差出人: Masayuki Nakamura
送信日時: 2019年8月20日火曜日 20:44
宛先: 銭湯ML (sento-freak@freeml.com)
件名: 藤の湯(江東区東砂)

ナカムラです。

今日(7/27)は、「藤の湯(江東区東砂)」に行ってきました。東大島駅(都営地下鉄新宿線)から、1.8キロ、20分くらいです。

今日は、東西線の南砂町駅から入り、不二の湯、旭湯を見て、それらの商店街そぞろ歩きながら、旧同潤会砂町普通住宅と隣接の藤の湯に向けて北上する。

(不二の湯)南砂町から不二の湯までの道は、埋め立てが進む前、大きく言えば海岸線だった。商店街の名前は砂町袖ヶ浦商栄会。不二の湯の最寄りのバス停は”袖ヶ浦”。油井型の煙突を有するモルタルの銭湯である不二の湯を含め、微かに海の名残りを感じることが出来る。

(旭湯)昭和15年に船入川を埋め立てて出来た”四十町通り”沿いの商店街にある。コンクリ煙突を有するモルタルの銭湯。旭湯の少し先の清洲通りとの交差点には、都電29系統(須田町-錦糸堀-葛西橋)の終着駅があって、さらに荒川放水路の対岸へは木製橋脚の旧葛西橋が架かる交通の要衝だった。この商店街には、砂町富士館や葛西橋映画劇場といった映画館もあったようだ。

さて、本日は独特のS字型の街路を持つ旧同潤会砂町普通住宅跡を眺め、その入口にあって水路脇に建つ藤の湯に浸かるというプラン。

同潤会は関東大震災の義捐金の出資により東京と横浜で16カ所のアパートメント(マンション)と、20カ所で勤労者向けの普通住宅の開発分譲を行った。東砂3丁目の砂町普通住宅もその1つ。特徴的なS字型の目抜き通りと派生する脇道もカーブし、プライバシーを確保する設計がなされている。

同潤会が普通住宅を供給したのは昭和3年から13年。昭和11年の航空写真で、東西200メートル南北150メートル程の特徴ある街並みを確認することが出来る。戦災は免れたようだけど、既に90年弱が経過している。盛り土をした基礎に古いものを見ることが出来たものの、当時からの住宅を見つけることは出来なかった。

さて、藤の湯。昭和11年の航空写真に同潤会の住宅とともに同湯の姿を確認することが出来る。おそらく同潤会砂町普通住宅と歴史を一つにしていると推測される。親類が昭和15年に同湯から出征したという大将の話とも符合する。現在の建物は昭和30年に改築されたものという。

ガス焚きに替っているので高い煙突はない。建物は淡いブルーを基調に外装も丁寧にメンテナンスされている。入口の上には小さな藤棚。エントランスには鬼瓦が飾られている。元々はレトロなエントランスが有ったのだろう。

2段ほど階段を昇って自動ドアを開けると左右に松竹錠の下足箱。その奥にカウンターがある。風呂銭を払いスタンプ帳を差し出す。

脱衣所の広さは、幅3間、奥行3間程。天井は落ち着いた柄のクロス更新されているけど、元々は格天井か何かだったのだろう。前栽の大方を潰して涼み処が増築されている。庭の一部には、何かの部材を転用したのか、コンクリート板と石材で立派な4段の棚が設えられ、雛人形よろしく盆栽の鉢が並べられている。但し、今日はクーラーが効いた脱衣所より、盆栽鑑賞の涼み処はかなり蒸し暑い。

ロッカーは壁側に並ぶ。島ロッカーはなく、中央に置かれたゴザ敷きの広い縁台で寛ぐことが出来る。その他、Yamatoのデジタル体重計や扇風機が置かれているくらい。

浴室は、幅3間、奥行き4間。天井は木板にペンキ塗り。塗り重ねられた襞が目立つものの、同湯の浴室は全てが濃淡のブルーで統一され、清潔で、整っている感じが半端ではない。

島カランは1列で、カラン数はセンターから5・6・4・4。カラン台周りは群青色のマーブル模様。床のタイルは足触りのいい淡いブルーグレーのもの。整然としているなぁ。

浴槽は、奥壁から外壁側にL字型に深浅2槽。深槽は41度くらいのお茶の色した桃の葉湯。座ジェット、バイブラ併設の主浴槽は42度弱のガス焚きの柔らかいお湯。なかなか寛ぐことが出来る。

奥壁は新しいタイプの絵付けタイル絵で、絵柄は日光の竜頭の瀧。浴室全体が整っている。19:00という時間のせいか、相客は3人程と寂しかったけど、なかなか優れた銭湯だと思う。

土曜日の19:00から19:40に滞在。末広通り商店街というかつては栄えただろう商店街の終端近く。同潤会と歴史を共にしたと思われる歴史的な背景も興味深い銭湯だった。

上がりの一杯は商店街の末枯れ系のラーメン屋と考えていたけど、意外にもそれらしい店を見つけることが出来なかった。

結局、1.8キロ程歩いて、馴染みの理髪店で聞いた大島の中の橋通り商店街の入口に店を構える「ラーメン大学大島店」へ。大将が店の前で呼び込みをしている。入るとまずは“餃子食べる?”と聞かれる。餃子が有名な店らしい。入ると70歳超くらいのお3人と40代くらいの1人で店を回している。大将は表での呼び込み、会計と、テイクアウトを含めて餃子のご担当。厨房は2人。ホールはお姉さんという布陣。このメンバーかは分からないけど夜中の2:00までやっている。客は引きも切れず。餃子はさっぱりとした旨さ。ワンタンは優しいあっさりとした醤油味。さらに、お茶碗1膳程のミニチャーハンと中瓶の瓶ビール。そして、勘定は安かった。

*************************************************
ナカムラ (Masayuki Nakamura)
URL: http://furoyanoentotsu.com(風呂屋の煙突)
*************************************************







                                           戦前期の地図。同潤会住宅と藤の湯が描かれている




                      袖ヶ浦の不二の湯




                       旭湯



               末広通り商店街の「奉仕ストアー」

目次へ