差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年6月2日水曜日 0:02
宛先: 銭湯ML
件名: 清水湯(世田谷区太子堂)

ナカムラです。

今日(5/29)は、「清水湯(世田谷区太子堂)」に行って来ました。
三軒茶屋駅(東急新玉川線)から、0.6キロ、10分程度です。
本当は、前から気になっていた「代沢湯」が目的地だったけど、臨時休業らしいのでセカンド目的地へ変更。

三軒茶屋は見どころが多い。レトロ映画館(三軒茶屋中央劇場)や銭湯も多い。
千代の湯と八幡湯の外観を偵察・・・。

さて、清水湯。
大正12年創業。現在の建物は昭和37年に建て替えられらもの。

入口は唐破風の威風堂々とした黒瓦。その上に大きな千鳥破風が載っている。
懸魚はないけど、籠手絵のような意匠と、暖簾の上にはスリガラスで「清水湯」と書かれている。
銀色に塗られ、屋号を記したコンクリの煙突からは黒煙がモクモク・・・。

戸を開けるとこれまたレトロな空間。
脱衣所の広さは幅3間、奥行3間半。
天井は折り上げ格天井。格子は正方形と長方形を組み合わせた変則型。格子はしっかりとした材で組まれていて風格がある。
大黒柱には黒い柱時計が現役。
外壁側には縁側があり、その外には池、築山、瀧とフル規格。

ロッカーは入口側にオール木製の奥行きがあるロッカー。古いおしどりの板鍵が付いている。
このロッカーの上には脱衣かごが5個ずつ3列に並べられている。
現役ではない感じだけど、丁寧に維持されている。

現役なのは縦置きと横置きの島ロッカー2つ。
基本的におしどりの板鍵だけど、所々、松竹の板鍵になっている。
その他に、男女境に大型のテレビ、ラムネの入った冷蔵庫、Keihokuのアナログ体重計、ロッカーの上には1/100スケールの同湯の模型がある。

浴室は幅3間、奥行4間の大型。
天井はウィングの幅が狭く、高い方の天井が大きい体育館型。

島カランは1列で、カランはセンターから7・5・5・5。カランはWaguriの角型。
外壁側に立ちシャワーが2つある。

浴槽は深浅2槽。深槽がデンキ風呂になっていて、温度が44度くらい。
浅槽は2穴ジェットが2組、赤外線ランプも2つ設置されているけど点灯はしていなかった。温度は43度くらい。
変っていると思ったのは、手前だけでなく、奥にも腰掛けられる段差があること。ジェットを肩にも腰にも当てることができる。

ビジュアルが充実している。
男女境には、縦書きで、「九谷」「鈴栄堂」「翠光画」と墨書されたタイル絵(縦5枚×横43枚)。
絵柄は、湖に家や舟、ボートが描かれている。
どことなく和風調のものと洋風調のものが混在していて、バランスには欠けているかな。

奥壁は、13.4.10、富士川、早川とある富士山。

清潔な銭湯なんだけど、少し下水の臭いが気になった。
目に見えない部分の清掃が行き届いていないのかな・・・。

久し振りにラムネを賞味。80円と格安だった。
最近のラムネは破裂防止で、炭酸の圧力を抑えているらしい。
そういえば、昔のように勢いよく泡が吹き出したりはしない。

男女境の鏡には、創業時の建物と建て替え時のモノクロ写真が貼られている。
創業時は、畑の中にぽつんとあった銭湯だったらしい。81年も前のこと。

満足して番台脇の戸を出ると、同時に女湯から若い女性が出てきた。
身体の線を強調する黒い服で着飾って、そして香水の香りを漂わせた、綺麗な女性だった。
銭湯で遭遇した、マイ・ベストワンかも知れない。

小生、先に進み、外のベンチに腰掛けながらブーツを履こうとしているその女性に、「番台の銭湯は恥ずかしくないか?」と聞いた。
見えない場所でササッと着替えるから大丈夫・・・と。
いつも来るのかと聞くと、「こっちに来た時はいつも・・・」と。
土曜日の夕刻。「こっち」とは彼のアパートなのかな。
銭湯でお洒落を整えて、彼の家に行く。
銭湯を使いこなす、性格の良さそうな娘だった。

番台の中年の主人が、不自然に新聞に目を落としている理由がよくわかった・・・。
三崎の「高野湯」の主人も、女子大生風の一群が入場したら、いたたまれないのか商店街に脱出していた。
どうも、銭湯の主人はシャイなようである。
まぁ、そういった人種が今では珍しく、だから場馴れしていないということだろうけど・・・。

帰りは三茶から下北沢まで歩く。
途中で「代沢湯」を偵察。
隣の理髪店は廃業したのかな。「富士」というその店との並びの風景は味があった。