差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2012年2月19日日曜日 10:38
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 末広湯(葛飾区宝町)

ナカムラです。

今日(2/11)は、「末広湯(葛飾区宝町)」に行ってきました。 お花茶屋駅(京成本線)から、1.0キロ、10分くらいです。

京橋に田中長徳氏の写真展「屋根裏のプラハ」を見に出かける。長徳氏はプロの写真家としてだけ でなく、ライカをはじめとする趣味としての中古カメラにも造詣が深い。小生が最も気になるのは 都市風景の写真家として。写真集の名著「ウィーン・ニューヨーク・新潟」など、シリアスな都市 風景が氏の真骨頂だと思っている。また、文化や思想など写真の裏側にある背景も深い。

今まで何冊も長徳氏の写真集を買った。しかし、巧過ぎるため、のめり込む程でもなく、今は手元 にない。ただ、都市の観察者としてプロ中のプロ。いつも気になる存在だ。

今日も復興小学校の城東小学校近くのIsland Galleryという半地下のギャラリーに足を運んだ。写 真はやはり隙がなく巧いけど、感銘を受けるというほどでも無かったかな。1枚50,000円也の値札、 値札、値札・・・。ギャラリーの余りに売らんかなという姿勢に閉口した。

さて、明治屋のビルから銀座線の京橋駅に降りて、上野経由で京成本線のお花茶屋駅へ。以前、東 邦酒場に来た時以来だ。

同湯はこの駅から南に下り、京成押上線の四ツ木駅や立石駅からも似たような距離にある。途中で 第四富士の湯をチェック。油井型の煙突を持つ伝統的木造銭湯だった。ここも早川さんのペンキ絵 が残っているらしい。遠くないうちに来なければと思わせる銭湯だった。

さて、末広湯。角地に建つコンクリ煙突の伝統的木造銭湯。昔は広い庭があったのだろうか、側面 には数台分の駐車場が整備されている。2段型の浴舎からは子供の賑やかな声が聞こえてくる。

表に回れば千鳥破風に入母屋のエントランスの典型的な伝統的銭湯の構え。暖簾は民藝の芹沢けい 介デザインの紺地のもの。暖簾の上の硝子には摺り硝子で「末廣湯」と屋号が刻まれている。何と 言ったらいいのか、ほのかな気品を湛えた構えだ。

中に入れば、正面番台裏には1センチ角のモザイクタイルが張られている。左右には旧型さくら錠 の下足箱。下足箱の中に傘を差入れる丸穴がある古いタイプだ。掃き清められて、鉢などが置かれ た明るく整った空間だ。

脱衣所への扉を開ければ、木組みの番台そして、幽玄な広い空間がある。広さは、幅3間、奥行3 間半くらいか。天井は男女境と直角に太くはない丸太風の棟のようなものが渡され、そこからごく ごく緩い勾配で天井材が張られている。欅材だろうか、昭和33年築というから半世紀を経ているも のの、古くなるどころか余計に輝きを増している感じがする高級な天井だ。

ロッカーは、外壁側にアルミ板鍵のSakura2錠のもの。床の中央には島ロッカーを撤去した跡がく っきりと残る。

大黒柱には”職方一同”とある黒柱時計。番台の上には北区田端湯などから寄贈された「千客萬来」 の立派な篇額。確か、日暮里の玉乃湯にも同じものがあったけど、見事なものだ。その他、赤で「大 入」と書かれた額が男女で7枚も並んでいる。その他、丸太を渡した男女境に幅2間はある大鏡と ヘルスメーター、縁台が1つあるだけ。これだけ整備された内外観を誇るものの飲料の販売すら行 っていない。

浴室は、幅3間、奥行4間。天井は2段型で木板に濃淡ブルーのペンキがきっちりと塗られている。 節電が続いているようで、照明が半分しか点いていない。少々暗い感じがする。

島カランはプレーンなものが1列で、カラン数はセンターから7・5・5・7。カラン台や浴槽の縁は 赤黒い御影石が張ってある。床のタイルが厚手の足触りのいいもの。タイル類はすべて更新されて いる。

小生、ペンキ絵を正面から眺めることが出来る島カランの後方寄りに座ることが多い。たとえシャ ワーが無くても、髪の毛が僅少ゆえ、2、3杯もお湯を被れば不自由はない。しかし、同湯の湯桶は すべて大振りの木桶。片手で湯を満たした木桶を扱うのは少々難儀だった。

浴槽は、奥壁に接する深浅2槽。外側の深槽は何らの仕掛けのないもので、温度は41度を少し切る くらい。2穴ジェット×2の主浴槽も同じ温度。双方とも極端に温い設定だ。

井戸水を薪で沸かしているのに、こんなに温いのは同湯のポリシーのようだ。浴室の入口に”熱い お湯は百害あって一利無し”、”温いお湯にじっくり浸かって免疫力を高めよう”といった趣旨のこ とが書かれていた。しかし、冬にこの温度はちょっと厳しい。じれったいくらいに湯船に身体を沈 めていなければならない。ただ、じれったい位に浸かっていると、温い湯でもちゃんと温まること が分かった。。。

ビジュアルは豊富だ。奥壁は早川さんの「美保ノ松原(平成十六年十二月八日)」の富士山のペンキ 絵。小富士が目立つように描かれた珍しい絵だ。くすみや退色も目立たず往時の姿を保っている。 その下は松林と菖蒲の向こうに池と回廊を持つ朱色の社殿という絵のモザイクタイル絵。さらに男 女境に「歌麿筆」と銘がある美人画の絵付のタイル絵が3幅。ただ、改装時に置かれたのだろうか、 古いものではない。

土曜日の19:00〜20:00に滞在。相客は10人くらい。男ばかりの3人兄弟を引き連れた父親以外に も子供を連れた客が3組くらいあった。駐車場もあるのでそんな家族連れも複数あった。

ここからはB級呑み助の聖地、立石も近い。しかし、結局、もと来た道を戻り、駅前の東邦酒場を のぞいたら生憎の満席。おとなしく地元十条の「お功楽屋」で一杯やりました。。。

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