差出人: Masayuki Nakamura <masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp>
送信日時: 2014年1月19日日曜日 7:12
宛先: 'sento-freak@yahoogroups.jp'
件名: 千歳湯(前橋市石倉町)

ナカムラです。

今日(11/2)は、「千歳湯(前橋市石倉町)」に行ってきました。 前橋駅(両毛線)から、1.7キロ、18分くらいです。

秋の三連休。出足が遅かったので弘前までの寝台特急あけぼの号のチケットは取れず。新幹線のこ だま号は何時でも空いていると思っていたけど、浜松までの座席指定はこれまた満席だった。

ということで、昨秋の伊勢崎以来ほぼ1年振りの北関東方面へ。行き先は前橋。群馬県の県庁所在 地だけど、本線ではなく北関東の外縁部を繋ぐ両毛線というローカル線にある。上越新幹線が通る 高崎に比べ、かなり地味な街になっている。

昭和43年の「全国銭湯銘鑑」によれば前橋市には高崎(36軒)よりも多く42軒の銭湯があった。 現在は、6軒にまで減っている。

午後に家を出て、2時間ほどで前橋に着いた。あまり歩く人を見かけない街を、成田湯、重兵衛湯、 旧磯部湯(イベントに際し画家2名のアトリエに転用)、利根の湯と見て回り、目的地の千歳湯に着 いた時には日が暮れていた。

市街から直接向かえば、利根川を渡ったあたり。両毛線の高架からも千歳湯の油井型の煙突がはっ きりと見える。

モルタルの地方の小銭湯。聞けば昭和45年築という。ボロな見かけに比べて案外古くはない。大量 の廃材と格闘しながら店を守る大将は、安い材料のことなのだろうか“腐れ材”で建てられている んだと話す。コインランドリーのテントの名残りはあるけど、そんなものはない。。。

外で暫く銭湯を眺め写真を撮っていたら、上がってきた小母さんに入浴券2枚をご馳走になる。こ んなおすそ分けは初めてだ。「前橋市」とあるので行政から支給された入浴券のようだ。

裸電球に‘ゆ’とある紺色の晒地の暖簾。これ以上ない枯れた雰囲気を感じる。小さく狭いエント ランスを入ると、両側に少数ずつの松竹錠の下足箱が向かい合わせになっている。

脱衣所に進むと、ベニヤ板で組まれた番台。表面の板が裂けて剥がれている。上には高崎の成田湯 本店から贈られた「大入」の額。

脱衣所の広さは、幅2間、奥行2間半。天井扇のある天井は白色の天井板。壁は石膏ボードが剥き 出し。いずれもかなり煤けている。確かに古くもあるけど、使われている材料がかなり粗末という か、仕上げが省略されている。床は、絨毯とゴザが折り重なった混成の北関東仕様。これを清潔に 保つのはなかなか難しいだろう。

ロッカーは、外壁側に松竹錠アルミ板鍵のものが横2×縦4個ほど。小生も後からやって来た唯一 の相客もロッカーではなく、籐編みの丸籠を使う。

その他、テレビ、森永牛乳他が入った家庭用冷蔵庫(男湯のみ)、ヘルスメーター、簡素なテーブル と椅子等がある。多少の臭いを感じるのは周囲に居着く野良猫のせいだろうか。。。

浴室の広さは、幅2間、奥行2間半。天井はプラ板張りで2段目が水平になっている凸型。島カラ ンはなく、カラン数は両側に6・6。床のタイルは所々大きく剥がれ、コンクリが剥き出しになって いる。明るいので殺伐さは感じないけど、なかなかキテいる。

浴槽は、奥壁に沿って深浅2槽。浅槽に焚出し口のみというシンプル極まりない設備。隻手の大将 は、信じられないくらい全身ドロドロになりながら、建物の傍らで廃材と格闘している。そして、 出入りを繰り返しながら客の相手をし、釜番をも努めているようだ。

井戸水を大将の汗と魂が染み込んだ薪で沸かしたお湯は、浅槽42度、深槽43度くらい。客が少な いこともあって清澄で、一点の濁りもない。柔らかく、微かな粘りを感じるものだった。

奥壁には、利根川なのだろうか、キャンバスとも違う絹のような柔らかな布地に描かれたペンキ絵 がある。まさか違うだろうけど、筆遣いが鎌倉の新世美術の初代の絵に似ている。

三連休の初日の土曜日。17:40から18:30に滞在。相客は1人。地方の小さな銭湯。暫く休業して いた。買い物の遣いを引き受けてくれるご常連に支えられながら、大将はドロドロになりこの銭湯 を守っていた。人情と壮絶さがない交ぜになった、強く記憶に残る銭湯だった。壮絶さでは横須賀 の馬堀海岸・松の湯(廃業)と双璧をなす

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
メイン:masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp  
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
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