高輪浴場（港区高輪）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2005年1月24日月曜日 23:59
宛先: 銭湯ＭＬ
件名: 高輪浴場（港区高輪）

ナカムラです。

今日（1/21）は、「高輪浴場（港区高輪）」に行ってきました。
高輪台駅（都営浅草線）から、０．７キロ、１０分程度です。

初めて降りたけど、高輪台駅は変っている。
地下鉄なのに、上下線のホームが離れている。
それを、小さなトンネルでつないでいる。
何で、上下線分けてトンネルを２本掘るような構造になっているんだろう。

地上に上がり、二本榎仲通を進む。
きっと由来があるんだろうけど、今では、何でこの通りに名前が付けられているのか不思議なくらいの静かな通り。
今は「高輪」となっているけど、昭和４２年に芝伊皿子町、芝高輪西台町、芝白金三光町、芝車町などと併合されるまで、ここは、芝二本榎町。
江戸時代、近くにあった二本の榎の巨木が東海道を旅する人々の目印となったことに因む由緒あるところ。

今日のミッションは、同湯に赴くとともに、高輪消防署二本榎出張所を久し振りに見ること。
消防署が、警視庁所管だった頃。警視庁によって建てられた、古い警察署のような建物。
同根の隣の高輪警察署も似たようなデザインだったらしい。
高台に立つため、海からもよく見渡せたのだろう、「海原を走る軍艦」と称された貴重な近代化遺産。

高輪消防署二本榎出張所：
昭和８年築。警視庁営繕係の越智操設計。
鉄筋コンクリート三階建、延面積約５９８㎡、望楼や塔を含めた高さは約３０メートル。
この建物が出来た時に、御田（みた）消防署高輪出張所から高輪消防署に昇格したけど、昭和５９年に高輪消防署本署が港区白金に移転、今は旧町名を冠した二本榎出張所となっている。

２２：００。カメラを手に、しきりにこの建物のまわりをうろうろしていても、著名な建物ゆえ隣の高輪警察署の門番は何も言ってこない。
これが、普通の銭湯建築だったら、職質にあうのだろう。
経験からして・・・。

さて、すぐ近くの同湯。暗くてよくわからないけど、油井型の煙突のようだ。
黒瓦屋根の脱衣所棟に直方体の入口棟が付いた様式。
屋根を支える柱の上部の造り込みと、入口が男女別々になっているところに特徴がある。

暖簾はなく、段差を上がると、平格子天井に旧型さくら錠の下足箱。
番台裏のガラス窓の摺りガラスに繊細な意匠が施されている。

番台は木組みのもの。物静かで上品そうな高齢の女将が座っている。
番台には、木製の皿が２つか３つだったか置いてあって、５００円を置くと違う皿につり銭の１００円玉が置かれた。
そして、女湯側ではなく、外から浴室が見渡せないように、やはり木組みの衝立が斜めに置かれている。

脱衣所の広さは、２間半四方。
天井は折り上げ格天井ながら、材はさほど上質のものではない感じがした。
真中に蛍光管２本の簡素な照明器が下がっている。
女将の話では、昭和３５年から４０年くらいに建てられたものだということだった。

年季が入った板の間に、縦置きで島ロッカーが１つ。錠はSakuraⅡの板鍵のもの。
外壁側にもSakuraⅡのロッカー。
この脱衣所には、このほか、亀井製作所のかなりイカついアナログ体重計、暖房機、ライオンバターボール&コーヒーキャンデーの寒暖計、３脚の椅子があるだけ。
実にシンプル。

浴室への扉は、３枚のサッシ。その両脇の柱に、楕円形の古いタイルがあり、一方は「入口」、片方は「出口」と書かれている。
多くの客があり、交通整理をしなければならない時代があったのかと、思いを馳せる。

浴室は、幅２間半、奥行３間半。天井は２段型で高い方の天井は正方形になっている。
立派な造りながら、内側のペンキは結構剥がれて、くすみも目だっている。
窓などはサッシに置き換わっているものの、大黒柱をはじめ、柱や梁は白木になっている。

島カランは、鏡すらないプレーンなタイプ。
カランはWaguriの旧型で取っ手は赤・青のボール状のもの。
カラン数は、センターから６・５・５・５。

タイル類は、昭和中期的な統一美がある。
洗い湯を流す溝は、厚手のU字型の白タイル。
床は３センチ角の正統派。モスグリーンという色に初めて遭遇した。
カラン台は、上部は淡いピンク、脚部は濃いモスグリーンというやや独特の配色がなされている。

奥行きがさほどでもないのに、浴槽側と脱衣所側では勾配が１０センチ近くもある。
傾斜がきついなと感じた。

浴槽は深浅２槽。どちらも４３度くらい。
深槽は密度の粗いバイブラバス。
浅槽は、石を設えた金属の檻から湯が流れ出る様式。上には「長」「寿」「泉」と白タイルに剥げかかった字で書かれている。

ビジュアルは、何もなし。
奥壁がブルーのペンキで塗り潰されている。おまけにそのブルーにそこそこくすみが出ている。
無常観が漂う、ストイックな浴室。

２２：２０。女将に閉店時刻を問うと２２：３０分との返答。
５分後には脱衣所の照明が落とされた。当たり前だけど、「蛍の光」などは流れない・・・。
早い時刻だけど、久し振りの閉店追い出しにあってしまった。

帰りは、再び、二本榎出張所まで出て、桂坂を下って品川駅に向かう。
しかし、この坂の両側は見事な石垣が積んである。
右側が、東芝高輪クラブとなっている旧朝吹邸。ヴォーリズ設計の洋館がほの暗く見える。
反対側は野村證券の研修所。小生の勤務する中小証券とは違うなぁ。

隣に白川義員写真研究所がある。こんなとことに住んでいるのか。
山岳写真の第一人者だけど、スケールが大きすぎるのか、日本では山紫水明の白旗史朗ほどの評価がない・・・。
不思議だし、難しい。


高輪台駅