差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp] 送信日時: 2007年8月5日日曜日 9:15 宛先: 銭湯ML (sento-freak@kt.rim.or.jp) 件名: 吉田温泉(静岡県沼津市吉田町)

ナカムラです。

今日(8/4)は、「吉田温泉(静岡県沼津市吉田町)」に行ってきました。
沼津駅(東海道本線)から、1.2キロ、15分くらいです。

今日は暑い日だった。。。

三島で2か所の遊所跡と「桜湯」。沼津で1か所の遊所跡と「朝日湯」とを見た段階で、身体は 風呂とビールを欲する状態になっていた。

三島・桜湯も、沼津・朝日湯も、遊所跡にある銭湯。 たまたま両方とも土曜日が定休で、仕舞の時間が早いというのも同じだった。なかなか入り辛 いけど、沼津には七反田の遊郭跡もあるし、また来なければなるまい。

初めて来たけど、三島の街は楽しい街だ。東洋一の湧水量がある柿田川湧水群の土地だけあ って、町の中に何か所も湧水スポットがある。そこからの清流が、何本も市街を流れれている。 かつては生活用水として使われていたらしく、今は子供たちが水遊びで楽しんでいる。

三島市が、町の中心部からして、こんなにも水に恵まれているとは知らなかった。泊まりたいよ うな宿の目星も付けたので、桜湯の再訪と湧水の街の散策で、ゆっくり再訪しなければ。。。

さて、沼津の吉田温泉。沼津の古くからの繁華街を抜け、天城山からの狩野川という大きな川 を渡るとすぐ。明治12年創業。300数十軒から19軒にまで減ってしまった静岡県の銭湯の中 では屈指の歴史を有する。現在の建物は昭和25年築。脱衣所棟、浴室棟、煙突ともレトロな 感じのコンクリ造になっている。

ファッサードは、野球のホームベースのような簡素な形。「吉田温泉」と楷書体の屋号がある。 正面はパネル張りになっているのけど、オリジナルは何らかの装飾があったのかも知れない。

古くて頑丈そうな木枠のガラス戸を開けると、狭いコンクリのたたきに番台がある。この番台は、 基部がコンクリになっていて、その上に「番台」が載せられている。オリジナルはかなりの低さだ けど、その上に高さを付け足した跡がある。側面に傘を収納する錠がある。しかし、鍵はすべて 散逸して、機能はしていないようだ。

中年というと怒るかな。それなりに若い感じの番台氏に360円を払う。下足箱は、単なる棚のも のと旧型のおしどり錠のものが、入口方の壁に据えられている。

このコンクリのタタキの前には、脱衣所への視界を遮る木製の立派な衝立がある。「温泉は使 用しておりません」という手書きの新しい張り紙や、沼津浴場組合の「入浴は40分まで」というやや高飛車な項目を含む古い注意書きが貼られている。

沼津の銭湯は、同湯と「朝日湯」の2軒だけなので、最盛期に20数件を擁したこの組合が存続 しているか怪しいけど、「40分」とはやや慌ただしい。たまに時間制限を見かけるけど、40分以 内とは、その時間的な厳しさではマイベストワンだ。まぁ、いずれにしても銭湯が混雑していて、客を回転させる必要があった時代の「遺物」だ。今は、その必要はない。

脱衣所の広さは3間四方。天井の照明器を吊るスペースには、円形のレリーフがあったりと、古 い洋館風の趣に満ちている。そして、天井、壁の白ペンキは、剥離や煤けがあって、深い時間 の流れが凝縮されている。

ロッカーは外壁側にのみ。上部2段がオール木製の渋いロッカー。上の1段は松竹板鍵に更新 されているけど、その下は鍵が無いだけでなく、錠の部品が欠落し壊れた状態になっている。 その下は棚になっている。久し振りに遭遇する、なかなか渋いロッカー群だ。もっとも、男女境 側に2本にわたって30個くらいの脱衣籠が高く積まれているので、こっちが主力なんだろう。

その他、男女境に大きな鏡、地元静岡のパック牛乳などそこそこ飲料が入った2枚扉の古い冷 蔵庫、旧型マッサージ機、初めて見るNAGASHIMA KOKIのアナログ体重計、木製のベンチ などがある。すべてが古いものの、役者は揃っている。

浴室も3間四方。天井は2段型になっていて、その湯気抜き部分には十字でコンクリの梁がク ロスさせてある。箱根の関を越えているからか、コンクリ造ということからしても、東京や横浜の 銭湯ではなく、「名古屋銭湯」の印象が強い浴室だ。

浴槽は、中心よりやや後方に直径1間半ほどの大きな円形浴槽が1槽あるのみ。ヘリに黒の小 タイルが使われた古風なものだ。お湯はバスクリンが入った42度強の入りやすいもの。底の方 から熱い湯が足されているけど、循環設備は見当たらない。

カランは男女境側に7、外壁側に6。シャワーは合計で6機ほどなのでカラン数の半分もない。カ ランは、水は旧型の日の丸扇の刻印のある丸味を帯びたものだけど、お湯は「湯」の刻印があ るオール金属製のちょっとそこらではお目にかかれないレアなもの。

立ちシャワーブースが、外壁側脱衣所方にある。衝立で仕切ったヤワな「シャワーブース」では なく、コンクリの洞窟の入口というような趣あるものだ。試してはみなかった。

ビジュアルはないものの、床がレトロな小石タイル、壁がグリーン系の小タイルをベースに淡い ピンクとブルーで波型文様にアクセントを付けている。カラン回りは肌色の小タイル。こんな具合 に、円形浴槽を含めてレトロタイルのオンパレード。経年の変化をも取り込んだ、味が有り過ぎ る内装になっている。

コンクリ造の空間ながら、古色蒼然とした幽玄なる静寂空間だ。車の通りも多い町中に、こんな 空間があるのは銭湯くらいなものだろう。

土曜日の17:00から17:50に滞在。相客は3人。 「入浴は40分まで」という、沼津の掟を守ることはできなかった。。。

定休日:火曜日。15:00から20:00。

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