差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2009年3月22日日曜日 11:51
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 吉野湯(川崎市川崎区東門前町)

ナカムラです。

今日(3/20)は、「吉野湯(川崎市川崎区東門前町)」に行ってきました。 東門前駅(京浜急行大師線)から、0.3キロ、3分くらいです。

今日は彼岸中日、生田まで墓参り。帰路、川崎駅で降りて京急の大師線に乗り換える。港町駅 なんていう駅があったり、ローカル色の強い路線で気に入っている。

東門前駅は、川崎大師駅の次の駅で、歩いて川崎大師にもアクセスできる。そして、同湯は川 崎大師駅からの参道の延長線上にある銭湯だ。

表には、普通のと布団丸洗い機なるものを設置した2つのコインランドリーがある。その間に 同湯の小さな入り口。コインランドリーと入口それぞれに大きなテントが架かっていて、銭湯 建物を見渡すことができない。

しかし、脱衣所棟の屋根は青いペンキ塗りのトタン屋根。奥の浴室棟も庇の支え方が古風な感 じがする古いタイプの木造銭湯だ。奥には銀色ペンキ塗りの油井型の煙突が見える。

のれんを潜ると小さな医院の待合い室のようなフロント。松竹錠の下足箱に靴を放り込んで、 傘を傘立てに立てて板鍵を引く。傘を忘れないようにしねければ・・・。

脱衣所は、オリジナルは3間四方のようだけど、小さな医院風待合い室にスペースが取られ奥 行きが削られている。かなり狭い印象を受ける。上から下までの壁という壁が、昭和中期的な 木目プリントの新建材で更新されている。戦前からの建物だというその面影は、立派な平格天 井の格子に窺われるだけだ。残念ながら、天板は新建材ではないものの素っ気ない白い素材で の更新になっている。

不思議な感じがする。風情とは違うけど、この銭湯が古い歴史を湛えている、表現し難い雰囲 気がある。おそらく常人には分からない。この感覚が分かるのは同じ指向の少数派かも知れな い。

そんな空間に「ドラえもんが待っているから、家に帰ろう・・・」と独り言を繰り返す若者が いる。スーパードライの缶を握り、酔っているのか、イカれているのか判別しかねるけど、風 呂に入っていい気分というのが良く分かる。

小生の家にはドラえもんは居ないけど、酔いたい気持ちや、時にイカれたい気持ちも良く分か る。一見して同じ風呂好きの同士でもある。こんな空間で心底くつろげるいい奴だ。

ロッカーは外壁側と入り口方に松竹板鍵のもの。余計はものは一切ない。その他は、稼働して いるか分からない旧型マッサージ機とがっしりとした寺岡式のアナログ体重計があるくらいだ。

浴室の印象も中型銭湯よりも少し小さい感じがする広さ。ほぼ3間四方のスペース。天井は2 段型。狭いからか、かなり高く感じる天井。コーナーの造りは古風だ。

島カランは1列で、カラン数はセンターから3・4・4・5。タイル類はすべて更新されて古 いものはない。カランは日の丸扇の刻印(川崎バルブ)のメジャーになれなかった大砲型のも の。相客の爺は、カランの操作を足のみで行っている。それを目的としたデザインではないだ ろうけど、確かに、ブレーキペダルのように足で操作するには適した形状になっている。また 複雑な梃子の部分がないので、足で扱ったとしても故障しにくいだろう。

浴槽は2槽ながらレトロ系銭湯にしては異色だけどなかなかだ。センター側が炭酸泉風呂で温 度は40度を割るくらいのかなりぬるい温度。外側が主浴槽でバイブラはほとんど壊れていて、 それ以外に電気とエステバスになっている。このエステバス(1穴スーパージェット)は、奥 行きがないことと、浅いままでの設置という点で変わっている。温度は42度半くらい。

ぬるい炭酸泉と普通の温度の浴槽を何度か行き来する。小さな銭湯でこの組み合わせは希だけ ど、かなりくつろげる。あのドラえもん君もきっと何度も往復したんだろう。あのくつろぎ切 った表情の理由がよく分かった。

ビジュアルは、奥壁に中島師のペンキ絵と、その下に切り絵調のモザイクタイル絵。絵柄は濃 いブルーに熱帯魚が泳ぐ図でなかなか渋いタイル絵だ。

3連休初日の春分の日の18:00から19:15くらいと長湯したけど、相客は3人だけだ った。

上がりはフロントのソファで眠っている猫の隣でスーパードライを頂く。猫だけでなく、フロ ントの女将も眠りに入った。春だからか、何かまったりとしたフロントだ。

同湯隣の飲食店長屋に入る「とり幸」という焼き鳥&焼きトン屋は良かった。菊正宗の燗酒2合、 串焼き7本、煮込み、かにグラタンで2350円。注文を取るネエちゃんも安達祐実を色っぽ くした感じの、かなりイケている。きびきびと動き回って、活気あるこの繁盛店で機能してい るのも素敵だった。

吉野湯を目指す人は少数派だろうけど、その時には、訪れる価値のある居酒屋といっていい。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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