差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2013年3月1日金曜日 23:17
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 清水湯(中野区沼袋)

ナカムラです。

今日(2/22)は、「清水湯(中野区沼袋)」に行ってきました。 沼袋駅(西武新宿線)から、0.4キロ、5分くらいです。

ほぼ3週間振りの銭湯へ。ここ10年、これほど銭湯から遠ざかったことはないかも知れない。ここ 何カ月、毎日7:30には業務開始。それでも、結構仕事は立て込んでくる。しかし、久し振りの週末 銭湯に気がそぞろになり、18:00頃には早々に会社を出た。

大手町駅から東西線で、高田馬場駅経由、沼袋駅に向かう。沼袋は、一昨年の震災直後に「第二朝 日湯(廃業)」を訪れて以来。駅前に、清水湯支店の「一の湯」があって、一角の飲み屋小路にいい 雰囲気が漂う。特に、「一の湯」の並びにある紺地に赤色で”ホルモン”という暖簾を掛ける店が実 にいい。ただ、湯上がりには向かないかな。。。

昔ながらの私鉄沿線の駅前風景を残す沼袋駅界隈。同湯は、駅から400メートルほど北上した百観 音明治寺の北側にある。

表通りから見通せる位置に”清水湯”という黄色いアーチが道を跨いでいる。清水湯は、コンクリ 煙突を持つ昭和5年創業の伝統的木造銭湯。残念ながら、4月3日を以て80余年の長い歴史を閉じ ることになっている。

建物は、細い道路に平行に建つ。素っ気ない感じのむくり破風にやはりトタン張りの素っ気ない千 鳥破風のエントランス。そのエントランスへアプローチする私道が、全面的に屋根と壁で覆われ” 屋内”になっている。実質的な同湯の入り口は、私道の入り口のシャッター。その内側には、卓上 型の麻雀ゲーム機、同湯の旧来からのエントランス、コインランドリーがある。

旧来のエントランスにも暖簾はない。傍らには、一の湯の案内とともに、少し先の4月3日を以て 閉店する告知が張ってある。支店の一の湯に顧客の誘導を進めるため、珍しく余裕を持った告知だ。 そして、同湯の廃業と関係があるのか、4月から一の湯の定休日が変わるようだ。

エントランスの天井は平格天井。扇形で男・女を表示しているのが古めかしい。そして、左右に松 竹錠の下足箱が並ぶ。

番台への扉を開ければ木組の番台。上品できちんとした感じの女将さんが居住まい正しく座ってい る。

脱衣所の広さは、幅4間、奥行3間強。天井高が低い、外壁側1間ほどが増築のようだ。オリジナ ル部分の天井は折上げ格天井。壁とともに折上げ部は白く塗られている。格子や太い梁には一見していい材料が使われているのが分かる。

女将さんによれば、戦後1度建て替えられているという。いつ頃の建物なのだろう。というのは、同湯は昭和22年の航空写真に写っているので戦災に遭っていない。一部には昭和5年当初からの部 分が残っているはずだ。。。

ロッカーは、中央の島ロッカーと外壁側の増築部に松竹錠シリンダー式のもの。客が少ない感じは ないけど、大きめの飲料ケースは既に商品が払底した寂しい状態になっている。その他、ソファを 置いた休憩スペース、Hokutowのアナログ体重計などがある。

目を引くのは、大黒柱に掛かる鯛を描いた油絵の大作。凡作ではない。さらにもう1枚、浴室の入 口の上に錦鯉を描いた額が掛かっている。

同湯には、柵を施した濡れ縁を介し、高級な庭石を配した池がある。手入れは行き届いているもの の水が張られておらず、代わりに白い砂利を敷き詰めた”枯山水”になっている。

絵に描かれている鯉は、この濡れ縁から庭池を見下ろしたものではないだろうか。まだ池に水があ った頃、そこを鯉が群れ泳ぐ、そんな絵だった。

浴室の広さは、幅3間、奥行4間ほど。浴室構造は、木板張りのフラットな天井と、同じく木板の ストレートな壁による”箱型”。木造の大型銭湯としては、極めて希な構造と言っていい。記憶にない初めての遭遇だ。

2段型よりも段差がない分、広い空間が広がっている。手入れが行き届いているのがいい。外観は、 陸屋根かと思いきや、両サイド切妻に千鳥破風になっている。よく確認できなかったけど、後方に も山形の屋根が載せられているようだ。

この特異な屋根の構造は、昭和38年の航空写真と同じ。昭和22年の写真は不鮮明で、しっかりと は読みとれないけど、似ている感じがする。浴舎の躯体はオリジナルなのかなぁ。。。

島カランは2列で、カラン数はセンターから7・5・5・5・5・0。床のタイルはパール色の星型。カ ラン周りは、台が赤御影石、脚部はサワーピンクの大理石模様のタイルが使われている。

そして、清潔極まりない同湯の浴室を、さらに華やかに演出しているのが、男女境と島カランの鏡 の周りに使われている”陽光あふれる菜の花畑”といったタイル使い。清潔だから明るく瑞々しい。 なかなかレベルが高い。

浴槽は、奥壁に沿って3槽。センターから8点座ジェット×2水枕付で42度、中央が素の浴槽で42 度、外壁側は薬石と陶製のカエルの置物を仕込んだ焚出し口があるバイブラの浴槽で41.5度くらい。 何れも”菜の花畑”のイメージと呼応するように、内側にはライトグリーンのタイルが使われてい る。

そして、同湯の真骨頂は、お湯の凄さ。屋号に偽りない奇跡の”清水”を薪で沸かしている。深井 戸からの天然水は、煮沸なしで飲用にも耐えるという。脱衣所には検査済証の写しがある。そんな 清らかで円やかさのあるいいお湯。ひと味もふた味も違う。

ビジュアルは、奥壁に深緑色の空を飛翔する三羽の丹頂を描いたちぎり絵調のモザイクタイル絵。 同じ緑系統の色使いながら、菜の花畑の華やかさを、お抹茶色の少し重々しい緑色で均衡させてい る。

脱衣所に灰皿があって、掟破りの喫煙可になっていることで評価は厳しくなったものの、かなり優れた銭湯だった。上がってからの相方との”反省会”で、多少興奮気味だった自分に気が付くほどだった。

帰路は、中野北郵便局前からバスで地元に一目散。久し振りに近所の小料理屋で一杯。

この小料理屋のアルバイト嬢に、田舎の高校の女子バレー部員風がいる。前から”地”は可愛らしい子だと思ってはいた。しかし、1年365日、常にトレパンで過ごしてますという雰囲気の構わな さ。今日もトレパン姿は変わらないけど、久し振りに見ると、なんだか綺麗なおねえさんになっていた。

金曜日の夜。いい風呂。いい酒。今宵もだんだんとメートルが上がっていく。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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               表通りから見通せるような黄色いアーチ型の看板がある。




                 2段型ではない、体育館のような希有な構造の浴舎になっている。




     エントランスに向かう”小径”に屋根が架かり、壁が築かれ、屋内になっている。



                   昔ながらの私鉄の駅前風景が残っていた




               ”奥様公認の店とある”



             一の湯の1軒置いて隣のホルモン焼き屋。角に古い街灯の柱が残っている。




                            古い洋服屋