差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2014年7月3日木曜日 21:25
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 桜湯(静岡市葵区駒形通)

ナカムラです。

今日(5/5)は、「桜湯(静岡市葵区駒形通)」に行ってきました。 静岡駅(東海道本線)から、1.4キロ、15分くらいです。

「浜松祭り」で前夜は巴湯の仕舞が21:30から20:00に早まっていていた。名物らしい「浜松餃子」 に気を許していたら大事な風呂を逃し、ホテルで風呂に入るという銭湯マニアにあるまじき大失態 を犯してしまった。

今朝、その巴湯の外観を愛でた後、当地浜松出身の建築家中村與資平による旧遠州銀行本店(現静 岡銀行浜松営業部)、旧浜松銀行協会(現木下恵介記念館)などの銀行建築、旧浜松警察署や旧二葉 遊廓(現鴨江旅館街)、千歳街の歓楽街、崩壊中のサッポロ街などを巡る。

全く予備知識が無く偶然の遭遇だったけど、「浜松祭り」は137カ町から凝った彫刻が施された豪壮 な屋台が出され、旧軍以来の信号らっぱを先導に揃いの半纏を着た町民が引き回すというもので、 かなり見応えがあった。しかし、今日、2日目は生憎の大雨で中止のようだ。

静岡に移動し、浅間神社参道に位置する天神湯へ。雨の中、同湯は駅からかなり遠いけど、着くと 何と暖簾が掛かっていない。何たることか。

茫然としながらしばらく同湯を撮影していると、後ろから「お風呂に入りにいらした方ですか」と 大女将から声が掛かった。傘をさした大女将を筆頭に黄色い雨合羽を着た孫娘の小学生まで、天神 湯に関係するのだろう女性三代の系譜が並んでいる。図らずも、3人一斉に「また来て下さいねぇ ♪」という心暖まるハーモニー。このハモリに心打たれ、近々の再訪を決意する。

同湯は電話番号が公開されていないものの、定休日は月曜日と判っていた銭湯だった。久々にまた 凡ミスをやってしまった。

気を取り直して、静岡市に残る2軒の銭湯のうちのもう片方の桜湯に向かう。

同湯は旧赤線地帯の銭湯でもある。静岡には安倍川近くの「二丁町遊廓(駒形通五町目界隈)」があ ったものの静岡大空襲で焼失。戦後は北北東側に位置する川辺町に赤線として女性街の機能が移っ ている。

以前は旅館が多数並んでいたらしい。今はそれらがマンション群に替わり、埋もれるように、粗末 な外郭の飲み屋街や、ぽつんと1軒ソープランドが残るのみ。

さて、桜湯。駒形通りの商店街は見事なシャッター街。軽く崩壊しているアーケードの中に同湯は あった。

同湯の歴史は赤線以前の昭和2年にまで遡る。映画館(すべて閉館)などが建ち並び、現在の歓楽 街の呉服町よりも栄えていた七間町にあった桜湯(昭和40年代に廃業)の支店「第二桜湯」として 開業。昭和40年代に現在のビル銭湯に改築された。外階段で昇る2階には、今では珍しくなった独 立したサウナ営業がある。

暖簾を潜れば、狭い靴脱ぎのスペースがあって、両サイドに木製扉&松竹錠の下足箱が並ぶ。自動 ドアには「手動」と張り紙がある自動ドア。

ドアをこじ開けて中に入れば、小生と同じくらいだろうか、番台には御歳92歳になるという大将の 娘さんが座っている。同湯の料金は400円と周辺都市よりも少し安い。

脱衣所の広さは、幅2間半、奥行3間半ほど。天井は高さ1間半ほど。木目プリントの壁紙が張っ てあり中央に天井扇が据えられている。客の1人に多少くさい臭いを発する人が居たらしく、何だ 何だと驚き、多少閉口する。

ロッカーは、島ロッカーはなく外壁側に1列。その他、Kamoshitaのアナログ体重計などがある。 トイレの横に「マッサージコーナー」という行灯が下がっていて1畳弱のスペースに旧型マッサー ジ機が置かれている。

浴室の広さは、幅2間半、奥行3間半ほど。天井は高さ1間半ほどと低いプラ板張り。島カランは 1列で、カラン数はガラスブロック積みの男女境側から5・3・3・7。床は艶があってやや膨らみの あるイニシエの3センチ角のタイルで淡いモスグリーン色のもの。床のタイルは所々補修の跡が目 立つ。

カラン台は台の部分が少し出っ張っていて、洗い湯を流す溝がその下を通る構造。関東の銭湯より も明らかに中京圏の様式になっている。

浴槽は奥壁に沿っての深浅2浴槽。透明な蛍光の黄色のお湯。温度はかなり温くて41度くらい。時 間がないのでさっと出ようにも、なかなか身体が暖まらない。

何より端午の節句なのに菖蒲湯ではないというのが残念だ。しかし、思い返せば浴場組合が機能し ている所はともかくとして、それ以外の所は必ずしも菖蒲湯をやっている訳ではないのかも知れな い。静岡市の銭湯は2軒なので組合は崩壊している。

連休後半の祝日の18:15から18:50に滞在。相客は4人ほど。たまたまかも知れないけど、寂れき った商店街同様、シャビーな感じの客が多かった。内部はメンテナンスもそこそこの良くも悪くも 古いビル銭湯。ただ、同湯の歴史とロケーションが秀逸だった。

19:00になれば92歳の大将が番台に上がり、川辺町の赤線について詳しい話が聞けるだろうろとの ことだった。しかし、この時間、行楽帰りのピークで、上りの新幹線の変更は不可能。断腸の思い で同湯を後にした。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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