荒井湯（墨田区本所）

差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2008年3月8日土曜日 9:35
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 荒井湯（墨田区本所）

ナカムラです。

今日（3/7）は、「荒井湯（墨田区本所）」に行ってきました。本所吾妻橋駅(都営地下鉄浅草線)から、０．９キロ、１０分くらいです。

今日の最初の目的地は「亀の湯」。銭湯マップには「クリーン。レトロ。サイレント。」とある。何となく長くない断末魔のようなコメント。なるほど、しばらく店の前で写真を撮っていたけど客の出入りが少ない。確かに「クリーン。レトロ。サイレント。」なんだろう。

そして、すぐ近くの隣湯「荒井湯（墨田区本所）」を見に行く。ライトアップされたエントランス部分は戦前築のゴージャスなもの。ボリーム感のある唐破風でコンクリ造。それ故、この入口部分と扇の刳り抜きがあるコンクリの塀が戦災をくぐり抜けたようだ。

同湯には亀の湯にはないペンキ絵もある。どことなくシャビーそうな亀の湯に戻る気力が無くなって荒井湯にお世話になることにする。

脱衣所部分は戦災で焼けたので昭和２５年に再建したもの。３間四方で天井は折上げ格天井になっている。天井扇もある。材はさほどのものではない。でも、古風だけど清潔に維持されている。熱帯魚の水槽があったり、何より明るい脱衣所なのがいい。活気のオーラがある。

ロッカーの錠は大半が松竹シリンダ錠になってるけど、入口方のロッカーには旧型の「さくら」と書かれた錠が残っていた。久しぶりに遭遇した気がする。

外壁側には池があって鯉が泳いでいる。縁側が料亭の床で使われるような那智黒石というのが珍しい。立派な滝の設えがあるけど、水が減るから、今では夏だけ小規模に滝を動かすようだ。大量に水道水を補給し続けるのは鯉によろしくないらしい。水道での池の維持にはそんな労苦があるようだ。

浴室は、幅３間、奥行４間ほど。天井は２段型。改修で躯体以外に古いものはないけど、快適な銭湯空間になっている。

島カランは１列で、浴槽は奥壁から外壁側に沿ってＬ字型に延びている。奥壁センター側から、熱湯槽で４３度、８点座ジェットと２点座ジェットで４２度、バイブラ槽で４２度、ぬる湯槽で４１度。そんなラインナップだ。

ビジュアルは、奥壁に中島師の富士山がある。中島師にしては「2007　ナカジマ」と銘あるのが珍しい。どうやら、描き替える時に町田師匠も来ていたというから、何かイベント絡みだったのかな・・・。

金曜日の２１：１５から２２：００に滞在。相客は１０人ほど。表で写真を撮っている時にも客のの出入りが多かったので、まぁまぁ繁盛している銭湯のようだ。

ただ、油井型の煙突の下では価格が何段階も上昇を続ける重油を燃しているという。もう笑うしかないよとご主人も諦め顔だった。原油先物市場は株式や債券のマーケットよりも規模が圧倒的に小さく懐が浅い。今は産油国を中心としたカネ余り資金も流れ込んでいて、ほかの商品や金市場などと同様に実需から離れたバブルとなっている。資力の乏しい銭湯がそんな世界経済に翻弄され、廃業時期を早めているのは、なんとも納得できない感じがする・・・。

上がりは、戦前交番建築の旧厩橋交番(昭和３年築)の脇の「牧野」にする。どちらも偶然での出会い。厩橋交番は写真で眺めたことがあるのを思い出したけど、牧野は知らなかった。しかし、白地に大きく屋号を染め抜いた暖簾に気品と殺気を感じた。店のオーラが勝っていたのか、小生も齢を重ねて多少の目利きとなったのか、いい店に出会うことができた。聞けば創業昭和１６年の老舗らしい。入るなり「歴史」と「懐かしさ」を感じる。

テーブル２つと狭い小上がりがあるだけの小さなお店。お姉さん２人が切り盛りしている。時間が無かったので燗酒１本と鮪ぬただけ頂いた。ここの鮪は築地でも名のある高級仲卸のものらしい。濃厚な酢味噌も言いようのない深さがある。それが酒付きで計１１３０円という格安で頂ける。新橋ならこの３倍ではきかないだろう。次は、「亀の湯」との再訪かな。忘れられない良い店だ。

３０分しか滞在できず、横須賀線快速の終電時刻を睨みながらタクシーで錦糸町駅に向かう。いつものことだけど、少し飲み足りなかったので「氷結」の大きいのを買って、横須賀線のグリーン車に乗り込む。贅沢だけど、まどろんでいると戸塚駅に到着する。

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ナカムラ　（Masayuki Nakamura）
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居酒屋・牧野
鮪ぬた