差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2011年8月20日土曜日 7:11
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 吉の湯(川口市上青木西)

ナカムラです。

今日(8/7)は、「吉の湯(川口市上青木西)」に行ってきました。 西川口駅(京浜東北線)から、1.3キロ、15分くらいです。

地元の十条界隈は猛暑の中で夏祭り。そして、夕方からはゲリラ的な雷雨。下水道局の東京アメッ シュで降雨状況を確認し、雨が降っていない埼玉方面の銭湯ということで西川口の吉の湯に向かう。

思っていたよりも駅から遠い。そして、あまり歩いていても変化が無い。よく銭湯があるような神 奈川の町と埼玉の町を比べると、町歩きという視点になるけど、埼玉の町は変化が少ないというか 発見が少ないような気がする。今回もそこそこ歩いたもののあまり収穫がなかった。

少々見込み違い。豪雨ではないもののパラパラと雨が落ちてきた。そして蒸し暑い。

黒瓦平入りの脱衣所の建物に唐破風のエントランスが付属する堂々とした伝統的木造銭湯。しかし、 唐破風にはテント屋根が接続し、後方の煙突が新しい白塗りのパイプだった。

花道の左右。東京だったら建物が建てられて店舗になっているくらいの広さの部分が駐車場になっ ている。両サイドに建物がないのは郊外ゆえか。

暖簾はない。中に入ればかなり広い平格天井のエントランスホール。左右にたくさんの松竹錠の下 足箱が並ぶ。

同湯の最大の特徴は、木製建具などのオリジナルがたくさん残っていることだ。そのスタートが、 このホールから番台へつながるイニシエの木枠のガラス扉。番台の背に当たる部分も特段の意匠は 凝らされていないものの、定石通りのニスがたっぷりと塗られた木枠が艶っぽく光を放っている。

今日は蒸し暑いのでその扉は開け放たれている。番台は、一部に木目プリント合板が張られてはい るが木組みのどっしりとしたもので、古いからか、田舎だったからか、高さが低い感じがする。

ちゃきちゃきした女将さんに、いつ頃の建物なのか聞いたけど、受け継いで30年ということだけで、 建物の詳しい来歴はご存知ないようだった。番台が低いのか建物が大きいのか、一生懸命に番台の 上に並ぶ賞状を見てくれたけど、高い位置に額があるので確認に難儀する。もっとも古い賞状が昭 和40年代の前半。少なくともそれよりは古い建物だろうということで落ち着いた。。。

脱衣所の広さは、幅3間、奥行3間半。欅材の見事な折上げ格天井。中央には丸いスピンナーが付 いた古い天井扇が回っている。

庭はつぶされているけど、ブルー系の小石タイル張りの濡れ縁との間にはやはり古いニス塗りの木 製の4枚扉。開閉する扉は厚手の透明のガラスだけど、頭上の高い部分には縦縞のモールガラスが 使われている。

ロッカーは、ブロック錠の島ロッカーが縦置きに1つと外壁側にSakura2錠のものがある。その他、 TANAKAのアナログ体重計、ブォーンと轟音が鳴るスイッチを自分で操作する古い大型の扇風機があ る。基本的に余計なものが一切無い脱衣所だけど、”木製のソファ”呼ぶのがふさわしいかなり重量 感がある応接セットがある。

大きくて磨き込まれた大きな鏡が入った男女境の上には、敬心社による麻雀屋、理髪店、ビニ本屋 のガラスに描かれた古い絵広告。東京の城北地域の銭湯や川口の銭湯でよくお目にかかるものだ。

さらに、浴室との間、扉の上にガラス絵がある。東郷青児風の裸婦像にはたまに出会う。しかし同 湯のガラス絵は和風で、池で鯉が計15匹が泳ぐ図。アルミサッシに入っているので創建当初のもの ではないのかも知れないけど、初めて遭遇する珍しいものだ。

浴室の広さは、幅3間、奥行4間半。天井は木板張りの2段型。釜場への戸板の扉がこの建物の古 さを主張している。島カランは1列で、カラン数は6・5・5・6。立ちシャワーすらないシンプルさ。

床のタイルは3センチ角の白色という往年のスタイル。しかし、同湯の白タイルは滑り止めを施し た最新式のタイル。よく見る材質だけど、3センチ角の昔ながらのスタイルを踏襲するのを見たこ とがない。

浴槽は、奥壁に接した深浅2浴槽。深槽が42度くらいの実母散の薬湯。浅槽は、赤外線ランプを間 に挟んで2穴ジェット×3機が並ぶもの。恐らく井戸水。柔らかいお湯が、入りやすい温度に設定 されている。

ビジュアルは、広い奥壁に男・女湯に跨る中島さんの富士山のペンキ絵。それなりに時間が経過し ているようで、色が退色して淡くなるとともに、少々くくすみも目立ってきた。

さらに男女境には、山に囲まれた高原の湖に、洋館、ヨット、樹木を描きこんだモザイクタイル絵。

雨が降ってきた日曜日の19:00から19:45に滞在。何とはない銭湯だけど、明るくて、広くて、清 潔。お湯もなかなか。相客は20人くらいか。花道には自転車が並び、車で一族郎党で乗り込むケー スも2、3件。レトロ系伝統銭湯ながらの繁盛店だった

上がりの一杯は、西川口駅まで戻って、駅近の「ほろよい党」。短冊で張り出された値段は、ちょっ と大丈夫かと思うほどに安い。ただ安いだけで繁盛しているのか、価格対比のバリューがあるから か、ともかく混雑している様子。。。おっかなびっくり入ったけど、答えは後者だった。看板の焼き 鳥は美味しく、それ以外もまずまず。そして、何より安かった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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