差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2005年9月24日土曜日 13:31
宛先: 銭湯ML
件名: 山の湯(文京区根津)

ナカムラです。

今日(9/23)は、「山の湯(文京区根津)」に行ってきました。
根津駅(東京メトロ)から、0.3キロ、5分くらいです。

彼岸なので、ご先祖さまの墓参り。いつものように、一杯飲んで、寿司食って・・・。それから、昭和建築のトップランナーで重要文化財に指定された、濠端の明治生命館の内部が公開されているので、二重橋前へ。

小生、保険屋稼業の時代があって、同ビルには仕事で何回か訪れたことがあるけど、岡田信一郎の会心の作。外観に負けず劣らず、内部の意匠や、梶田恵の家具類も見応えがあった。2時間も細部を撮影していると「商業撮影は禁止なんですが・・・」とコンシェルジェ。2時間も写真を撮ってる酔狂な人間は少ないらしい。

16:00。千代田線沿線の銭湯にでも行くかということで、根津駅へ。地下鉄を降りて地上に出るといきなり「宮の湯」のコンクリ煙突。近寄ってみると、改装はされているけど伝統的木造銭湯のよう。駅に近い銭湯として記憶しておくことに。

根津周辺jは関東大震災にも戦災には遇わなかったんだろう、「根津教会(1919(大正8))」〔登録有形文化財〕などの戦前物件が、まだ多く残っている。築年は判らないとのことだったけど、同湯の建物も、同湯の向かいの古めかしい建具屋も、戦前からの建物だろう。

さて、山の湯。
古めかしい切妻屋根の建物に小さなモルタルのエントランス棟が増築されている。黒瓦の屋根は重そうで、少し波打っているように見える。暖簾が洗い晒したもので、失礼ながら、ぼろ布が下がっているような感じがする。暖簾上には、摺りガラスで「男湯」と書かれている。

暖簾をくぐると外壁・左手側に松竹錠の下足箱。男女境として壁を増築し、そこにも数が少ないものの下足箱が置いてある。番台裏に白・ブルーの市松模様でタイルが張られているが、半分しか見えない・・・。

番台は新建材で前面がカーブしているもの。体調がすぐれないのか、疲れた感じの年配の女将に400円を渡す。

脱衣所の広さは、ベースは3間四方。後で、恐らく庭を潰して、1メートル強、外壁側に増築している。入口方の上部に窓(桟に雲形の意匠があるレトロ)が一直線に並び、妻側の上部には窓がなく、漆喰の壁という古めかしい造りになっている。

天井高は2間強、折り上げ部分は漆喰で塗り込められているけど、折り上げ格天井になっている。但し、格子の材は細いので力強さには欠ける。男女ともにそれぞれ1機の古風な天井扇が下がっている。

ロッカーは、無名のブロック状のシリンダ錠のもの。入口方の壁に少数の松竹錠板鍵のロッカーもある。大黒柱には新しい丸時計、その上に屋号を記した千社札のような木札が下がっている。その他、亀井式のアナログ体重計、木製のベンチ、たたみ一畳敷きの休憩スペースがある。

このアナログ体重計。一旦、73キロを指して、71キロくらいまでゆっくり戻る。最近、オーバーウェイトなので、少しにっこり。

浴室は、幅3間、奥行4間弱。天井は、ウィング2間の2段型。高天井の高さは3間くらい。島カランは三角断面の鏡が付いたもので、カラン数はは、センターから7・5・5・6。シャワーはセンターのみ。

内装は、昭和中期的なタイル使い。床は3センチ角の白タイル。カラン台は脚部が10センチ角の、上面が1センチ角のモスグリーンのタイル。その他の部分が白タイルになっている。そして、同湯は丁寧に清掃された木桶を用いている。

湯は熱い。それよりも、カランの水が冷たいのが印象的だった。浴槽の中側が付着物で真っ黒であることからして、恐らく井戸水を使用している。

浴槽は、かつては深浅2槽だったものを改造して3槽にしている。深槽は5点座ジェット2機に、浅そうは外壁側を区切って薬湯。真中が白湯だけど、先述の通り内側は井戸水の成分が付着して真っ黒。

ビジュアルは、奥壁に丸山師の瀬戸内海。今年の8月4日に描かれたもの。富士山は女湯。丸山師の絵にしてはやや平板かな。そんな印象を受けた。

上がりは、300mlの紙パックのりんごジュース。80円と安かったけど、旧型2枚戸の冷蔵庫には、3種類、計6本くらいしか入っていない。よくみかけるけど、とても寂しい光景だ。

駅まで3分の道のりだけど、夕暮れ時に、地元民同士が挨拶を交わす光景に何回が出くわした。下町、未だ近所の結び付きが強いと感じた。










根津駅前の宮の湯


根津教会


日本基督教団根津教会(旧本郷福音教会)
所在地: 東京都文京区根津1-19-6
竣工:1919(大正8)年/設計: 不詳/
構造: 木造1階建て・下見板張り・塔屋付

礼拝堂・煉瓦積の門と塀も含めて
文化庁登録有形文化財(平成13年文部科学省告示第148号)。
日本建築学会「日本近代建築総覧」(1980年)No. 16271


同湯裏側。蛍光灯の付いている所から表に出ることができる。


同湯向かいの表具屋さん


教会近くの医院