天徳泉（杉並区阿佐谷北）

ナカムラです。

今日（10/18）は、「天徳泉（杉並区阿佐谷北）」に行ってきました。阿佐ヶ谷駅（中央本線）から、0.5キロ、5分くらいです。

東京駅から阿佐ヶ谷駅まで20分くらい。この駅で何回降りたかな。しかし、駅のガードに沿って小さな飲み屋が集まる”スターロード”を通るのは久し振り。オヤジの休息の場だった小さな飲み屋のいくつもが、中央線文化圏ゆえ、洒落た店に置き変わっている。

同湯は、そのスターロードを抜けた辺り。小さな四辻にある。”波動水”なる看板を掲げたボロな外観のコンクリ造の銭湯。裏に回るとコンクリの煙突は、2階ほどの高さで断ち切られている。

昭和22年および昭和38年の航空写真を見ると、そこにはコンクリ煙突を有する伝統的木造銭湯の姿が見える。戦前からの老舗銭湯のようだ。

向かいにはセブン－イレブン、隣は同湯とのコラボか”温泉ラーメン”というラーメン屋。コインランドリーを含め人の往来は多い。

ドアを開けると、いきなり絨毯敷きのロビーがあって、そこに上がってから旧型さくらとSakura-G錠混成の下足箱に靴を収納するという、かなり珍しい方式。正面のカウンターの左右の棚にはシャンプーや石鹸が並んでいるけど、その芸術的な整然さに驚かされる。

脱衣所の広さは3間四方。高い天井には太い梁が剥き出しで2本渡され、全体に白いペンキが塗られ古びた感じはしない。

しかし、建具はガラス戸は木製、窓のサッシはアルミサッシ以前のスチールサッシにモール硝子。恐らく現在の建物は、昭和38年を過ぎ、程なく改築されたものだろう。元々は濡れ縁と庭もあったようだ。今はプレハブの物置と複数の壊れた石灯籠が乱雑に積まれ見る影もない。

ロッカーは、Sakuraｰ3錠の島ロッカーが横置に2つと外壁側に半身の島ロッカー。中央の島ロッカーには向こう側が見えないほどに鏡が向かい合わせに据えられている。初めて見るものだ。もちろん、上部に丸太を渡したレトロな男女境にも、普通に畳屋、肉屋、美容院、書店など10幾つかの屋号が並ぶ鏡がある。

男女境には女湯のサウナ室がフルに食い込んでいる。何とその”屋根”の上に、大型の空調機が背中合わせで載せられている。ありそうで見たことがないダイナミックな光景。

その他、Tanakaのアナログ体重計、飲料の自販機、旧型のマッサージ機、ぶら下がり健康器などが置かれている。何より、演歌が流れているのがいい。

浴室は、幅3間、奥行4間。天井は2段目がやたらと低いコンクリ造の2段型。ウィングの基部などに黄ばんだ古いタイル張りの梁。タイルが落下しないか、少々気になった。

浴室の出入口の扉の上は、硝子ブロックの壁があって脱衣所と隔てられている。しかしどういう訳か、このガラスブロックは割れているものが多い。何か投げつけなければ割れるようなものではない。地震のせいなのかなぁ。。。

気になる点は多いのだけど、照明が明るく広くて大きな、わくわくする印象的な空間だ。

細身の島カランは2列で、カラン数はセンターから7・5・0・6・6・4。川崎バルブの丸みを帯びた旧型のカランがズラリと並ぶ壮観な光景。

島カランは細身ゆえ、湯道具を置く青い樹脂製の台が増設されている。ボロいながらも明るく、基本的に清潔で好感が持てる銭湯だけど、この複雑な構造のカラン回りのヌメリが気になった。

床のタイルは、6センチ角の白で内縁に滑り止めの突起があるもの。しかし、部分的な配管工事の名残りとして、継ぎ接ぎ的に違うタイルが使われいる。

浴槽は奥壁に、深槽（気泡湯）、浅槽（非稼働のバイブラ）、元々は8点だった4点寝ジェット×2が並ぶ。一気通貫に幅3間弱もある水枕が壮観。もしかしたら”日本最長”の水枕かも知れない。その上には、全く必然性が感じられない、幅3間弱もある謎の鏡が張ってある。この部分の鏡も初めての遭遇。

”波動水”とは、井戸水を機械処理した高価な水らしい。冷水機には持ち帰ってはいけない旨の貼り紙がある。この波動水をガスで沸かしたお湯は、42度強。柔らかく粘りがある印象に残るいいお湯だ。

サウナの入口には総桧の水風呂がある。しかし、10センチ位しか水が溜まっていない。カランを捻れば、サウナ室に居る間に溜まるのかも知れない。マニアなのか、水深10センチの浴槽に入って感触を試している御仁が居る。

2つある立ちシャワーブースも少し変わっている。カーテンではなく家庭の浴室に使われる2枚の折り戸が使われ、飛沫を完全にシャットアウトする。シャワー室内には縦並びで5つほど、水を噴射するノズルが並ぶ。

ビジュアルは、奥壁に大きな絵付けのタイル絵。紫色と黄色で紅葉と桜を描いているのか、モチーフが判然としない絵柄だけど、気になるタイル絵だった。男女境には高嶺と湖の周りに、森、洋館などを配したモザイクタイル絵がある。

金曜日の19:50から20:40に滞在。印象に残るボロな外観と、古いながらも明るく、基本的には清潔な好感度の高い銭湯。ちょっとずつ普通ではない特徴がある、興味深い銭湯でもあった。銭湯としての基本性能は高いので、相客も若い人を含め20人くらいと、そこそこ繁盛している。

上がりの一杯は、スターロードの駅に近い所の「海舟」という小料理屋。板場をＬ字型で囲む、カウンター10席だけの小さな店。大将は、赤いＴシャツに大振りのネックレスという気取らない出で立ち。いかにも脂が乗ったという感じの手だれの料理人だった。刺盛り、牡蠣酢から始まって、〆の上品な焼きお握り茶漬けまで。思いがけずちょっとした割烹料理店レベルの料理を頂き満足至極。客層もいい店だった。

　　　　　　　　　　　「海舟」という小料理屋。板場をＬ字型で囲む、カウンター10席だけの小さな店。