が流れ込んでいるのかも知れない。温泉をうたう平塚の「太古の湯」でも強い石油の匂いを感じたことを思い出した。

浴槽は、奥壁に沿って3槽。主浴槽である浅槽には寝湯×1。深槽には珍しい5点座ジェット×1。後から外壁側の一部を仕切って温湯が追加されている。湯温は42度弱。天然水にはミネラルも含まれているようだ。黒い析出物が浴槽の内側のタイルに付いている。

ビジュアルは、中野区の江古田湯にあった白色タイルにパステル調の線で水平線と沈み行く太陽をデザインしたもの。好きなデザインだけど少々メンテナンスに難がある。さらに脱衣所との仕切の上には、水平線を走るヨット、雲、砂浜に茂る椰子の木などを描いたガラス絵。結構、豪勢なものだ。

上がりはビックルを頂く。相方は新宿区銭湯のキャラクターの”ゆげじい”のストラップを買っていた。

仕事納めの師走30日の19:15から20:25に滞在。月・金の週休2日の銭湯だというので枯れているのかなと想像したけどそうでもなかった。ただ、節電で暗いロビーでは楽しい気分にはなれないかな。バブリーな「西落合ニューヨークマンション」との対比がさらに侘びしさを際だたせていた。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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                         途中には銅板張りの看板建築が残っている




                                    自性院(猫寺)


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