今年の柚子湯は、中野の鍋屋横丁の老舗の照の湯。コンクリ煙突を有する簡素なモルタルの、小生好みの小振りな銭湯だ。

描いてから1年余りの丸山絵師の奥壁から外壁側に広がる「西伊豆(24.10.1.)」のペンキ絵があるものの、描いてから1年余りだけど少々痛々しかった。

この辺りは木造アパートが多く”木賃ベルト地帯”と呼ばれる地域。21:40から小1時間の滞在だったけど、働き盛りの生活銭湯派でそれなり客 が入っている。

時間が遅かったので柚子の香りは微かだったけど、女湯は柚子を入れ替えるタイミングに当たったようだ。同湯の女将さんはなかなか朗らかで素敵な方だ。

中野は江戸城から丁度10キロほど。幕府が管理する”江戸”の最も郊外にあたる地域。犬公方と呼ばれた五代将軍徳川綱吉は、此所に広大な幕府の犬小屋を設けた。

照の湯が建った頃は、中野サンプラザや、警察大学校跡地の中野セントラルパーク、早稲田大学、明治大学、平成帝京大学一帯は、犬囲いのあった「囲町」と呼ばれていた。

今は、JR中野駅周辺が栄えているものの、中野駅が開設されてからも暫くは中野で最も栄えていたのは妙法寺の参詣道の途中で、鍋屋という茶屋があった鍋屋横丁。新宿から荻窪行の都電の通り道でもあった。

今は想像することが難しいものの、映画館が複数あって、文人も多く洒落た店も多かったようだ。

《前回訪問:2011.9.02.》

※鍋横物語
照の湯(中野区中央) 2013.12.22.
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