差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年1月20日日曜日 1:18
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 照の湯(江戸川区南小岩)

ナカムラです。

今日(1/19)は、「照の湯(江戸川区南小岩)」に行ってきました。 小岩駅(総武本線)から、0.6キロ、6分くらいです。

何やら小岩に凄い銭湯があるという情報が・・・。 そして、その凄さは月夜に咲く花が発するオーラのごとく、判る人にしか判らないという。

小生に判るか。。。
気になったので急行する。

横浜の戸塚から丁度1時間ほど。小岩駅で降りるのは初めて。 南口に降りると、「地蔵通り」という飲み屋&風俗街、「昭和通り」という買い物街、「フラワーロー ド」という少し大店が並んだ3本の通りが放射状に伸びて、それぞれに人通りが多い。駅の反対 側にはイトーヨーカ堂が見えたけど、商店街がそれなりに機能している感じの活気のある駅前 だ。

照の湯は、フラワーロードを6分ほど南へ進んで、右に入る道にある。「馬里根」という資生堂の 化粧品店、コインランドリー、照の湯、ツバキ自動車販売という並びが、何とも「昭和30年代」し ていて強く惹かれる。。。

夕方なので資生堂のエメラルドブルーの四角い看板に明かりが灯る。この看板は不思議な力 があると感じている。銀座など都心で見かけると何とも感じないけど、田舎のくすんだ街並で見 ると妙に艶めかしく強烈な存在感を発揮している。資生堂は中国で猛烈に化粧品を売りまくって 業績を伸ばしているけど、こういった細かいノウハウも活かされているんだと思う。

さて、照の湯。昭和28年か29年に建てられた銭湯。建てたのは、風呂屋の三助時代にスカウトされて横綱にまで上り詰めた横綱・羽黒山。横綱を引退する頃に同湯を建てて、何年かは経営したようだ。

通常の銭湯は7間間口だけど、同湯は9間間口と大きい。ファッサードもいわゆる寺社的なもの ではなくモルタルの簡素な感じだけど、昭和30年代の量産型とも違う何処となく洋風のオーラ を漂わせている。

暖簾の左右にはカラになった水槽がある。かつては水が張られて鑑賞魚が泳いでいたようだ。 暖簾をくぐってのエントランススペースもかなり広い。旧型さくら錠の下足箱が多数、整然と並ん でいる。番台裏も奇麗に飾りたてられて、いい雰囲気がある。

番台は脚部が茶色の小タイル張りで、台面には狂いのない高級な板が貼られている。左右の 仕切りも大きくはないものの良質の材に丁寧な彫刻が施されている。一言でいえば気品ある番台だ。

脱衣所は幅4間、奥行3間ほどと大きい。天井は折上格天井。折り上げ部に支えの腕木がある など、凝った造りになっている。男女境のレトロな「資生堂」の広告灯もなかなかのオーラを放っている。

大きな石灯籠がある庭も立派。少ないながら池に水も張られている。そして、ガラス戸のガラスには模様が彫られている。少しずつタダでは済ましていない拘りがある。

全てが、古いというかボロなんだけど、当時絶頂だった横綱が建てた銭湯。全てが普通ではな かったのは容易に想像がつく。

浴室もボロだけどデカい。幅は4間、奥行も4間ほどの2段型。島カランは余裕で2列ある。床の タイルは白の3センチ角のタイルが黄ばんだり、黒ずんだりして歴史を語っている。

浴槽は3槽あって、センターから小槽、深槽、主浴槽。井戸水に成分が多いのだろう、析出物 の堆積が目立っている。湯温は、小さいのが42度くらいで、あとの2つは44度くらいとかなり熱 い。ご常連はだんだん熱くなってきたなといいながら、どことなく我慢して浸かっている感じがし ないでもない。

確かに熱いけど、お湯は、いい井戸水を使っているので、しっとりとして柔らかい。一見して、汚 れとは異なる濁りがある。温泉的な感じのお湯だ。

ビジュアルは男女境のモザイクタイル絵、焚出し口の大理石のビーナス像、獅子口、釜場のタイル巻のアーチ型入口など。

広大 な奥壁には、かつてペンキ絵があったけど、今は水色に塗りつぶされている。また、その下もブ ルーの板で塞がれているけど、水槽が仕組まれていた。ちなみに、女湯には章仙画の四季絵巻の長大な絵付けタイル絵があるらしい。

「お遍路巡礼スタンプノート」にスタンプを集めているのは圧倒的に男性で、女性は少ないと女将が話してくれた。「こういった酔狂なことに夢中になるのは男だけですよ」と返したら、女将は笑っていた。

上がりは、固辞したものの女将がジュースを御馳走してくれた。

同湯の大家さんは羽黒山から買い受けた隣のツバキ自動車販売。
ボロだけど、ただのボロではない。 やはり、銭湯マニアが深く印象に残るような、深く静かなオーラを放っている銭湯だった。
ただ、島カランの湯は最後まで使用に耐える湯温にはならず、ぬるいままだった。たまたまだったのかも知れないけど、設備的には厳しい。

帰りは「地蔵通り」の花びら大回転なんて店に囲まれたモツ焼きの「阿波屋」。レモンサワーに 熱燗2合(龍虎)、モツ焼き6本、煮込み、塩らっきょで2650円。これ以上食べられなかったけ ど、魚系の美味しそうなものも多数揃っているいい店だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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ツバキ自動車販売こちらもなかなか昭和30年代している。








漆喰の壁は灰色と黒の間にまでくすんでいる。


旧型のさくら錠が整然と並んでいる。
生け花にもてなしの心を感じる。



資生堂の看板を点灯してもらった


フラワーロード


地蔵通りの「阿波屋」