差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2010年3月3日水曜日 23:31
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 吉の湯(葛飾区堀切)

ナカムラです。

今日(2/27)は、「吉の湯(葛飾区堀切)」に行ってきました。 堀切菖蒲園駅(京成本線)から、0.6キロ、7分くらいです。

ペンキ絵があって、下見板張りの古いだろう銭湯ということで気になっていた。富士見湯(荒 川区/廃業)、松の湯(埼玉県吉川市)など、下見板張りの銭湯はいずれも大正末か昭和初期の 建物だった。

上野公園で青空演奏を聞いたり、不忍口の松竹デパートの古本屋を冷やかした後、京成上野駅 から葛飾方面に向かう。自分にとっては馴染みのない方面で、京成電車も数えるほどしか乗っ たことがない。銭湯も葛飾区や江戸川区は未開の地域。

堀切菖蒲園駅は、上野駅から6駅、15分くらいで、思っていたよりも近かった。高架のやや面 白味に欠ける駅を降りて、第四富士の湯、星の湯、ニュー富士の湯と付近のレトロ系銭湯を見 て回る。葛飾区は東京で4番目に銭湯が多い銭湯密集エリア。伝統的木造銭湯が多く、故早川 師のペンキ絵が多く残る地域でもある。

同湯の建物は大正期の建築という。かつては悪水路だったと思われる細道に面し、並行する表 通りと同湯の間にはアーチがかかる「花道」になっている。かつてこの水路には橋が架かり、 客はそれを渡って来たのだろう。

平入りの脱衣所建物の屋根の支えは、がっしりとした古風なもの。エントランスは簡素な造り のむくり屋根になっている。十二分に古豪銭湯の雰囲気をたたえる。

紺地に赤字で「火の用心」と書かれた暖簾を潜る。思いの外広いエントランスだ。両サイドの 松竹錠の下足箱と番台裏の傘立てだけのシンプルなもの。

戸を開けて連れが風呂銭を払い、小生はスタンプ帳を差し出した。印象的に残るくらい不愉快 そうな顔で、面倒臭そうにスタンプを押して下さった。

脱衣所の広さは、幅2間半、奥行3間半ほど。縁側の軒を支える柱が外壁側の脱衣所内に立つ 古い構造。天井は深緑と白のアメーバ模様の古い新建材に置き変わっている。かつては押し縁 の天井だったと推測される。

脱衣所内は中央に島ロッカーがあるシンプルなもの。その他、コイン穴がビニールテープで塞 がれている旧型マッサージ機、TANAKAのアナログ体重計など。

外壁側が半間ほどあって、全面が木製建具のガラス戸。その外は高級な材料で造られた「舞台」 のような縁側が庭池に張り出す。庭は荒れ深い池には水が張られていない。堀抜き井戸跡なの か池の真ん中にそんな遺構がある。広くはないものの水が豊かな堀切にあって、かつては気品 ある庭だったのではないだろうか。

浴室は、幅3間、奥行4間ほど。天井は2段型。島カランは1列でカラン数はセンターから7・ 5・5・7。タイル類は基本的に更新されているものの床だけが淡い緑色の長方形の小タイル が残され古めかしい感じがする。

浴槽はシンプルな深浅2槽。浅槽はバイブラとジェット×2。深槽は粗い泡が立ち上るだけの シンプルなもの。深槽は45度は超え、浅槽もチョロチョロと水が投入されているものの44度 くらいと熱い。

井戸水を薪と重油で沸かしている。今日はどっちで沸かしたものなのだろうか、あまり柔らか さを感じない湯だ。ただ、透明な湯ながら、鼻にかざすと黒湯独特のいい匂いがする。何の成 分か知らないけど、黒湯と同じ成分が含まれていると感じる。

そして、同湯の見所は男女境に広がる幅4間の絵付けタイル絵。九谷・鈴栄堂のクレジットは あるものの作者の銘はない。絵柄は宮島の厳島神社。章仙画にも見えるものの小舟の細かな描 き込みを見ると福二画か光山画のようにも見える。

奥壁は早川師の「富士川」とあるペンキ絵。日付はない。均整のとれた富士山を背景にした富 士川の両岸の描き込みに絵師としての気合いを感じた。男女境には九谷焼のタイル絵が広がっ ている。それに負けてならじと刷毛に力が入ったと想像する。早川さんのプロ根性が潜む優れ たペンキ絵だと思う。

上がりは、サッポロ黒ラベル250円。番台は相変わらず素っ気ない。。。

歴史も風情もあるいい銭湯だけど、馴染み客しか受け付けない雰囲気があって、一般向きでは ないかも知れない。しかし、大正期の建築とすれば東京銭湯の中でも貴重な一軒だ。土曜日の 17:55から18:40に滞在する。相客は5人ほど。脱衣所、浴室ともに客が途切れたタイミングが あった。しかし、早川画や厳島神社のタイル絵など、撮影を申し出る雰囲気ではなかった。

気分直しの一杯は、同湯の花道脇の「ハイボール」とある赤い小田原提灯に強く心惹かれたも の、隣のお花茶屋駅の廃れた飲み屋小路的な一角にある「東邦酒場」へ。数ある焼酎ハイボー ル発祥の店をうたう一軒。店の両サイドに色々な物が不法投棄されているのはどういうことな のだろうか。。。

天井が極端に低い。漁船の食堂のような独特の雰囲気を感じる。酎ハイにイカの刺身、モツ焼 き4串、ツナサラダ。不覚にも煮込みを食べ忘れた・・・。洗浄が不足しているのか、多少臭 みのあるシロが気になった他は、美味しくて安い店だった。

次はB級呑み助の聖地とも言える京成立石へ。赤線跡のゴミ屋敷の主に眼付けられたりしなが ら、中華屋「蘭州」へ。紹興酒で、焼餃子と水餃子。餃子といえば「王将」の焼き餃子を贔屓 にしている。ここの焼餃子もまぁまぁだけど、水餃子の美味しさには驚かされた。小さい店な がら、並ぶほどでもないものの、席が空けばすぐに次の客で埋まっていく。あまりの忙しさに 女将さんも少々不機嫌な顔で、餃子の皮を打ち伸ばしては餡を包んでいく。

そんなこんなで少々飲み過ぎた。。。

*************************************************
ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ (風呂屋の煙突)
*************************************************









お花茶屋・東邦酒場





立石


立石


立石・旧女性街