差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2006年4月22日土曜日 11:48
宛先: 銭湯ML
件名: 旭湯(江戸川区松島)


ナカムラです。

今日(4/15)は、「旭湯(江戸川区松島)」に行ってきました。
新小岩駅(JR総武線)から、0.6キロ、10分くらいです。

戸塚から江戸川区は遠い。同じ横須賀線だけど、反対方向で横須賀駅の倍の時間がかかる。江戸川区の銭湯は初めての訪問になる。
同湯のある松島町は、戦災で焼けた亀戸の赤線業者が流れてきた、戦後派のカフェー街があった場所。その痕跡を探訪した後、昭和4年築の古風な同湯で休憩というコース。

旧カフェー街は、駅から「ルミエール」というアーケード街を0.7キロくらい進んで、アーケードが途切れるあたりの一角にあって、最盛期は「丸」の中に「健」と書かれた赤い提灯を下げた80軒くらいの店があった。今もカフェー独特の意匠の建物が、いくつか残っている。

どこのカフェー街の建物もそうだけど、使われていない空き家も多い。物理的な耐用年数を過ぎて、静かに朽ちていこうとしている。営業したのが13年ほど、それから50年近くの時間が経過している。

四月も半ばだけど、今日は寒い風が吹いている。ひとしきりカフェー街跡を回った後、旭湯へ向かう。

入口は黒瓦の入母屋屋根。紺地のオリジナル暖簾が掛かっている。破風部分の白壁を良く見ると、漆喰の籠手絵で鶴と朝日が描かれている。後方には、薪焚きなのだろう先が煤けたコンクリの煙突。そして、脱衣所棟の両端には洋館にあるような先が尖った飾りがある。なかなか古い造りだ。

暖簾を潜ると、下足箱の錠は旧型のさくら。入口はアルミサッシの戸に置き換えられている。スライド式ではなく、取っ手を手前に引く方式が珍しい。番台は新建材で前面がカーブしているもの。女将に400円を払う。

脱衣所は幅2間強、奥行3間。一部増築して外壁側を広げベンチを置いている。天井は、折り上げ格天井が流行る前なんだろう、渋い材で組まれた平格天井になっている。ロッカーは、SakuraUの板鍵の島ロッカーと壁側にロッカー。その他、Keihokuのアナログ体重計、冷蔵庫。余計なものはない。

庭には池があり、鯉が泳いでいる。さすが旧カフェー街近くの銭湯。風情を残している。縁側の脇には、既に退役した脱衣籠が積んである。

浴室への仕切りは、真中にガラスブロックが積まれ、洗面台が設えられている。その左右に2つ入口がある。マットは伝統的な麻を編んだものが置かれている。

浴室は、幅2間強、奥行4間。天井は2段型。濃淡のブルーのペンキが塗られ、かなり古風な造りである。ウィング部には桟が4本ほど入っているのが珍しい。高天井も井桁以外にも、オリジナルだろう補強の桟が周辺部に延びている。外壁側の梁の一部に番台の仕切りに描かれているような彫刻がある。この部分に彫刻があるのは初めての遭遇かも知れない。

島カランは1列で、カラン数はセンターから、7・4・4・4。外壁側に2機の立ちシャワーがある。

浴槽は深浅2槽。外壁側の主浴槽は外壁側に焚き出し口があって、格子の奥には備長炭が積まれている。奥壁側には2穴ジェット×2。温度は43度強。深槽は45度弱とかなり熱い。緩やかに泡が立ち昇っている。

ビジュアルは中島師のペンキ絵で富士山。

上がりは、ビール類が無いので、パック入りのコーヒー飲料を飲む。銭湯で酒を飲まないのは久し振りかな。

土曜日の16:00から17:00に滞在。相客は10人程度と切れ目なくぱらぱらと客が来る。

もう一度、旧カフエー街へと足を向ける。営業しているとは見えなかった「コーヒー・スナック 小蝶」という、いわく有り気な小さな店のガラス戸が、雨戸を外し姿を現している。旧丸健街が消滅して48年も経つけど、往時の残り香と微熱を感じる気がした。


鶴が羽を拡げている。

小さいながら池が整備されている。