新生湯（三重県尾鷲市港町）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2007年5月20日日曜日 11:27
宛先: 銭湯ＭＬ (sento-freak@kt.rim.or.jp)
件名: 新生湯（三重県尾鷲市港町）

ナカムラです。

今日（5/3）は、「新生湯（三重県尾鷲市港町）」に行ってきました。
尾鷲駅(紀勢本線)から、０．９キロ、１５分くらいです。

ゴールデンウィーク後半の４連休を利用して、未踏の三重県へ。
新横浜駅発６：３９の「のぞみ３号」で名古屋へ。この新幹線は何回か利用しているけど、さすがに満席だ。３列並びの窓側に押し込められてしまう。

名古屋からは、ディーゼル特急の「南紀1号」で四日市へ。しかし、思いつきで、桑名駅で途中下車。
みごとな銭湯建築が残る旧「旭湯(平成14年廃業)」や、旧｢二見湯(平成18年廃業)｣をまわり、カフェー街だった、旧「桑陽園」の川口町、江戸町を散策。

「旭湯」では、同湯の経営者だった９１歳の女将と、８８歳の婿殿に話しを伺い、建物の内部を案内してもらう。

９１歳のおばあさんなんだけど、上品で、かなり可愛いと感じられる素敵な方だった。小生が話していると、耳が遠いからと、耳を寄せるように近づいてくる。相手が魅力的な女性だからだろう、小生の方が少し恥ずかしい。それに、年下のご主人へのいたわりが素敵だった。なかなか、こういう風に歳を取るのは容易ではない。夫妻の人生が羨ましかった。

同湯の建物は、惜しくも今年中に解体されるという。帰りに古いロッカーの真鍮製の板鍵を頂いた。恐らく、５５年前の再建時の物だろう。アルミ製と違って、ずっしりとした物だ。

桑名での寄り道後、四日市駅で予定通りの途中下車。
「四日市温泉」、半廃墟のマーケット(三和商店街)、旧カフェー街の旧「名港園」があった諏訪栄町付近を散策する。時間がなくて、旧｢春告園｣の新地町付近までは歩けなかった。四日市は名古屋に近いので、また訪れる機会があるだろう･･･。

さて、四日市から｢南紀５号｣に乗って尾鷲へと向かう。紀伊長島駅や相賀駅でも途中下車して、遊郭跡や銭湯跡を散策したいけど、｢本線｣と名前はついているものの、２、３時間に１本しかディーゼル列車がないので予定が組めなかった･･･。

尾鷲駅に着いたら、駅裏の「松乃湯(古井戸町)」へ向う。惜しくも、今年の３月に廃業したらしい。次は港の遊郭跡の天満へ。漁港に面した浜通りに、旧妓楼の大振りの建物が二軒ほど残っていた。

前置きとしては長すぎたけど、当日もここら辺りで疲れて、湯に浸かりたくなってきた。
「新生湯」の住所は｢尾鷲市港町｣。まさしく港町の銭湯で、漁師町の雰囲気が濃いエリアにある。

道がクランクしていて、同湯の前だけ少し広くなっている。間口２間半ほどの小振りの建物だ。入口に、これも破風というのか、板で庇が付けられている。その庇がブルーのペンキで塗られていて、いかにも漁師町の銭湯という雰囲気になっている。

番台裏には、大きくタイルで温泉マークが描かれている。竿でつるされた暖簾は、目隠しを兼ねて大型だ。

戸を開けると、本当に小さなコンクリのタタキと、その傍らに木組みの番台がある。女将さんが座っていて、尾鷲の銭湯料金２００円を払う。三重県の銭湯料金は３５０円。しかし、いつの料金なのか２００円から値上げされていないようだ。

脱衣所の広さは、幅１間半弱、奥行きはコンクリのタタキを入れて３間ほど。下足箱はなく、番台横に棚があるだけだ。地方銭湯としてもかなり小振りだ。脱衣所の傍らに急な梯子のような階段が立て掛けられていて、２階にはこの階段で昇るようになっている。従って、脱衣所の部分は天井が高くはない。

ロッカーは外壁にオール木製ロッカー。扉には墨書で大きく漢数字が書かれている。ビニールの脱衣籠も３つほど用意されている。小さいながらも緩衝地帯「的」な場所があって、お決まりのタイル張りの流しがある。この緩衝地帯の部分の天井などが、入口の庇と同様にライトブルーに塗られている。天井の旧型の天井扇までもブルーに塗られている。

板にブルーのペンキ。この組み合わせが、漁船をイメージさせるのか、漁師町の銭湯としての雰囲気を高めている。一本釣りの漁師町。瀬戸内･豊島の｢豊島温泉｣もそうだった。

その他、男女境には１４型の小型テレビ。旧型のマッサージ機なんかがある。

浴室は、幅１間半弱、奥行３間ほど。腰高まで白タイルが張られ、その上部は天井を含め板張りにブルーペンキが綺麗に塗られている。天井には長方形で大きな湯気抜きがある。なので、正確にはそうではないけど、一見して２段型に見える構造になっている。

男女境は、摺り硝子の上に、ブルーのペンキを塗ったような感じになっている。外壁には上部に小さな回転窓があるだけだ。昼でも照明が必要な採光が少ない構造だ。

カランは、幅の狭い奥壁の釜場への戸の脇に２、入口付近の男女境に３、外壁側に２。この広さからして適正なんだろうけど、これしかない。

浴槽は、外壁側に接して中央に面を落とした台形型のものがある。小さいながらも全てが整備されている銭湯。浴室、そして浴槽のタイルもしっかりしている。何の仕掛けもない浴槽だけど、奥の釜場で大将が薪をくべる湯は、とても柔らかい。遠路やってきたという感慨もあって、無上の幸せを感じる。

ドリンクの販売はない。昔から夕暮れの風景写真が好きで、最近は銭湯の写真も可能な限り、夕暮れの時刻に撮っている。夕暮れの写真は、日没からしばらくしての正味１０分間くらいが勝負となる。案外に撮影できる時間が短い。歩いて３分ほどのところに立派な｢松の湯(中井町)｣があるけど、双方を撮影する時間はない。

女将さんに、男湯の暖簾をきっちりと直してもらって、この１０分間に思いを集中する。同湯をどう表現するか･･･。鹿児島の嘉例川駅の暮れなずむ風景では、鹿児島と横浜の日没が３０分も違うのを忘れていて、しくじった。最近は、国立天文台の天文情報センターのWebで、銭湯に出かける前に日没の時刻を確認し、入浴する前か、入った後にその時間になるように調整している。ほとんどアホである。

尾鷲ては、その後、｢松の湯｣、｢五月湯｣と入って、結局、おいしいだろう魚にはありつけず、どこにでもある焼き鳥屋の｢大吉｣で夕食となった。宿は素泊まり3000円の民宿｢きつやま｣。最近にしては、出色の低価格の宿で、部屋でコインクラーなるものに初めて遭遇した。しかし、さり気なく、全ての面で行き届いていて満足だった。普通の人にはボロい民宿という印象しか残らないかも知れないけど･･･。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
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