差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2010年2月20日土曜日 5:48
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 長者湯(上京区上長者町通松屋町西入須浜東町)

ナカムラです。

今日(2/11)は、「長者湯(上京区上長者町通松屋町西入須浜東町)」に行ってきました。 今出川駅(京都市営地下鉄烏丸線)から、1.2キロ、15分くらいです。

強い雨の中を旧島原遊廓を探索。遊廓建築で唯一の重要文化財になっている角屋や、現役のお 茶屋の輪違屋はもちろん立派な建物だった。しかし、噂と違い、他にも遊廓時代の建物がいく つも残っていた。

連れが旧妓楼の「御旅館きんせ」にあった小さなカフェバーの看板を見落とさなかった。築200 年以上の妓楼を大正末か昭和初期に内部をカフェー調に改造したもので、和風の外観からはお よそ想像できない、エントランスホールの妖艶なタイル遣い※1と、ダンスホール周りの量・ 質ともに圧倒的なステンドグラスの数々※2には身震いがした。

※1:河原町の昭和初期築というレトロ喫茶「築地」と同様なタイルが玄関上の床として使われ ている。
※2:作者不詳というが、小川三知レベルの優れた工芸品だった。

去年開店したらしい。しかし、店を長く維持させるのが難しそうな予感が・・・。興味のある 御仁は早めに見に行った方がいいかも知れない。廓内の「島原温泉(旧千鳥湯)」から至近の距 離にある。

島原遊廓の次は、小説「五番町夕霧楼」で有名な旧遊廓・五番町。「盛竹湯」が廃業して廓内の 銭湯は無くなっている。雨中の夕暮れ、ピンク映画館の「千本日活」と妓楼を絡めたショット を収めて、旧遊廓エリアに隣接するデイープな「西陣京極」の京極湯を見学、長者湯に向かう。

西陣エリアを歩くのは3年振りだ。煉瓦煙突の「京極湯」にかなりかなり惹かれたものの、京 都市の歴史的建造物になっている長者湯に入ることにした。

長者町通りと智恵光院通りという細い道同士が交差する所にある。後方には太くやや短い京都 仕様の煙突が見える。袖看板には屋号とともに「白山湯の花温泉」と記されている。

事実上のエントランスは黒瓦を載せた表門。その門に暖簾が掛けられガラスサッシの扉が付け られている。その後方に「ラジウム温泉」の篇額が架かる唐破風の昔からのエントランスがあ るけど、両者の間にガラス屋根が掛けられ、ゆったりとしたエントランスとして一体的に使わ れている。

ツルカメ錠の下足箱にドボ濡れた靴を放り込んで脱衣所に繋がる扉を開ける。意外にも番台で はなくご高齢の大女将が「小さな机」的なフロントに座り、顔を見ながらネイティブな抑揚で 「おいでやす」と迎える。

幅2間半、緩衝スペースを入れて奥行きは4間ほど。天井は平格天井。男女境には古いものに は見えなかったもののかなり凝った欄間がはめられている。建物は昭和初期の建物だろうか。 大きさは、京都標準というか、中型の銭湯だ。

床は籐式で、ロッカーは外壁側に折鶴錠のもの。小さいながらも石灯籠や風情ある池のある前 庭がある。放置気味の庭が多い東京銭湯とは大きく異なっている。

東寺の柳井湯と同じく同湯にも緩衝エリアの浴室入口の上に幅2間半の金閣寺の絵付けタイル がある。平安遷都1200年と記されているものの銘は確認できなかった。女湯は清水寺。柳井湯 のタイル絵と比べて技量としてかなり落差があるかな。

浴室は幅2間半、奥行5間ほど。天井は四角錘型で中央に横型長方形の湯気抜きがある。全て が更新されていて古いものは残っていない。そして、京都銭湯としては珍しくサウナの設置も 無かった。

浴槽は男女境に沿って、6点座ジェット×2がある主浴槽と深槽。そして、増築だろうか最奥 のスペースに「白山の湯の花」の白濁の薬湯槽がある。天然の硫黄ではなく、白濁系の入浴剤 が使われているようだ。湯温度はいずれも42度弱。上がって再び寒い雨の中を歩かなければな らない身には少しばかりぬるい温度だ。

カランは、外壁に9、薄く小さな島カランに2、男女境に2、入口方の壁に2。

そして、外壁側の脱衣所方に、脱衣所に少し張り出す形で一人用の水風呂があって獅子口から 水がドバドバと出ている。その位置や獅子口がある点など京都銭湯のお約束といえる設備だ。

上がりは、定番の飲み物やヤクルトなどに混じってスコールなどの銭湯系のマイナー飲料が冷 蔵庫の最下段にある。旧型マッサージ機を使う若者というのも東京ではあまり見かけない。ア ナログ体重計も石田衡器の大振りのものだった。

帰りは大女将から女将に変わっている。湯上がりを待ち合わせる相方を誘導してくれるのだけ れど、うまく引継がなされていないらしく、少し混乱していたようだった。

金曜日の21:00から22:00に滞在。相客は7、8人といった所か。建物の駆体は古いのだろうけ ど、かなり手が入っているせいもあって期待していたほどの郷愁はなかった。

風呂としては素敵なものだったけど、同湯に入ってなお煉瓦煙突の京極湯が気になった。入る 機会はあるのだろうか。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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京都・島原








京都河原町「築地」