差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2004年12月31日金曜日 11:06
宛先: 銭湯ML
件名: 山下館(横浜市中区新山下)

ナカムラです。

今日(12/30)は、「山下館(横浜市中区新山下)」に行ってきました。
仕事納め。17:10に定時退社。

毎日、東京駅を利用しているけど、反対の丸の内で行われている東京ミレナリオを見たことがない。
まぁ、風呂に入る前に寄るかと出かけて行った。
寒い日だったけど、凄い人出。
ミレナリオは、入口部分はとても良かったけど、それを過ぎると単調だったかな。
3分の1くらい歩いて東京駅に引き返した。

さて、山下館。
横浜から、みなとみらい線に乗り換え、元町・中華街駅で下車。
0.7キロ、10分程度です。

後ろに、港の見える丘公園の山が迫っている、古い商店街の一角にある。
埋立で海岸線ははるか遠くなったけど、かつては近くに大正3年創業の「バンドホテル」があったりと、海に隣接の銭湯だったと思う。
振り向くと、遠くに照明に照らされたマリンタワーが見える。

(注)バンド:ドイツ語で海岸。
   バンドホテル:ニューグランドとは別の意味で有名だった。特に、7階のナイトクラブシェルルームは。
   1999年に解体され、今はドンキホーテになっている。

30日の20:30。灯りの付いている店はない。
暗くてよくわからないけど、コンクリの巨大煙突も、後ろの山のシルエットの方が高く、あまり高さを感じさせない。
隣は、駐車場。銭湯の側面が見渡せる。

入口はモルタルのファッサード。アイボリーホワイトに塗られて、古い感じがしない。
左右に点けられている蛍光灯の照明も趣きなし。

しかし、手造りの暖簾をくぐると???。
入口の扉は一見してレトロな造り。下足箱の錠も旧型の松竹錠。
傘立てに隠れているけど、正面には章仙画のタイル絵。鯉の滝登りの図。番台後ろの窓の造りも古風。

ファッサードの造りに反して、レトロ感が漂っていている。
緊張感が高まってくる・・・。

同湯の建物は昭和30年築の伝統型銭湯。
夫婦養子で昭和36年に入った女将によれば、創業年は判らないとのことだったけど、昭和元年生まれの客から「小さい頃からここのお風呂に入っていた」と聞いたことがあるらしく、遅くともその時代にすでにあった古い銭湯らしい。

脱衣所には威圧感・存在感たっぷりの「特許寺岡式敏感自動秤」があったけど、製造者の銘板に「株式会社朝日衝器製作所造 東京市品川区大井鈴ヶ森町九二七番地」と旧字体で書かれていた。
「東京市」が廃されたのは昭和18年のこと。
同湯の歴史を一番に語っているものだった。

5年前に、何回修理しても雨漏りが直らないので、痛んだし客も減ったので、男湯側の側面を一間ほど削る大修理をしたと。
もとは、「入母屋造り」と言っていたけど、表も、入口棟を設えた伝統型銭湯だったのだろう。

アルミサッシの戸を開けると、木組みの番台。
装飾等はなく、高さも低い。
特に目隠しもないので、女湯がいやでも視界に入ってくる。

脱衣所の広さは、3間四方だったけど、1間切り取られているので幅2間、奥行3間程度。
天井は焦げ茶色の折り上げ格天井。古風な天井扇もあって、見事な木造のレトロワールドがある。
島ロッカーが横置きに1つ、外壁にも。双方とも松竹板鍵。

女湯にも入れてもらったけど、外壁側全面に木製の旧型ロッカー。
6人分くらいのベビーベット。
男湯にはない花なども置かれていて、男湯とは全く違った雰囲気を持つ空間だった。

有り難くも営業時間中に女湯をも見せてもらう恩恵に預かったけど、やはりそわそわ。
細部まで見ることができないから、あそこはどうなっていたかな?というところばかり・・・。

浴室は、平成3年の中普請を経ているので、旧来のものはない。
例によって、外壁側(左側)が1間削られて、幅は2間、奥行4間。
天井は2段型。白とブルーのペンキにくすみはない。

島カランは1列で、カラン数はセンターから、6・5・4・0。外壁側に冷・温の立ちシャワーブースが2つ。
浴槽は1槽で、ステンレスのパイプで仕切られ、バイブラと7点座ジェットが2つ。
身体が冷えているので、湯は熱く感じると思いきや、そうでもない。
意外に温度が低く。42度くらい。

奥壁には、見事だった?、巨大タイル絵(縦10枚×横17枚)。
九谷焼きの旧来型のもの。恐らく、左10枚程度が5年前の改築で撤去されての寸詰まり。
長屋門、松、川を日本庭園風に描いたもの。でも、庭園ではないのか、遠くに木橋が描かれている。

女湯のタイル絵を見て息を飲んだ・・・。
こちらは、寸詰まりはない。(縦10枚×横27枚)。
墨書で「彩陶園」、その横に・・・「胡山画」とある。
てっきり、章仙画と思っていたけど、山水画を得意としたらしい絵付師、胡山の仕事。

いかん、いかん、女湯で興奮したらいかん。

帰りは、傘立てに隠れた、章仙画のタイル絵の撮影を請うと、傘立てをどかし雑巾で磨いてくれた。
仕事納めの開放感、胡山画の巨大タイル絵との遭遇、温かい女将の計らい、とてもいい気分だった。

そして、今年最後のミッション。
桜木町の「明るい農村 居酒屋 ごっつあん」を訪れること。
こちらは『横浜銭湯めぐりの会』の代表大森美津男氏経営の居酒屋。横浜銭湯めぐりの会の事務局がある。
「ぐっちゃんの紹介でやって参りました。ナカムラと申す銭湯に興味を持つものです。今日は割引で飲ませて下さい(?)。」との挨拶のセリフまで準備していた。

30日の21:50。お店は閉まっていた。
新年は4日かららしい。
んー、小生に相応しい、1年の締めくくりだった。




女湯。「彩陶園 胡山画 (鈴榮堂)」の銘をみて興奮した。
失礼ながら、女湯に来客がいなかった、幸運で接することができた。



男湯。1間ほど切り詰められている。胡山画やや痛ましい姿で残っている。
昔は男女境にもタイル絵があったとのこと。


戦前の寺岡式のアナログ体重計。
銘板に製造者の「東京市」の住所が記載されている。


章仙画のタイル絵。
女将が雑巾でホコリをぬぐってくれた。


レトロなしつらえが残っている。


女湯。木製ロッカーとベビーベッド。
こんなに赤ちゃんが来るとは思えないけど。


東京ミレナリオ


大納会の相場。
来年は活況だといいな。忙しいけど。