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差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年11月30日日曜日 7:44
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 新越泉(中野区新井)

ナカムラです。

今日(10/11)は、「新越泉(中野区新井)」に行ってきました。 新井薬師前(西武新宿線)から、0.3キロ、3分くらいです。

新宿ピカデリーで映画「柘榴坂の仇討」を観る。隣のスクリーンは「蜩ノ記」だった。いずれも大 きなホールではないもののほぼ満員という感じだった。

「柘榴坂の仇討」は、いくつもの小説があり何度も映画化されている大老井伊直弼が暗殺された桜 田門外ノ変をベースとした映画。彦根藩主の護身番の中井貴一、襲撃に加わった水戸藩浪士の阿部 寛。事件でいずれも大きく人生が狂い、時代が明治に移ってもなお惨めさと悔恨のなかで雌伏を余 儀なくされていた。

感動というのとは違うけど、双方が相手の苦難の半生を思い、噛みしめるように理解しながら剣を 交えるラストにはジンと来た。良くも悪くも典型的な日本映画で、懐かしさを感じながら安心して 楽しむことが出来た。

さて、少し胸がいっぱいになったので、新井薬師のあいロードを冷やかしながら中野駅から1.3キ ロほどの道のりを新越泉に向かう。

地図を持っていなかったのでGoogleマップのナビを使ってアプローチした。しかし、示された現地 に到着しても銭湯らしいものが見あたらない。最初はGoogleマップの設定を間違ったかと思ったほ ど。

同湯が入る「SHINETSUSEN BLD.」は2階に保育園が入るものの夕方で既に灯りはない。同湯は表か らは見通すことが出来ない1階奥にフロントがあり、浴室部分は地下に有る。それなのに、入口に 小さな小さな表示があるだけで、商業施設が付けているような看板と呼べる物が一切ない。何故な んだろうか。これは不作為ではないと思う。

古い屋根が架かる新井薬師駅前の商店街からも見通せる位置の、大きな建物に入った銭湯。しかし、 ここに銭湯があることを知らない人は多いように感じる。何故、息をひそめるように営業している んだろうか。

いつもながら前置きが長くなったけど、取りあえず入るか。。。

同湯は、最近リニューアルされたらしい。ガラスブロックが積まれたエントランスから入って、ビ ルの奥にある入口に進む。上がりかまちといった段差が無いのが印象的。スーパー銭湯のような木 目調のスチール製の下足箱が並んでいる。

眼前にはホテルのような広いロビー。そして、幅広いカウンターが広がる。シックな内装だけどス ペック的にはかなり豪華。相方が2人分の風呂銭を商売気無さそうな大将に渡す。サウナは高そう だったので今日はパスする。

同湯は戦後当地に移って来て、バブル絶頂期の昭和63年、過剰スペックとも思える現在の SHINETSUSEN BLD.に改築された。昭和38年の航空写真で見る限り、先代の建物はかなり大きな伝統 的木造銭湯だったようだ。

脱衣所と浴室は地下にある。地下2階へ降りる階段室の壁は、ガラスブロックの裏側に蛍光灯が仕 組まれていて、あたかも輝く滝のように煌々としている。

降り切った所には枯山水風の坪庭まであって、そこから自動ドアを通り脱衣所に入る。

脱衣所は、幅4間、奥行6間ほどの籐敷きの余裕たっぷりの広さ。ロッカーは櫛形に木目調のスチ ールロッカーが置かれている。

壁には大型のテレビが掛けられ、それを囲むように扇形のソファが並べられている。風情とか潤い というものは絶無だけど機能的な空間だ。

浴室の広さは、幅4間、奥行8間半ほど。その広さに度肝を抜かれる。小生が経験した限りにおい て下板橋の小松湯を凌ぐ東京最大の銭湯だ。しかし、浅い山形の天井は意外なほど低い。推測だけ ど、女湯は男湯の隣ではなく、階上の地下1階にあると想像。地下に広い男湯と女湯が2層に重な っているという凄い銭湯なのかも知れない。

島カランは櫛形に2列で、カラン数は脱衣所側から0・5・5・5・5・4・0と意外に少ない。床のタ イルは30センチ角の茶色とベージュのものが市松模様に張られている。壁は腰高まで緑色の石張り。 基本はシックながら、かなり豪華な浴室だ。

浴槽は、片側に脱衣所方から水風呂、一部が電気風呂になっている主浴槽、寝湯×3機。さらに、 奥に「ザクロ美肌湯」というショッキングピンクの薬湯槽が置かれている。「柘榴坂」の映画を観て 「ザクロ」の湯に浸かる。この薬湯槽も寝湯×2機を含め、主浴槽と同じくらい広い。湯温は主浴 槽が42度弱、薬湯が40度強といったところ。

土曜日の19:05〜19:55に滞在。相客は10数人ほど。1階のロビーの大きさに驚き、地下2階の男 湯の大きさに更に驚かされる。まさにバブル時代の遺構のようなSHINETSUSEN BLD.。規模、地下2 層構造と思われる銭湯、寡黙な宣伝方針と、浴室のビジュアルはなかったものの、いろんな点で見 所が多い銭湯だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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       表通りから新越泉は完全な死角になっている。唯一の看板の灯りも眼に入ることはない。




(ご参考)「石榴坂の仇討」公式HP