差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年4月29日木曜日 13:07
宛先: 銭湯ML
件名: 大盛湯(品川区二葉)

ナカムラです。

今日(4/28)は、「大盛湯(品川区二葉)」に行ってきました。
西大井駅(横須賀線)から、0.6キロ、10分程度です。

西大井の駅は、昭和61年開業と比較的に新しい駅。
伊藤博文の別邸(最近取り壊し)や墓所がある関係から、近くに伊藤小学校、伊藤中学校がある。
最近まで、別邸は大井町に工場を持つニコンの「光友倶楽部」として維持されていたけど、最近マンションに建て替えられてしまった・・・。

西大井駅は、銭湯巡りで何回か降りているけど、町の匂いのない殺風景な駅周辺です。
駅前商店街というものがなくて、駅を離れると、すぐに人通りがない住宅地に入ります。
新興住宅地ではないハズだけど、露地には「歴史」が感じられない。(いつも夜でディティールまでは見ていないからか・・・。)

近くに高い建物がないので、近ずくと同湯のコンクリの大きな煙突が月夜に浮かんでいた。
同湯の後ろからアプローチし、側面を通って正面に回りこんだけど、東京のデカイ銭湯は本当に大きい・・・。
小生がよく出かける横浜周辺の銭湯とは、ちょっと違うスケールがある。

正面は大きな唐破風と大きな千鳥破風の黒瓦。3匹の鳥をあしらった懸魚、その後ろの暖簾上には漆喰で籠手絵のように意匠が施されている。
暖簾をくぐる。エントランスは8畳間くらいありそうな正方形スペース。格天井になっている。
正面に傘を突き刺す式の傘入れが、緩やかな弧をつき出している。茶色で、これもデカイ・・・。
下足箱は年季の入った松竹錠が付いている。男湯だけで118個もの下足箱がある。

番台へ通じる戸は、ここだけ違和感があるアルミサッシ。
その上は摺りガラスに「男湯」書かれている。

番台は彫刻を施した衝立がある伝統的なもの。材もしっかりしたもので組まれている。
脱衣所は幅3間半、奥行3間と少し。天井、柱、梁、建具とこげ茶色でかつピカピカに磨き込まれている。
天井が立派である。基本的には吟味された材で組まれた折上げ格天井(6×13)だけど、天板が正方形ではなく、正方形と大小の長方形の組み合わせでデザインに変化を付けている。

ニス塗りの板の間に、小さな島ロッカー(松竹錠の板鍵)が縦置きに2個置かれているけど、この空間を圧迫していない余裕の広さ。ロッカーは外壁側にも。
大黒柱には丸時計、男女境の上にはテレビ、その他に冷蔵庫、Keihokuのアナロク体重計、ソファとテーブル、マッサージ機がある。
体重計の隣に足ツボを刺激するイボイボがあったけど、これが結構尖っていて乗るのに難儀した。

入口側の側面は古い透明なガラス戸になっていて、その外にニス塗りのピカピカの縁側、その向こうに庭が広がっている。
接面道路との間が庭になっているけど、それなりに奥行きがある。池はないけど、小さな森がそこにあるという雰囲気。

浴室は・・・。やはり広い、高い・・・。
幅は3間半、奥行4間。天井は2型だけど、頂上部が平面でなく緩くカーブしていて男女合わせて5間の幅がある「体育館型」。
その下のウィング部は、逆に幅が1間しかない。端はやはりカーブを描いている。
ペンキはブルーで柱が緑色。あまり見ない配色。

島カランは、十分2列を配置できる広ささけど1列。
カラン数はセンターから6・6・6・6・6。センターにはカーテン付のシャワーブースが2つ。
外壁側以外にシャワーが付いている。
カランは日の丸扇の茶色の取っ手のもの。湯・水とも十分な温度と勢いがある。

壁やカラン周りのタイルは改修されている。
床だけは3センチ角の白いシンプルなもの。オリジナルかは分からないけど、年季が入っている。

大型銭湯に相客は4人、うち1人は釜場へ消えていった。
「静寂」な銭湯という印象、でもこの床のタイルはこの銭湯の最盛期を知っている。そんなことを考えていた。

浴槽は深浅2槽。全面が軽くウェーブしている。
浅槽は3点ジェットが2機、43度位。
深槽はバイブラバスで、泡は少なめという感じ。温度計は47度を指しているけど45度位か。常連も誰も入っていない・・・。

ここの最大の特徴は、ビジュアル。
普通はペンキ絵の所が、アルミサッシュだけど、全面ガラス窓になっている。

窓の外は、奥行1間もないけど、岩が積まれ、苔蒸して、植木も配置されている。
坪庭といった様式性はないけど、自然の緑がある。
しかし、照明で照らされているわけではないので、夜はタダの窓。
ここの銭湯は脱衣所側の庭といい、昼に来なければ良さは実感できないかも知れない。

それ以外に、男女境にタイルに絵付けした式のタイル絵(縦7枚×横55枚)。
画風は洋風で山川、白樺といったもの。すでに、剥げも目だってきている。

さらに、釜場への入口がタイル巻きのアーチになっていて、その上にモザイクタイル絵がある。
絵柄は洋館に湖、水鳥と普通だけど、配置が珍しい。
まぁ、浴槽奥にドォーンと窓がある関係ではあるが・・・。

女将曰く、借り物なので正確な築年数は憶えていない・・・と。
もう少しで50年くらい経つ建物らしい。
借りて経営しているのに、この客数では大変だと思った。成り立つ訳はないと思うけど、どうなっているんだろう。

これぞ銭湯という、威風堂々の伝統的な東京型銭湯。
しかし、銭湯のみならず、町の人通りも少ない。

帰りは大井町まで約1キロ。
途中のタイル張りの柱、蔦の絡まる壁面、そんな中華屋(天宝)は「都合により暫く休業いたします」とのことだった。
長らく一本橋商店街の露地裏に廃業した銭湯が残っていたけど、一帯が地上げされ住友不動産の巨大オフィスビルに変っていた。
濃い町だったけど、だんだんとアクが抜けて寂しい気がした。

東口の「池田屋」で煮込みで一杯と考えてたけど、既に23:00近く。
また、来なければ・・・。