差出人: Masayuki Nakamura [masa-nakamura@mpd.biglobe.ne.jp]
送信日時: 2010年10月13日水曜日 23:04
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件名: 中将湯(埼玉県行田市行田)

ナカムラです。

今日(10/3)は、「中将湯(埼玉県行田市行田)」に行ってきました。 行田市駅(秩父鉄道)から、0.5キロ、5分くらいです。

往路は、吹上駅(JR高崎線)で降りて、朝日交通のバスで9キロほど先の行田の市街を目指し た。

市街に入って初めて目に入ったのが、蔦が絡まった油井型の煙突。バスを降りて近くに行くと 旧「柳の湯」だった。100年ほど前に上梓された田山花袋の「田舎教師」にも出てくる歴史の ある銭湯。

煙突だけでなく建物までもが蔦が絡まっている。入口の扉の中側をのぞくと「釜・井戸の故障 に付き閉店します」との張り紙があった。2006年12月23日張り出され、長い歴史を閉じたよ うだ。

行田では、レトロパン屋、喫茶店、写真館などを繋ぎながら街の中心部を歩く。そして、いい 頃合いになってきたので、中将湯に向かった。

昭和42年築のモルタル造の伝統的木造銭湯。暖簾の上のガラスには「中将浴場」とある。靴脱 ぎのスペースの左右には珍しい「タイヨー錠」。八戸・富士乃湯(廃業)で見て以来、久しぶり に遭遇する珍しいものだ。

中に入れば前面がカーブした番台に存在感のある女将さんがデンと座って、ラジカセで演歌・ 大月みやこを鳴らしている。

脱衣所の広さは幅2間半、奥行3間半ほど。天井はさほど高くはないものの折上げ格天井で、 中央に天井扇が回っている。

外壁側には松竹板鍵のロッカーがあるものの使われているのか定かではない感じ。中央に置か れた籐敷きの広い椅子を囲んで相客たちの脱衣駕籠が並ぶという懐かしい光景がある。

その他、旧型マッサージ機とTeraokaの表示部が小窓というスケール式のアナログ体重計。庭 とは呼べない小さなスペースには、灌木があって悪くない感じ。

女湯には、埼玉の浴場組合で尽力した丸山健吉翁の銭湯の効用を記した張り紙があるという。 浦和・稲荷湯の脇に、同湯の経営者だった翁の銅像がある。そういえば、ここ行田の銭湯を振 り出しにされた方だった。それが中将湯かは分からないけど、何らかの繋がりがあったのかも 知れない。

浴室の広さは、幅2間半、奥行3間半ほど。天井は2段型で板に塗られたグレーのペンキがボ ロボロになっている。今日は蒸し暑く窓が開け放たれている。脱衣場もそうだけど、照明が少 なく内部はやや暗い。

島カランはプレーンなものが1列で、カラン数はセンターから4・3・3・4。タイル類は昭和の 終わり頃のものか、さほどレトロなものはない。

浴槽は、奥壁に沿って深浅2槽。浅槽は底から泡が出るだけの簡素なもの。井戸水を薪を沸か した湯。湯温は46度はある激熱の温度。熱き北関東銭湯の湯温がここに極まっている。熱い湯 に噛まれ、足の甲が軽く火傷する。。。深槽はさらに熱い。手を少し差し入れただけで、入れる 温度ではなく、身体は大事なので冒険は止めておく。

小生よりも銭湯歴が長く、歴戦の強者である連れも、ご常連のお声がけを受け、多少水で埋め なければ入れなかったという代物。女将によれば、温度計はすぐ壊れるので使っていないとい う。でも、42度か43度くらいだと話されていた。んなわけはない。

銭湯経営者でも、自分ところの熱い風呂をして、「こんな熱い湯には入れない」という人は多い。 女将さんは、この熱い風呂に入れるのだろうか。。。

ビジュアルは、ここ行田のエハラ尚栄堂による「天草」のペンキ絵。海に小さな島々が浮かび、 逆L字型にそれを結ぶ橋が架かっている。記念切手で見たような絵柄だ。そして、今は亡き先 代の手によるものだ。秩父・たから湯、クラブ湯や加須・ときわ湯にある絵に比べ、完成度が 格段に高い。ペンキ絵の下は四角く掘り込まれて岩や灯籠が置かれ、ミニチュアの庭になって いる。

日曜日の16:50から17:30に滞在。相客は3人ほど。建設関係の御仁で、「山谷はどうよ」とか 「新幹線の工事があった時は良かった」という話が延々と続いていた。近い工事は地元に取ら れるらしく、遠く、条件が悪い仕事しかないらしい。厳しい世の中だ。。。

上がりはメグミルクの牛乳120円を頂いた。帰り際にお手洗いを借りたら、照明ケースが乳白 色ガラスの蒲鉾型のレトロなものだった。昔乗った旧型客車のトイレを思い出すほどの郷愁。。。。 そして隅におかれた小皿には盛り塩。入口の盛り塩は、大宮・菊水湯(廃業)で出会ったこと があるけど、トイレの盛り塩は初めての遭遇だった。

帰路は、行田市駅(秩父鉄道)から熊谷駅に出て、熊谷・朝日湯を訪れた時、気になった創業 50年のたホルモン焼きの「奉天」に立ち寄る。付近は風俗店が盛んな一帯。浮ついた小生が拉 致されないようにと、連れは袖を掴んでた。。。

奉天は、裸電球6個だけがホールを照らすイニシエのホルモン屋。熊谷には県北の食肉解体セ ンターがあり、新鮮な材料が流通する。秩父とともにホルモン焼きが盛んだ。

無煙ロースターなんて利器はない。数台の換気扇が轟音を響かせる中、七輪で焼肉を楽しむと いう往年のスタイル。飲んで、食って、一人あたり、漱石先生が二人半程度だった。

身体が、あまりにも煙くなったら、中島さんのペンキ絵がある駅前の「さくら湯」で洗い流そ うと考えていた。しかし、意外なほど煙の染み込みはなかった。。。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
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旧柳の湯





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中将湯