よろづ湯（武蔵野市吉祥寺本町）

差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2010年11月13日土曜日 0:21
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: よろづ湯（武蔵野市吉祥寺本町）

ナカムラです。

今日（11/5）は、「よろづ湯（武蔵野市吉祥寺本町）」に行ってきました。吉祥寺駅（中央本線）から、0.3キロ、4分くらいです。

今週も企業の決算発表が続くタフな一週間だった。20:00に会社を出て吉祥寺に向かう。

吉祥寺のヨドバシカメラに寄って、今日発売されたリコーミラーレス機GRX用の単焦点28ミリの交換レンズユニットを見た。

GRXは、かなり特殊なコンセプトのカメラで、何度も買おうとして、何度も躊躇って、発売開始から1年を経過し今日に至っている。しかし、今日発売されたこのAPS-Cフォーマットのレンズユニットは、写真で見て感じた通り、ボディとのバランスが良かった。一日中でも握っていられることが、働くカメラの条件だと思っている。

そして買ってしまった。。。

さて、ヨドバシの紙袋を抱いて、呼び込みの兄ちゃん姉ちゃんをかわし、よろず湯へ。男の劣情を満たす吉祥寺の悪場所の一角。まさにビルの谷間。そこに、場違いのようにコンクリ煙突の伝統的木造銭湯がある。

同湯向かいの店には、ドレスを着た姉ちゃんが呼び込みに立っている。コインランドリーでは、もう何日も風呂に入っていないような薄汚れた御仁が洗濯が上がるのを待っている。かなりシュールな光景がこの細い路地にはある。

同湯は大正時代の創業。昭和39年に現在のモルタルの建物に替わっている。

紺地に「湯」とあるシンプルな暖簾。同湯のエントランスは、周りの明るさに比べれば蛍ほどの明るさの趣さえ感じる。暖簾をくぐれば左右に旧型さくら錠の下足箱。大型の銭湯なのでエントランス部もそこそこ広いものだ。

サッシの戸を開ければ、前面がカーブした木目プリント新建材張りの番台。三代目に代わり、二代目に当たる大女将が座った。

釜場から男湯を通ってやって来る姿を見たけど、杖をつき、腰も直角に曲がっている。近時みかけない、昔のお婆ちゃんに会った気がした。80歳は優に越えているだろうか。しかし、声に張りがあり、客に対する笑顔も素敵だ。いい時代に、いい銭湯人生を歩んできたことが想像される。

脱衣所の広さは、幅3間半、奥行3間ほど。天井はペンキ塗りのベニヤ板という感じの粗悪な材料の天井がある。また、壁も同様の材料が使われている。いわゆる新建材が出始めた頃のもの。それが見られるというのは意義あることだ。ただ、今となってはかなりシャビーな感じが否めない。

ロッカーは、外壁側と島ロッカーがひとつ。いずれもSakuraⅢ錠のもの。その他、旧型マッサージ機、Hokutowのアナログ体重計などがある。

コーナーにＬ字型に木製建具のガラス戸があって、磨き込まれたガラスの向こうには、塗れ縁と庭がある。しかし、特に整備されている様子はなく、土の庭には何もない。

照明もあまり明るくない。最小限の物だけが置かれ、広い空間を広いままに使っている。悪くない空間だ。

浴室は、幅3間強、奥行4間半ほど。天井は2段型。今となってはオーバースペックになった、天井が高く大きな空間が印象的。ここには銭湯の原風景がある。

島カランは鏡すらないプレーンなものが2列。カラン数は、男女境から7・5・5・5・5・6。男女境はベージュ色の蔦の葉型タイルと茶色の丸タイルで葡萄棚をデザインした初めて見るタイプのもの。釜場への入口もタイル巻きのアーチで、扉が木製の桟にガラス戸という繊細かつ趣深いものが残っている。

浴槽は、奥壁に接するかたちで深浅2槽。幅広い建物につき大型の浴槽。吉祥寺の繁華街の真ん中にある昔ながらの浅井戸から水を汲み上げ、重油で沸かした湯が満たされている。さすがに薪を燃すと、灰が人通りの多い道に落ちるので難しいという。

お湯には微かに白い析出物が見える。浅槽は3穴ジェット×2で湯温は42度くらい。深槽は気泡が少し立ち上るだけで42.5度くらい。双方の浴槽とも、成分豊かな井戸水なのか、重油焚きながら柔らかないいお湯だ。

同湯のビジュアルも趣深い。広い空間の奥壁には中島さんの富士山のペンキ絵。富士山をバックにした、川の中流の図で、流れる水に勢いと力強さを感じる。絵の上側に△▽を連続させたような飾りがあるのが珍しい。

その下には濃い色使いのモザイクタイル絵。やはり富士山をバックで、水車小屋、湖、湖面を走るヨット、洋館などが描かれている。上下に富士山の絵が並ぶのは珍しいかも知れない。

上がりは牛乳が無かったので「水・好き（武蔵野市水道部）」を買い求めた。武蔵野市の水道水は、井戸水が主体で美味しいことで有名だ。それをボトリングしたもの。水道水の70％を井戸水が占めるようだ。

同じようなものを大阪市水道局も売っていて飲んだことがある。ただ、「素材（地下水）」を売りにしている武蔵野市と違って、大阪市は美味しくない水を美味しい水に作り変える水道技術をアピールしていた。

金曜日の21:30から22:15に滞在。最初はこの広い銭湯に相客がひとりだけだったけど、22:00を回ると客がどんどん入ってきて、都合10人弱になった。

シンプルで大型の銭湯。明る過ぎず暗過ぎず、微かに幽玄な感じが漂う。希有な立地や大きさだけでなく、印象に残る銭湯だった。

上がりの一杯は、駅前のハモニカ横町的な路地にあるオレンジ色の看板が印象的な「ハモニカキッチン」。22:30のラストオーダーに潜り込む。小さな店だけど、オーダーによっては、路地の向かいの店や、隣の店から料理が運ばれて来る。

まぁ、味は語るほどのものではなかったけど、長屋のおすそ分けで夕飯を頂いているような、そんな仕組みが面白かった。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ （風呂屋の煙突）
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