差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2012年10月18日木曜日 21:15
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 末広湯(大阪市淀川区新高)

ナカムラです。

今日(9/25)は、「末広湯(大阪市淀川区新高)」に行ってきました。 東三国駅(阪急宝塚線)から、0.7キロ、8分くらいです。

4泊5日の大阪・奈良・京都銭湯ツアーの初日。11:00前に新大阪に着いて、繊維の町船場へ。東京 にはない繊維関係の店の集積地。その中でも、高速道路の下に入る「船場センタービル」という細 長いビルで着物を物色する。結局、緑色の別珍の足袋を求めただけだったけど、東京にはない糸へ んの大阪を見ることができて楽しかった。

うどんを啜って、谷町六丁目の”からぼり商店街”という商店街に近いアンティーク家具屋へ。こ の付近は戦災に遭っていないため古い町並みが残っている。目当ての家具屋も古い家並みの中にあ って、偶然、裏に廃業銭湯の「小玉湯」があった。

この建物が凄かった。スクラッチタイル張りの洋風で、2階には丸窓の跡と何連ものアーチ型の縦 窓があって、全てが凝ったステンドグラスになっている。昭和10年築の建物らしい。今は”小玉モ ータープール”となって、旧脱衣所の部分が数台の駐車場になっている。旧浴室部分は、波板で塞 がれ奥は窺えないものの、アーチ型の浴室部への入口などの営業当時の構造が残っていた。結構、 有名な物件だったようだ。。。

そして、心斎橋まで戻り、市営地下鉄御堂筋線で北上、淀川を渡り、東三国駅へ。高架の島式ホー ムの両側が高速道路という、遭遇したことがない光景に驚かされる。

当初の目論見では、十三駅からアクセスする新木川温泉と寿湯も眺めたかったけど、時間の関係で 断念。東三国駅から三国駅(阪急宝塚線)へ東に向かって歩き、三国中央温泉(店主から2年前に 廃業と聞く)、三国温泉(盛業中)、三国新温泉(新しい住宅に変貌)と廻って、末広湯へ。

路地と路地が斜めに交差する、小さな交差点の角にある。向かいはタバコ屋、隣には営業している のか定かでない新高食堂。付近には、そこに小さな銭湯があるに相応しい風景が広がっている。

黒瓦を載せたむくり屋根の建物。正面は漆喰。側面は和風の下見板張り。後方で煙を吐いている煙 突は基部が煉瓦のコンクリ煙突。さらに、古いオフホワイトのタイル張りのファッサードには、右 書きで「湯広末」と記されている。築90年余り。あまりの郷愁度に深い感銘を受ける。

暖簾を潜ると両サイドにツルカメ錠の下足箱。靴脱ぎのコンクリには花柄に古いタイルがワンポイ ントで張ってある。さらに、上がりかまちはレトロな小石タイル。番台の背に当たる造りも年代を 感じるものだ。脱衣所との間には段があって、脱衣所側がやや高いようだ。

番台へのサッシの扉を開けると、周りに格子の装飾を施した木組のしっかりとした番台。陽気な女 将さんが入って、客との会話が間断なく続いている。

脱衣所の広さは、2間半四方で、通常は前庭のある部分も増築なのか、脱衣&休憩スペースになっ ていて、背もたれのある古い木製ベンチと、ほとんど見かけないYoshidaのアナログ体重計がある。

天井は、天板が白く塗られた平格天井。小タイルで装飾された男女境の上には木製の2枚羽という 年代物の天井扇がある。床は籐ではなく、板敷の感触が足に伝わる茣蓙というのが、この脱衣所の 雰囲気に相応しい。

ロッカーは、外壁側に増築部を含め、一列に折鶴錠のものが並ぶ。緩衝地帯というほどのものはな いけど、浴室への入口の傍らにはタイル張りの流しも設えてある。

浴室は、広さは2間半四方。天井は四角錘型で、中央に正方形の湯気抜きが開いている。壁は中判 の白タイル。床は花崗岩の石敷きで、石と石の間には、白と緑のタイルが市松模様に張られている。 さらに、外壁側に8、奥壁側に2つ並ぶカラン下の湯桶の台も、面取りしたのか摩滅したのか、古 い花崗岩。また、浴室入口の周辺、浴室の壁と天井の間の部分にも石材が使われている。

浴槽は、男女境に接した中央に、これまた石を組んだ深浅2槽。手前の深槽は43度強で、中に3方 向にジェットが飛び出る”ヘルスバー”なる仕掛けがある。底に使われている古い深いエメラルド グリーンのタイルが本当にいい。奥側にある浅槽は、本当に浅く、深さが30センチくらいしかない。 こっちは壁にある陶製の獅子口からお湯が吐き出されている。浴槽のお湯は柔らかさと心地良さを 感じられる42度くらいの温度だった。

地方の銭湯ではよくあることだけど、同湯も都市部の銭湯ながらカランのお湯は熱湯に近いものだ った。さらに、古い関西の銭湯で見られるように、鏡はカランのかなり上にあって、立って鏡を使 うようになっている。

ビジュアルは、白タイル張りの男女境に、富士山が見える浜辺に天女が舞うという絵柄の大きくは ないタイル絵がある。

上がりはポカリスエットと同湯で銭湯アイドルを写したポストカード”ERIKOin 大阪淀川/ 末広湯”600円を同湯振興のためもあって購入。神戸のまっちゃんらが手掛けたもので、銭湯で育 ったカワイ娘ちゃんを撮ったものだけど、本職だけあってなかなかしっかりしたものだった。

帰る頃には番台は、物静かでご高齢の大女将に替っていた。一言、二言話をして立ち去ったら、エ ントランスにまで追って出てこられ、オロナミンCを差し出された。

火曜日の18:00から19:00に滞在。脱衣所、石材をふんだんに使った浴室を持つ街角の小銭湯。 昨日が定休日だったので相客は10人近かったかも知れない。郷愁を感じるには賑わっていたけど、 また訪れたい、見所が多く、雰囲気もいい銭湯だった。

ただ、この銭湯もだんだんと営業のハードルが高くなって来ているようだ、定休日が従来の月曜日 から金曜日も付け加わり、週休2日にする旨の張り紙があった。。。

上がりの一杯は、福山にいる友人と梅田で一杯やる約束になっている。さっき、同湯に入る前に写 真を撮っていると電話が鳴った。小生のツイートで大阪に来ているのを知ったらしい。友人はたま たま大阪で幹部会があって来阪していたようだ。相方も知っている友人で、こういったとっさの誘 いは楽しいと喜んでいる。

阪急梅田駅の大きさに驚きながら、狭い地域に97店もの飲食店が集積する独特の雰囲気の「新梅田 食道街」の居酒屋「三喜」2階で束の間の再会を楽しんだ。友人は、小生よりもしきりに相方に話 を振っていた。旅行途中に急遽飛び入りしたことの気遣いだろう。友人は、小生と違って、そうい った細やかな配慮ができるヤツだ。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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