新宿・恵比寿・代官山 2014.02.25.

お気に入りの刺し子の紺色の作務衣に下駄を突っかけ、梅がほころび始めた小さな神社の隣の古い小さな床屋に髪を刈ってもらいに行く。越してきてからまだ3度目だけど、ここに行くことが楽しみになっている。

近所の諸々の昔話が面白い。さらに、女将さんとの掛け合いに、癖のありそうな年輩の客も加わり古くて広くはない店は賑やかだ。

十条で通っていた床屋よりも500円ほど安い。理容業は銭湯と同じ衛生同業組合だったと思うけど、銭湯のように上限料金はなく完全な自由競争らしい。こちらの店は27年間値上げしていない。

27年前に大病を患い1年ほど休業していた。そんな時に、客が見舞い代わりに髪を刈ってもらいに訪れ、思い思いにお金を置いて行った。そういったことに感謝の気持ちがあるようだ。

もう何時までやれるか分らない。「俺の生きているうちに値上げすることはない」。払えるうちはと言って、1万円、5千円と張り出された金額以上の料金を置いて行く客が今もいる。

生きていれば小生の父と同い年の昭和12年生まれ。まだ、しばらくこの親爺に月に1度は頭を刈ってもらいたい。ただただ、そう思った。

釣りはいいと言いかけたけど、若輩の新参者には相応しくないと、思いとどまり店を出た。


先週の日曜日(2/16)のことだ。出先からの帰りに、相方が気になるという地元の居酒屋に行った。味、値段だけでなく、付いてくれた若者のしっかりとしたサービスが良かった。しかし、新券がぴったりと張付いていたのだろう、我々に釣りを1枚多く渡すというミスを犯した。他の接客を終えるのを待って、それとなく若者に返したら、恐縮しながらしきりに詫びた上で、500円のサービス券をくれた。こういったやり取りは好きだ。

そんなことがあってから1週間余り。今日(2/25)、再びその居酒屋を訪れた。”あぁ〜”といって我々を迎え入れてくれた。どうやら、先週の一見客とのやり取りを覚えていてくれたようだ。こちらも”サービス券使わせてもらうぞ”と。

飲み物とひとしきりの料理を運んで来た後に、”余談いいっすか”と言って、自分なら釣り銭の誤りを余録として懐に入れるのに、それを正直に返す人もいると興奮したように話してくれた。小生のことを、千円札じゃなく一万円札でも同じようにしただろうと。かなり手慣れた接客だったのでそれなりにこの店が長かったのだと思う。しかし、何と今月で辞めるという。アルバイトから社会人にでもなろうかという年頃。相方と、若い人に何かを感じてもらうことが出来たことを喜んだ。。。
恵比寿
西新宿の損保ジャパンの本社ビル裏のほとんど人が通らない通路。
金融機関の本社ビルにもかかわらず、メンテナンスも悪く荒廃しているのに驚かされた。
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