差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2007年9月17日月曜日 15:23
宛先: 銭湯ML (sento-freak@kt.rim.or.jp)
件名: 桜湯(三島市泉町)

ナカムラです。

今日(9/16)は桜湯(三島市泉町)に行ってきました。 三島駅(JR東海道本線)から、0.7キロ、8分くらいです。

三島の中心地域は、三島駅から延びている伊豆箱根鉄道駿豆線で1つ目の三島広小路駅周 辺で、そこからだと0.4キロ、4分くらいです。

三島には10軒ほどの銭湯があったけど、桜湯だけになって、もう何年にもなる。 先月初旬にも三島に来て、生憎にも同湯は定休日だったけど、湧水が気になるいい街だった。 またやって来た。

駅前には、明治天皇の側近だった小松宮親王の別邸だった楽寿園という大庭園がある。庭園 の湧水が源兵衛川となって市街を流れている。しかし、湧水だけでは足りなくて、東レの工場の 冷却水が主体だったりという実態はあるものの三島はとりあえず清流の街だ。

今回は、有名な鰻でも食べながら呑んだくれるかと、源兵衛川のほとりに「ホテルニューかのや」 という安宿を取った。大正15年創業。これも、この前に目を付けていたホテルだ。(なかなかお 勧めです。)

源兵衛川では子供たちが水に飛び込んで遊んでいる。見ると魚影もある。手を入れるとかなり 冷たい水だ。鰻の美味しさは、捌く前に使う活〆の水で決まるらしいけど、鰻だけでなく三島の 子供たちの情操教育という点でも、優れたインフラだと思う。

さて、桜湯。 同湯は、一時期、遊廓内の銭湯だった。

三島は東海道の宿場の中でも、箱根越えを控えていたため規模の大きな宿場で、三島女郎は つとに名高かった。三島の遊廓は何回か移転させられて、最後に同湯があるエリアにやってき た。五大遊廓の1つ名古屋・中村遊廓を模したという大規模なもの。今も街路にその名残がは っきりと残る。しかし、昭和33年の売春防止法の施行により、完成形を見ずして廃止となった。

同湯の歴史も古い。女将の話によれば、大正11年とか13年まで遡る。現在のコンクリ造平屋 の建物は昭和41年築のもの。小生は、南方の銭湯を見たことはないものの、ファッサードの腰 部に鉄平石を張った、ブロック積みを主体とする同湯は、どことなく南方の雰囲気を持っている。 今まで見たこともないタイプの銭湯だ。表には小さな「桜湯」という行燈型の看板だけが付いて いる。丁寧にペンキ塗りされていて、メンテナンスも十分だ。後方の煙突はステンレスパイプ製 で、やはり古さは感じられない。

アルミサッシの扉が開け放たれ、薄い暖簾が下がっているのみ。女湯も同様なので、写真を撮 影するのに気を遣う。

入ると狭い靴脱ぎスペースがあって、傍らに番台がある。70歳くらいかな、沼津ご出身の女将 に360円を払う。下足箱はなく、番台の側面に棚があって、そこに収納する。

金属パイプの枠に布を張った衝立がある脱衣所は、幅2間、奥行はタタキ部分を含めて3間ほ ど。本当に小さな銭湯だ。小田原の田浦湯よりは大きいけど、横須賀銭湯よりも小さい。

最大の特徴は、脱衣所の床が全面タイル張りということだろう。一面に濃・淡ブルーの小石タイ ルが張られている。滑るからか、冷たいからか、ビニールの床材が敷かれている。南国の銭湯 は、脱衣所がタイル張りなのだろうか・・・。

ロッカーは外壁側にあるのみ。壁には「これ以上お風呂道具をお預かりできません」という旨の 張り紙や、とても平成19年のものとは思えない、全てが墨書体の静岡県の入浴料金表などが 張られている。ご常連は主に丸籠を使っているようだ。その他、アナログ体重計、森永の冷蔵 庫などがある。

浴室は、幅2間、奥行2間半。天井は1間と2/3のプラ板張り。センター側、奥壁に接するかた ちで換気扇のみが取り付けられた湯気抜きがある。窓等がない湯気抜きというのは銭湯として は珍しいと思う。

カランは、男女境と外壁側に4・4のみ。カランはWaguriの取っ手が赤・青のもの。椅子は今で は少数派になった緑椅子で、湯桶はオレンジの小型のもの。

浴槽は奥壁に接して深・浅2槽。大阪銭湯のように1段の踏み込み段がある。双方ともジャスミ ンの薬湯。湯温は42度くらい。循環設備はないようで、湯を供給する剥き出しのパイプが浴槽 に伸びている。薪焚きの湯で、以前は富士山の伏流水の井戸水だったけど、井戸が枯れて水 道水を沸かしている。

浴槽の横には湯揉み用の櫓の形をした棒が立て掛けられている。循環設備がない銭湯は少な いので、湯揉み棒を見かけることも少ないけど、舟の櫓の形というのも珍しい。

壁には、「キケン/浴ソウに絶対にタオルをつけないで下さい。」とある。「キケン」という言葉に 笑ってしまう。浴槽にタオルを入れるのは良くないが、人に危険が及ぶ話ではだいだろうに。

ビジュアルは、奥壁に富士山のモザイクタイル絵。目地が多少カビていて、陰影を増している。 コントラストがあるいい表富士(静岡県側からの富士山)のタイル絵だ。ちなみに、女湯は裏富 士(山梨県側からの富士山)らしい。

上がりは、ビールの類いはなく、森永牛乳100円を頂く。あるとビールを飲んでしまうけど、たま に飲む牛乳はいいものだ。

同湯付近には、ソープランドや、ハモニカ横丁的な飲み屋街、古くからの旅館がいくつもある。 往時の建物はないものの、六反田遊廓だったという歴史的な背景は引き継がれているようだ。

日曜日の17:00から18:00に滞在。こんな小さな銭湯だけど相客は8人ほどと思いのほか多 かった。

鰻は「桜家」という店が行列店だけど、並んで待つほどの根性もないので、地元人の支持が高 いらしい「本町うなよし」に行く。

入ってしばらくすると並ぶ人も出てき。こちらも人気店のようだ。驚くほどではないけど、上品で いい味だった。もっとも、桜湯の女将は両店には行かず、総菜屋で蒲焼を調達して、自分で作 ると言っていた。まぁ、それが一般的な姿なのかも知れない。

たまたまだけど、桜湯が500湯目。かつて遊廓だった地域にある歴史のある銭湯。泊まりでち ょっと旅行気分。印象に残るだろう銭湯だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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楽寿園
水位104センチ。満水の半分くらいだけど、今年一番の水位だった。





源兵衛川


源兵衛川畔の「ホテルニューかのや」


奥の家の屋根には繋がれた猿が居る。





本町うなよし


うな重1980円


かのやの朝食