差出人: Masayuki Nakamura 送信日時: 2011年8月13日土曜日 8:14
宛先: sento-freak@yahoogroups.jp
件名: 殿上湯(北区西ヶ原)

ナカムラです。

今日(7/14)は、「殿上湯(北区西ヶ原)」に行ってきました。 上中里駅(京浜東北線)から、0.5キロ、6分くらいです。

かなり地味な駅の上中里駅。ここから滝野川方面への急坂を登って行く。坂を登り切ると古く立派なお屋敷がある。高台から荒川区方面が眼下に望める景色のいい所だ。しばらく進めば、コンドルが設計した古河財閥の邸宅だった「古河庭園」などもある。

同湯はそんな滝野川の高台にある伝統的木造銭湯。向かいに豆腐屋があるなど、銭湯が相応しい景色の中にある。煙突は見えなかったので、ガス焚きに転換しているようだ。

「殿上湯」と太い筆致で染め抜かれた紺地のオリジナル暖簾が個性を主張している。その暖簾をくぐれば、東京では珍しいツルカメ錠の下足箱がある。

自動ドアを通れば、木目調のパーティションで統一された簡素なロビースペースがあって、正面に若いあんちゃんがどっかと座っていて、下足の札と交換にロッカーキーを受け取る。

脱衣所は、幅3間、奥行3間半。壁はやはり木目調のすっきりとした材料で更新されている。天井は折上げ格天井のレプリカという初めて見るもの。もっとも本物とは月とスッポンの出来。梁の上には、そのレプリカ天井を支える肘木というか、唐破風を支えるカエル股に似た装飾材が並ぶ。この部分はオリジナルと見たけど、類例のない初めて遭遇する装飾だ。

ロッカーは外壁側。その他、縁台、新型のマッサージ機、洗濯機などがある。男女境を開放して女湯の脱衣所スペースと一体で使えるように余計なものは無い。

浴室は、幅3間、奥行4間。天井は木板張りの2段型。島カランは1列で、カラン数はセンターから6・7・3・3。久しぶりに”大砲型”と言っていい円筒のカランを見る。床のタイルは百合模様の白っぽいもの。基本的に清潔度の高い、風通しのいい浴室だ。

浴槽は、奥壁から外壁に沿ってL字型に延びる、深浅2槽&源泉水風呂。奥壁寄りには、拡張したと思われる外壁側にも延びる浅槽が長い。湯量節約のためか、通常の深さよりかなり浅いのだけど。。。

井戸水を沸かしたお湯はサラっとしたいいお湯だ。湯温も深槽が42度。浅槽は41度強と、夏にはいいぬる目の温度になっている。そして、冷却はしていないようだけど、井戸水の源泉風呂があるというのもかなりのアドバンテージだ。

圧巻は奥壁の中島さんのペンキ絵(22.7.18.)。ペンキ絵は下塗りをせず、古い絵を塗りつぶしながら新しい絵を直接描いていく。この絵の一つ下に眠るペンキ絵は、故早川氏が描いた波が飛沫を上げる「西伊豆」の富士山のペンキ絵。

早川さんが逝って2年半。最近は、同湯のように中島さんなどの絵に置き変わったケースが多いけど、早川画の上に描かれた中島さんの刷毛捌きにはは、気合いが入っていると感じている。負けられないという思いが確かにあるのだろうと思う。

同湯はまた、元ヤクザ屋さんの牧師(進藤龍也氏)が洗礼式を行う場所として有名だ。刑務所を訪れた牧師を介してのキリスト教との出会いが発端だったようだ。

帰路は違う急坂を下って上中里駅へ。小さな商店街が坂の上にあるようで、高台に面した駅舎のある辺りは”駅前”というものが構成されていない。焼鳥屋が1軒と混雑している気になる中華屋が一軒あるくらいだった。

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ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://www7a.biglobe.ne.jp/~masayuki/ (風呂屋の煙突)
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