差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2019年3月2日土曜日 20:30
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 一の湯(板橋区栄町)

ナカムラです。今日(2/24)は、「一の湯(板橋区栄町)」に行ってきました。板橋区役所前駅(都営三田線)から、0.9キロ、10分くらいです。

三田線の終点の西高島平駅まで行き、荒涼とした都市風景を撮影して歩く。駅前に商店などはなく、いきなりトラックターミナルや巨大な物流倉庫が並ぶ。一角には東京中央卸売市場板橋市場があって、場内各所に中島さんのペンキ絵が描かれているという。周囲回ると、新河岸川がある北側の壁に黄金色の雄大な富士山のペンキ絵を見つけることが出来た。

都営三田線は昭和43年に高島平駅まで開通。14階建の高層団地が林立する、都民には馴染みのある高島平団地は昭和47年に竣工している。

さて、数駅都心側に数駅戻って、板橋区役所前駅で降りる。ここも高速道路が幾層にも重なって走るかなり殺伐とした風景が広がる。一の湯は北西方向に石神井川方向へ緩やかに下って行く。

同湯のある栄町には、1908年(明治41年)に、3回、計11日だけ開催された板場競馬場があった。1910年には東京近郊の4つの競馬場(池上、川崎、目黒、板橋)の運営が統合され、池上競馬場と板橋競馬場は廃止されている。目黒競馬場のように、かつてのコースが分かるような楕円を描く道もなく、その他の痕跡もないようだ。

同湯は、かつての楕円形のコースの中に位置する。直ぐ近くの豊島病院通り商店街からも少し入った奥まった所。今では、生活道路が複雑に入り組んみ、モルタルの古い家がたて込んでいる。

銭湯の定石の1つ、同湯の場合は向かって左側には悪水路の跡(暗渠)がある。

同湯は、コンクリ造の低層アパート併設の古い建物。航空写真を年代を遡って見ると、昭和30年代に現在のコンクリート造の建物で創業していると推察される。

郊外だったからか、都内の銭湯としては木造の時代を経ず、当初からコンクリート造の建物で創業するのは珍しいかも知れない。油井型の煙突というのも少数派だ。十条在住時代、歩いて見に来たことがある。当時は今よりもレトロ系優先だったので、訪れるまでに時間がかかってしまった。

正面は、左手にコインランドリー、右側に狭くはない靴脱ぎスペースを持つエントランス。少々殺風景。下足箱の錠前はSakuraG錠。自動ドアを通れば、脱衣所を仕切って作った真紅の絨毯のロビースペースがあって、女将が詰めるカウンターが入口方向を向いている。

風呂とともにスタンプ帳を差し出すと、カウンター手前に置かれたスタンプ一式を指差される。ここまでオープンなスタンプに遭遇するのは初めて。建物を建てた年を尋ねると“さぁ?、何時だったけかなぁ?”。言葉にするとなかなかに因業な応対だけど、何処か懐かしく、全く嫌味は無い。老夫婦2人で何とか切り盛りしている。余計なことには対応出来ないんだと察する。

脱衣所は、ロビーにスペースに食われているものの、オリジナルは3間四方の空間。2階があるので大部分の天井は高くない。しかし、一部分だけ高い所がある。建てられた後に2階を増築したのかも知れない。

ロッカーは、外壁側を中心に並んでいる。テレビ、縁台やデジタル体重計、基本的に余計なものがないシンプルな脱衣所。

浴室は、幅3間、奥行4間ほど。プラ板張りの天井は男女境の部分が一番低くなっているM字型。

島カランは2列で、カラン数はセンターから6・6・6・3・0・4。床のタイルは足触りのいい中判のタイル。ベージュとオフホワイトの2色が、大きく言えば井桁模様に敷かれている。銭湯職人然とした大将の差配か、清潔に磨き込まれている。

浴槽は奥壁から外壁側にL字型に並ぶ。男女境側から、バスクリン色したヒルアロンサンの薬湯、主浴槽にはボディマッサージ、湯柱が立つほどのバイブラ、リクライニング座ジェット×2というラインナップ。湯温は42度位。湯柱による濛々とした湯気中、ジェット類の多少の騒々しさと相俟って、枯れた外観と違い存外の活気を感じる。疲れが溶けて行く感じのこなれた感じのお湯だ。

上がりはコーシン牛乳。この界隈の銭湯では、あまり見かけないこのブランドを見かけることが多い。販売店を見かけたこともある。ちょっと調べると文京区の千川沿いの氷川下町発祥の乳業メーカーのようだ。なるほど、このエリアに地盤を持つ牛乳屋さんのようだ。

大将は、目敏く、テーブル上が濡れているのを見つけてカウンターから出てきてサッと拭き取った。さっきは、脱衣所でも細々と立ち回っていた。多少腰が曲がっては来たものの、根っからの銭湯職人という感じで見ていて気持ちが良かった。

日曜日の17:45から18:25に滞在。相客は10数人くらいか。日曜日の夕飯前、途切れなく客が出入りする。枯れた外観に比べて、普通にいい銭湯だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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    三田線の終点、西高島平駅。中止されたけど、東武が浦和、大宮方面へ延伸する計画があった。





















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