差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年8月10日日曜日 7:10
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 武の湯(渋谷区幡ヶ谷)

ナカムラです。

今日(7/12)は、「武の湯(渋谷区幡ヶ谷)」に行ってきました。 幡ヶ谷駅(京王新線)から、0.7キロ、8分くらいです。

目白にある「ゆうど」という昭和初期の古民家でやっている和服のギャラリーに行く。心積もりは 無かったけど、最も涼しいと言われる小千谷ちぢみの夏着物の出物があり、思わず買ってしまった。

次に新宿三丁目のバルト9で「太秦ライムライト」を観た。時代劇の全盛期にはスターに斬られる 斬られ役という大部屋俳優が百人もいたらしい。時代劇が減った今は十数人という。その斬られ役 一筋で”5万回斬られた男”福本清三氏が初めて主演をつとめるという時代劇のバックステージ物。 時代劇がどんどん打ち切られて行く中で、斬られ役一筋の老俳優の悲哀がスクリーンに滲み出るよ うな映画だった。

若い頃、スターに「斬られ方が巧いということは芝居が巧いということだ」と誉められたことを心 の支えとして「どこかで誰かが見てくれている」と稽古に稽古を重ねてきた。恐らく実話だろう。

小学校から帰って午後4時からの時代劇を楽しむような子供だったけど、殺陣という物が、これほ ど美しいという事を初めて知った。ラストでは、やはり斬り殺されるのだけれど、生涯初めての主 役としての斬られ役、一気に倒れもんどり打つのだけど、美しい死に様と言ったら言い過ぎだろう か。何処か神々しいものを感じ、エンドロールが微かに涙で滲んだ。

さて、新宿三丁目駅から3駅先の幡ヶ谷駅からアクセスする武の湯へ。

中幡小学校の近くの「中幡商栄会」という短い商店街の中心に位置している。創業は70、80年前と いう。小学校は戦災に遭っているものの同湯は戦災に遭っておらず、昭和22年、昭和38年の航空 写真に煙突の影とともに伝統的な銭湯の姿を見ることができる。

切妻の簡素なモルタル造の脱衣所棟にタイル張りのコインランドリーなどが増築されている。妻面 には屋号が大書きされ、2段ほど昇るエントランスの脇にはラドン発生装置が”ショウウィンドウ” に入るがごとくに鎮座している。

貼られた料金表に少し驚かされる。カプセル式のラドン浴泉を使うにはプラス310円の770円。ラ ドン浴泉と乾式サウナを使うとプラス640円の1,100円。さらに、普通入浴は90分まで。サウナ利 用も2時間までで、超過は1時間区切りで200円の追加料金が掛かる。不正利用の場合は3倍。”3 倍とは3,300円。”と有無を言わせぬ御案内。余りに強気の価格設定と優しくない”語調”のせいも あって、少々楽しい気分が殺がれる。

前のめりの体勢が少し後ろのめりになりながら、広いエントランスの上がりかまちに昇り、松竹錠 の下足箱に運動靴を放り込む。

正面のパーティションで区切ったスペースにカウンターがあって、相方が2人分の”普通入浴”風 呂銭920円を女将さんに差し出す。

脱衣所の広さは幅3間、奥行4間半ほど。天井と壁は白のクロス張り。天井は濃紺の縁取りでアク セントを付けている。

ロッカーは外壁など計3方側に松竹錠シリンダ式のもの。冷水機、デジタル体重計、木製のどっし りとしたテーブル、ベンチがある。さらに、前栽があった場所にテレビやソファを並べ、休憩室風 に仕切ってある。

浴室の広さは4間四方。天井は木板で組まれた2段型。外壁側の1間はかなり古い時代に増築され ている。今はペンキで埋められているけど、増築部の木板ペンキ塗りの天井に天窓が2つ付けられ ている。

増築部を含め天井の木板には何層にも塗り重ねられたペンキが長い年月の間に襞状になっている。 このことからすれば、この浴舎はかろうじて戦災から逃れた、昭和22年の航空写真に写っている戦 前派の建物ではないだろうか。

島カランは3列で、カラン数はセンターから0・0・5・5・5・5・5・4。床のタイルはユリ模様の白 とグレーを市松模様に張っている。

浴槽は、奥壁に接して、カプセル式のラドン浴槽、一部電気風呂になっているバイブラの主浴槽で 41度強。座ジェット×1、寝ジェット×1、2穴スーパージェット×2の浴槽で40度弱。夏期限定で 木曜日はぬる湯との掲示があるけど、既にジェット系の浴槽は今日もかなりの温さだ。さらに、男 女境中央に2人位が入ることの出来る水風呂。乾式サウナは、男女境脱衣所方にフルに食い込むか たちで設置されている。

ビジュアルは、奥壁に赤ちゃんを抱いた母親を中心に明るい幾つかの色で日輪を描いたような極め て抽象的な絵柄のちぎり絵調のモザイクタイル絵。さらに、男女境には中島さんの銘の入った宮島 の厳島神社(120センチ×270センチ)のペンキ絵を樹脂フィルムに印刷した見たことがない大きな もの。

土曜日の20:00から20:50に滞在。相客は老若様々で20人は軽く超えていたと思う。いい銭湯だけ ど、余りにスーパー銭湯的にお湯が濁っていることと、ラドン浴泉にすら入る気が起きない価格設 定に、楽しさ半減という感じだった。

こういう時は、上がりの一杯もうまく行かない。電子レンジで斑に加熱した冷凍枝豆が500円とい う、味・サービス・価格とも三拍子で駄目な居酒屋だった。創業32年と言っていた。それだけの業 歴があるなら、普通は何か取り柄があるものだけど。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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