差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年9月21日日曜日 16:34
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 塩湯(富山県滑川市常盤町)


ナカムラです。

今日(9/6)は、「塩湯(富山県滑川市常盤町)」に行ってきました。 滑川駅(JR北陸本線)から、0.5キロ、5分くらいです。

朝に横浜を出て、泊・神田新地、魚津・魚津新地などの遊廓跡を経由して、滑川へ。 滑川にも、かつて同湯と同じ町内に「常盤新地」という遊廓があって、そこを散歩した後、夕 暮れ時に同湯の暖簾を潜る。

大正時代に創業した同湯は、海沿いに有って、人々が繰り出す景勝地だった。眼前には遠く能 登半島が、後方には立山連峰を望むことができる。同湯は、「中島館」という旅館併設の温浴施 設として発祥した。「塩湯」という屋号の通り、浴槽に電気棒を差し込んで、海水を沸かした時 代もあるようだ。

現在では想像することが難しいけど、隣には歌舞伎小屋(のちに映画館)などもあった。現在 の建物は、先代が「中島館」の後身、旅館「河長園」から経営を引き受けた時、昭和29年に 建て直されたものだ。

煙突は油井が型の煙突。旅館併設の浴場部門という経緯からか、敷地や建物の構造が変則的だ。 内部に入るとごく普通だけど、隣の建物が脱衣所建物の一部にオーバーハングしていたり、説 明し辛い形状をしている。

雪は少ないものの当地の冬は寒い。エントランススペースが風雪除けになっていて、内部に男 女別の入口がある。

このエントランススペースに、小学生の銭湯体験学習の様子を写した写真、感想文、感謝の手 紙などが張られている。女将が小学生に対し「銭湯」というものを説明されているようだ。体 験入浴などは良く聞くけど、銭湯に対してさらに踏み込んだ内容のようだ。女将の人柄と熱意 なんだろうけど、ここまでやっている銭湯を見たことがない。

脱衣所は、幅2間強、奥行はコンクリのタタキの部分を入れて3間ほど。ベースは番台銭湯だ けど、その前に衝立を設置して、3つ目の暖簾を潜って脱衣スペースに入る構造になっている。

外壁側にSSLOCK錠のロッカー、脱衣籠も現役。大黒柱の前には神棚があって、一対の招き猫が オイデオイデをしている。その他、20種類以上とメニュー豊富な自動販売機、書籍豊富な本 棚、腹筋を鍛えるトレーニング機器などがある。地元の人しか来ないと思うけど、各種観光案 内のパンフレットがあるのが不思議だった。

浴室は幅2間強、奥行3間ほど。天井高は1間と2/3くらいでフラット。男女境の上に大きめ の湯気抜きがある。

内部は何回か改装されているのでレトロなものはない。タイルなどは厚手の滑りにくい今様の 材質のものが使われている。

島カランは、プレーンなタイプのものが1つで、カラン数は男女境から3・2・2・5。桶は古い 白ケロリン桶やレアな三足の白ケロリン桶なども並んでいる。そして、椅子がカランの数より も多い。聞けば、低い椅子に座りにくい高齢の方への配慮とのこと。いろんな高さの椅子が並 んでいる。こんな所にも女将の人柄が表れている。

浴槽は旅館の風呂のように掘り込まれたかたちで設置されている。一部が座ジェットになって いて、スイッチを入れると1分ほどジェットが噴出する。大鋸屑で焚いた湯の温度は結構高め で、44度弱くらいか。

小さいながら、湯あそび広場的な関西銭湯的なタイル遣いで、ビジュアルはなかった。

相客は、全国の銭湯と取引されている、日本で唯一だろうという国産の籐敷物店の二代目と三 代目の父子や、地元史に詳しい論客など多士済済だった。入浴してた時間は普通だったと思う けど、店を出て時計を見ると2時間余りを同湯で過ごしていた。何か、居酒屋で一杯やってい た感覚に陥った。

女将さんは10年以上も「銭湯かわら版(ぽっかぽっかかわらばん)〔月刊〕」を作って、時に 近所にポスティングなどもされている。直近号を頂いた。117号にもなっている(バックナン バーは富山県公衆浴場組合のHPにもアップされている)

店を出るときには、番台は若い娘さんに変わっていた。一家総出でこの銭湯を守っているよう だ。 滑川の海辺の銭湯。そして心温まる銭湯。いい銭湯だ。

遅くなった夕飯は、町並みを見ながら、かつての滑川の中心の橋場まで歩いて「天勝」という 店で刺身定食を頂いた。まぁまぁだったかな。

宿は戦前期の建物の「滑川館」。「國有鉄道指定旅館」やら「電氣通信省指定旅館(現NTT)」な る歴史的な看板が掛る。明治創業の旅館で、日本郵便の父、前島密との書簡が残っていたりと 面白い旅館だった。気取った和風旅館ではない。古くても清潔。サービスもいい宿だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ (風呂屋の煙突)
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元旅館の建物の後ろに位置する。


眼前には日本海が広がる。