差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年6月16日月曜日 21:36
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 塩原湯(世田谷区宮坂)

ナカムラです。

今日(6/14)は、塩原湯(世田谷区宮坂)に行ってきました。 経堂駅(小田急線)から、0.5キロ、5分くらいです。

三田の旧小山湯の建物が残っているか気になり、先ずは麻布十番駅(都営大江戸線)から、旧 三田小山町界隈へ。6年前に同湯を訪れた時は、一帯がタイムカプセルから出てきたようなイ ニシエの光景があった。しかし、商店街の、戦前期の精肉店かというお店も無くなったり、だ いぶ雰囲気が変わっている。

ただ、小山湯の建物は、後方が急傾斜地になっている路地の奥にひっそりと、以前に訪れた時 そのままの姿で残っていた。この小山湯は、銭湯そのものだけでなく、町の雰囲気や、傍らに 急坂を登る階段があったりと、ロケーションが秀逸な銭湯だった。麻布十番駅が出来るまでは、 どの駅からも遠かったというのも、この銭湯には合っていた。

しかし、大江戸線や南北線が開通し、隣の街区では相当に大きな再開発が始まっている。数年 も要しないうちに、旧小山湯のエリアが再開発の対象となる。東京で最も古い部類の小山湯の 建物も、その時までに姿を消す。

次は渋谷に移動して円山町を撮影。道玄坂を上った円山町入口の交番の所に、近年まで「三業 地入口」というアーチがあった。円山町はそんな花街だった。芸者の子としてこの町で生まれ た三善英史のヒット曲に「円山・花町・母の町」という歌がある。小学生の頃から、この暗い 歌が妙に好きだった。その時から、花街、色町の雰囲気に惹かれていたのかも知れない。

円山町はラブホテル街との認識があったけど、風俗店が多くなっていることに驚いた。明らか にデリヘルな娘が、白昼に路地を縦横に歩いている。それらを仕切っているのか、業界筋の方 の視線も感じる。一応仁義は欠かさないけど、集金の話などが耳に入る中でのカメラの操作は 神経を使うし緊張もする。しかし、気苦労した割には色町の痕跡の収穫はなかったかな・・・。

一通りの撮影を終えて、名曲喫茶「ライオン」で憩う。こういった名曲喫茶も貴重になった。 下北沢に住んで、渋谷が通勤経路だった頃に時折訪れたけど、10数年振りだろうか。現代ま でこんな空間が残っているのは奇跡だと思う。

さて、塩原湯。 経堂は記憶に無いくらい久しぶり。高架で複々線化された経堂駅は、かなり広くなり駅前も整 備されていた。小規模ながら駅前からの商店街も夕方の活気がある。そんな賑わいが、少しま ばらになってきた辺りに同湯はある。

コンクリ煙突に「塩原湯」とあり、2階に箱型の居住スペースを載せたタイプの銭湯。だけど、 エントランス部はしっかりと千鳥破風の黒瓦になっている。道幅の狭い商店街で、相応の存在 感を発揮している。併設のコインランドリーは老若男女の出入りが多く繁盛している。

同湯は、昭和6年創業。屋号は前の持ち主の女性経営者の名前から来ているという。

現在の建物は昭和37年築。本来であれば建替え時期は10年から15年前に来ていた。その時期 を逸してしまって、昨今の重油高騰と設備老朽化を理由に、今月末で80年の歴史を閉じる。

入口脇に廃業の告知。さらに、番台裏には罐が壊れたらその時点で「営業中止(廃業)」となる 旨の、但し書きのような張り紙がある。設備が限界に来ているようだ。

道路からは2段ほどの階段を上がる。下足箱の錠は旧型のさくら。下足箱の上には写真や芸能 人の色紙が飾ってある。同湯は定期的に演芸会を催していて、そのお知らせがそここに貼って ある。そして、さり気なく今回が最後になると記してあった。地元に定着したイベントなのだ ろう、商店街を通る幾組の親子がそのチラシを読んでいく。

戸を開けると番台。番台は前面がカーブしたもので、サイドの仕切り板が1メートル以上もあ る厳重なもの。ここまで厳重なのは久し振りかも知れない。客も多い繁盛銭湯で、土地柄若い お客も多いからだろう。

430円にサウナ代100円を払おうとすると、100円はバックされた。同湯にはスチーム サウナがあるけど、いつからか無料で開放されるようになったようだ。そして、在庫放出なの だろう、レギュラーサイズの固形石鹸を50円で販売していた。

脱衣所の広さは幅3間、奥行3間ほど。天井は2間半ほどとまずまず高い。周辺部は折り上げ になっているものの天板は格子ではなく黄色のパネルが使われている。しかし、不思議とレト ロな雰囲気を醸し出している脱衣所だ。

ロッカーは中央に島ロッカーが1つ。鍵は普通の住宅で使われているようなギザギザのあるも の。ナイロン製のリストバンドに付いている。鍵の材質強度が足りないのか、少し曲がってい たりと錠の開閉がままならない。常連客は難なくやっているけど、最初は面喰らう。

脱衣所方の壁には立派な熊手が飾ってある。その横の大黒柱には液晶テレビがあって、今朝の 岩手・宮城内陸部地震について断続的に情報を伝えている。マグニチュードは阪神淡路大震災 よりも大きいという。人口密度が少ないとはいえ、犠牲者が少なかったのは何よりかも知れな い。

浴室は幅3間、奥行は4間ほど。天井は2段型で材もチープな感じで、ペンキも草臥れた感が ある。

島カランは1列。土曜日の17:00で10人以上の相客がある。このご時勢、なかなかの繁 盛店だと思う。

浴槽は、奥壁に接するかたちで深浅2槽。浅槽は、2穴ジェット×3。焚出し口にはガリウム 石が込められ、その上には例の東京帝国大学石和田教授の効能ガキが掛っている。深槽はバイ ブラバス。湯温はいずれも42度弱と今風の温度設定になっている。

スチームサウナは、外壁側脱衣所方に4人用のもの。他の設備同様にやや草臥れているものの 清潔に維持されている。入口の古い表示の上のテープが張られ「無料」とマジックインキで書 かれている。

ビジュアルは丸山師の本栖湖。日付の記述はない。どれくらいの時間がたったのか、黴が目立 っているし、少し色褪せた感じがする。

上がりは、スパードライの250ミリリットル缶180円。レギュラーサイズの缶は置いてい ない。酒を供給するつもりはないけど、サウナ上がりにビールを飲みたいという客の気持も分 かるといったところか。たまに、同湯のような銭湯がある。同湯には駐車場はないけれど、駐 車場を持つ銭湯で、それまでビールを置いていたのに、やめる流れがある。

ご一族の経営で80年。前の経営者の塩原さんの経営も含めればかなりの歴史を持つ銭湯だ。 それなりに活気ある商店街への影響もあるだろう。

東京の銭湯は週に1軒廃業が続いていて、既に900軒を切ったようだ。 そして、430円だった料金が、明日、6月15日から450円に値上げされる。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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