燕湯(台東区上野)
Masayuki Nakamura
To: sento-freaks@googlegroups.com;2024/04/28 10:24

ナカムラです。

今日(4/19)は「燕湯(台東区上野)」に行ってきました。
御徒町駅(山手線等)から0.3キロ、4分くらいです。

金曜日の会社帰りにふらっと寄ることができる銭湯はということで燕湯を選んだ。
帰りに銭湯に寄るのは何年振りだろうか。
いつもより早く会社を出る。

同湯は朝6:00開店で仕舞は20:00(最終受付は19:30)とロングランだけど早い。

戦前に開業した銭湯で、戦災に遭って、現在の建物は昭和25年に建てられたもの。2008年に東京の銭湯で最初に登録有形文化財に指定された。しかしファッサードはかなり増築されている。建設当時のオリジナルの姿を想像することは困難だ。文化財指定とオリジナル性の関係はどうなのだろうかと考える。

昭和4年の「銭湯名鑑」を見ると、同湯のある旧東黒門町には「第二富士見湯」という銭湯が1軒だけ載っている。ただ燕湯の位置よりも少々北側だったようだ。昭和43年の名簿では「第二富士見湯」の名前はなく、同湯だけが載っている。

さて、燕湯。観光客と思しき若いアメリカ人風の2人に続いて入店する。番台にの女将さんに520円を払って外壁側の100円リターン式の横型の大きなロッカーを使う。上野駅には電車で近郊の行商の方々が集まった歴史がある。この横に大きなロッカーは、荷物が多かった行商の方々への便宜の名残だ。

黒光りする折り上げ格天井。長押には書院造りの釘隠しとして使われる大振りの六葉という部品が使われている。銭湯の長押でこの六葉を見たことはない。そんな観察をしていると”バタン”という音ともに女将さんが番台を飛び降りて浴室方向に走っていった。そして”ノー”という怖い声が聞こえてきた。どうやら、アメリカ人の1人が身体を流さずに湯舟に向かったらしい。同湯ではボディーソープで身体を洗ってからでなければ湯舟に入ってはいけないらしい。かなりの緊迫感だった。

郷に入れば郷に従えなので、少々寒さを感じながら持参の牛乳石鹸で、身体、頭と洗ってから湯舟に向かう。入ったことはないけど朝湯は熱いのが有名だけど、夜はさほどでもない。久し振りに入るとジェット等がない澄んだ広い湯舟は温いかなと感じる温度だった。埋め水を避けるために湯舟のカランの取っ手は取り外されている。この湯温がこの時間のデフォルトなのだろう。しかし、お湯が澄んでいることに感心した。この清澄さを保つために厳し目の運営をされているのかも知れない。

奥壁のペンキ絵は中島さんにより23.9.18.に描かれた天井まで桜がのびる富士山のペンキ絵だ。同湯の岩山はかなり規模が大きい。建物だけでなくこれも有形登録文化財に指定されている。しかし、真ん中の大きな滝は流れていなくて、ペンキで流れの絵が描かれている。そう思っていると、浴槽の縁に腰かけていた相客がご常連に一喝された。岩山にその旨の複数の貼り紙がある。女将さんもご常連もマナーに厳しい。同湯のこの緊張感に耐えられない客もあるだろう。優れた銭湯だけど少しだけ客を選ぶ銭湯でもあるようだ。

金曜日の18:30から19:05に滞在。相客は7、8人くらいだろうか。最初の緊張感は別として、想像していたよりもかなりのんびりと入ることができた。

上がりは、大衆鮨かラーメン屋の「珍満」か「大興」にでもと考えていたけど、まだ20:00の閉店時間まで時間があったので直ぐ近くの江戸前天ぷら「徳仙」にする。浅草の寿司屋と天ぷら屋のカウンターが繋がっている「徳仙」の姉妹店で昭和11年創業という。カウンターに座って、菊水のお燗と天丼の「竹(並)」を注文する。注文してから魚を捌く丁寧な仕事なので少し時間が掛かるものの、3点盛りの立派なお通しと燗酒で、とても寛いだ待ち時間だ。

既に顎鬚が白くなりつつある息子と白髪をひっ詰めた母との2でやっている。どういう関係性なのだろう。板長として母に対する接し方はとても厳しいものがあった。女将さんも息子の指示に必死に着いて行く。途中、若者4人組が入ってきて煩くなるなと思っていたら、そんな必死の女将にやさしく接する行儀のいい若者たちだった。大盛りができるか聞いて、全員、大盛りを頼んでいた。江戸前の天丼は予想を裏切らない美味しさだったし、燗酒も心地よく腑に染み入る。そう、若者たちがぬか漬けの味を褒めていたけど、見た目も味も美味しい女将さんお手製のぬか漬けだった。毎日漬けているのかと問われて、3日に1度と答えていた。

会社帰り。家からさほど遠くはないけど、なんかいい「旅」だった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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            徳仙の天丼の竹(並) 1800円


































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