たから湯（秩父市道生町）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2007年1月8日月曜日 21:03
宛先: 銭湯ＭＬ (sento-freak@kt.rim.or.jp)
件名: たから湯（秩父市道生町）

ナカムラです。

今日（1/7）は、「たから湯（秩父市道生町）」に行ってきました。
秩父駅（秩父鉄道）から、０．４キロ、６分くらいです。
古い町並みが残る番場町や東町を散策するため、西武秩父駅(西武鉄道)からアプローチ。こちらからは、１．３キロほどです。

昨夜からの強風が続き、ＪＲのダイヤは混乱していた。予定していた接続の西武線の特急･ちちぶ号に乗れなかったり、やや時間をロスしながら西武秩父駅に到着。昨日は積雪があったようだ。山肌が白くなっている。冬の秩父は何回か訪れているけど、東京に近いのに、思いの外、寒い地域だ。盆地で気温が低いうえ、雪で冷やされた山からの風が強い。

西武秩父駅から御花畑駅(秩父鉄道)へ歩き、その周辺の番場町や東町周辺に、かつての料亭街の建物が残っている。昭和初期に建てられた｢カフェ･パリー｣や｢小池煙草店｣の建物が趣き深い。小池煙草店は自販機が置いてあるだけで店は開いていなかったけど、カフェ･パリーの方は大衆食堂として営業中だ。秩父夜祭りで有名な秩父神社も近く、秩父銘仙流通のための、買継商という繊維商家(出張所)の建物も残っている。

秩父には、最盛期は８軒。つい最近までは３軒の銭湯が残っていた。しかし、１２月末で｢さくら湯(桜木町)｣が暖簾を畳み、残るは、旧料亭街にある｢クラブ湯(東町)｣と秩父神社に近い｢たから湯(道生町)｣の２軒となった。

今日は、風花が舞う、寒く風が強い天候。それほど｢寒冷地仕様｣でやって来なかったので、少し町歩きしただけで、身体は凍えている。

静かな裏通りの四辻に、油井型の煙突にモルタルのファッサードの同湯はある。到着時刻は１６：３０。１４：００から２０：３０までの営業なので、やっているんだろうけど、暖簾も掛っていないし、行灯型の看板にも灯が点っていない。あまりに静かなので、最初は休みなのかと思ったほどだ。
（この行灯型の看板は、灯りが付いて初めて紫色の屋号が浮かぶという、なかなか風情のあるものだ。)

アルミサッシの扉の上の扇型に｢男湯｣と書いてある。ガラガラと開けると１間弱のコンクリのタタキがあって、左手に番台、右手に松竹錠の下足箱がある。この松竹錠が少し変っている。木札用の錠だけど、どことなく小振りで、表面の造作が平面的。「松竹｣も刻印という感じがする･･･。

番台の親父は大柄の好々爺。いくらか尋ねると３５０円とのこと。去年は首都圏の銭湯はみな値上げをしたけど、同湯は値上げをしていないようだ。

どっこいしょと、１段昇っての脱衣所は、幅２間強、奥行２間程度。２階は載っていない建物だけど、押し縁天井の天井高は1間と１／３くらいとあまり高くない。

外壁側にＳＳＬＯＣＫ錠のロッカーが１６個ほど。主力は昔ながらの脱衣籠だ。その他、小型の冷蔵庫、旧型マッサージ機、石油ヒーター、小さな表示窓に細いスケールが走るアナログ体重計などがある。昭和１１年築。しかし、１１年前の火事で浴室の屋根や奥壁は更新されている。

浴室は、幅２．２５間、奥行３間ほど。天井は｢唐傘天井｣というらしく、四角錘天井の中心にある湯気抜きから、唐傘の骨のように多数の押し縁が降りている。その押し縁で横配置の天井板を留めている。四角錘の天井は関西を中心にままあるけど、この方式で天井板を留めているのを初めて見る。

島カランは細くて豆タイルがあしらわれているものが１列。カラン数は４･３･３。床のタイルは、懐かしい３センチ角の白色。しかし、かなり補修跡が目立っている。そして、カラン下には洗い湯を流す溝がない。古風な造りだ。

男女境のオープンさは凄い。上段が古風な枠に収まった古い模様硝子。恐らく下もそういった類の硝子だったんだろうけど今風の硝子。女湯に声がしているのに、その硝子に女湯客のシルエットが何故映らないのか不思議なくらいのもの。北海道の銭湯もそうだけど、かなりオープンだ。

浴室は、深浅２槽。真中に岩が配され、それが焚出し口になっている。深槽は４２度弱。浅槽は４１度弱。常連客が番台の爺に文句を言っている。普段はもっと熱いようだ。浅槽には１穴ジェット×２と床バブルの「遺跡」があるものの稼動していない。深浅の両方とも、結果として、プレーンな浴槽になっている。

ビジュアルは、奥壁の富士山のペンキ絵。｢伊豆　エハラ尚栄堂　平成14.6.10｣とある。熊谷の業者らしい。１１年前に火事で焼けるまでは秩父の絵師に描いてもらっていたが、その方も既に亡くなられた。

上がりは缶入りのオレンジジュース１２０円を頂く。寒い地方の脱衣所で灯油が香る暖房。最近は灯油の匂いをかぐ機会も減った。視覚だけでなく、なんか、匂いからして懐かしい空間がある。

日曜日の１６：３０から１７：３０に滞在。相客は６、７人というところ。この地に７０余年。なかなか味のあるいい銭湯だ。

秩父はホルモン焼きで有名だ。一番の目当ての店は、日曜日が定休日。あちこちにあるだろうとタカをくくっていたら、結局、見つけられなかった。風が強いし、余りに寒いので、西武秩父駅前のラーメン屋に緊急避難。結局、ビール(中)、つけ麺、餃子で１８００円。何だか、いつもと変り映えしないものになってしまった。

今度は、泊まりで、クラブ湯、ホルモン焼き、街歩きで出直さなければ･･･。暖かくなってから。

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旧秩父国際劇場(現在は倉庫)